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反体制勢力の動き
クッルナー・シュラカー(11月5日付)などは、ラッカ県のイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、11項目からなる禁止事項を発し、住民に遵守するよう求めたと報じた。
禁止事項は、ジーンズ・ズボンの着用禁止(イスラーム的なアバーヤの着用義務)、喫煙(違反した者への人差し指と中指の切断刑)、男性理髪店閉鎖と散髪の禁止(違反者の死刑)、店頭での女性服の展示禁止、治療目的での女性患者の女性医訪問禁止、女性の椅子への着席禁止などからなる。
しかし、イラク・シャーム・イスラーム国の布教局は、この報道を否定し、ダーイシュの合意のないいかなる声明・印刷物の配布を認めないとする声明を直ちに発表した。
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『ハヤート』(11月6日付)は、信頼できる複数の消息筋の情報として、シリア革命反体制勢力国民連立が、イスタンブールで民主的変革諸勢力国民調整委員会、イスラーム軍など国内で活動する主なサラフィー主義武装集団の代表と会談することを決定したと報じた。
同報道によると、シリア反体制勢力国民連立はまた、イスラーム軍(ザフラーン・アッルーシュ)、シャームの鷹旅団(アフマドー・イーサー・シャイフ)、シャーム自由人運動(ハッサーン・アッブード)、タウヒード旅団(アブドゥルカーディル・サーリフ)に対して、自由シリア軍(参謀委員会)に取って代わるような統合司令部を結成しないよう働きかけているという。
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アレッポ県サフィール市の作戦司令室は声明を出し、同市撤退の経緯について明らかにした。
同声明の詳細は以下の通り:
1. 撤退前にサフィール市に展開していたのは、イスラーム軍、シャーム自由人運動、シャームの民のヌスラ戦線、タウヒード旅団、アンサール・ヒラーファ、アムジャード・イスラーム、ダール・イッザ自由人、スルターン・ムハンマド・ファーティフなど。
2. アレッポ県の軍事評議会、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)はサフィール市での戦闘には参加しなかった。
3. 戦況は当初、反体制武装集団にとって有利に推移、武装集団はハナースィル市からサフィーラ市に至る一帯を制圧することに成功した。
4. 軍は「焦土作戦」を行い、激しい空爆・砲撃を加えた。
5. 戦闘により、反体制武装集団の兵士40人以上が死亡し、タウヒード旅団などが撤退を発表した。
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アレッポ市地元評議会は声明を出し、カフルハムラ村にシャリーア学校を開設し、男女学生を募集すると発表した。
シリア政府の動き
ワーイル・ハルキー首相は、イスマーイール・イスマーイール財務大臣を内閣経済委員会委員長に任命した。
内閣経済委員会委員長は、ジャミール・カドリー前経済問題担当副首相が務めていた。
クッルナー・シュラカー(11月5日付)が伝えた。
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ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官は、ジュネーブ2会議に関して、ロシア・トゥデイ(11月5日付)に「テロ、外国による(テロリストへの)資金援助、暴力を停止させるため」にシリア政府は参加する、と述べた。
また「すべての当事者が無条件でジュネーブに向かうとのロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が発表した合意に基づき、シリア政府は無条件でジュネーブ2会議に参加する用意がある。しかし一部の当事者は移行期政府と政権移譲にのみ終始している。なぜなら、こうした発想や…、この手の反体制勢力は、シリア国内の誰を代表しているとも知れない外国の当事者だからだ」と付言した。
国内の暴力
ダマスカス県では、AFP(11月5日付)によると、マーリキー地区にあるヴァチカン市国大使館の屋根に早朝、迫撃砲弾1発が着弾し、建物の一部が破損した。
死傷者はなかった。
在ダマスカス・ヴァチカン市国大使館への迫撃砲攻撃に関して、ウマイヤの剣大隊の司令官は、クッルナー・シュラカー(11月5日付)に「シリア政府が行った自作自演」と断じたうえで、同大隊が5日にダマスカス県内に迫撃砲撃を行っていないと主張した。
またシリア人権監視団によると、旧市街のハリーカ地区に迫撃砲弾1発が着弾し、複数の死傷者が出た。
これに関して、SANA(11月5日付)も、旧市街のミドハト・パーシャー通り(まっすぐな道)に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾1発が着弾し、市民1人が死亡、子供1人を含む複数人が負傷したと報じた。
さらにシリア人権監視団によると、バラームカ地区、バーブ・ムサッラー地区、ザーヒラ地区にも迫撃砲弾が着弾したという。
このほか、シリア人観監視団によると、カーブーン区、アサーリー地区などに軍が砲撃を加えるとともに、またマイダーン地区に進入した。
一方、SANA(11月5日付)によると、バルザ区、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市周辺で軍と反体制武装集団が交戦、ハジャル・アスワド市を軍が砲撃した。
一方、SANA(11月5日付)によると、ザマルカー町周辺、ハラスター市、フタイタト・トゥルクマーン市周辺、ダブラ市周辺、カースィミーヤ市周辺、スバイナ町、ランクース市西部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
このほか、クッルナー・シュラカー(11月5日付)によると、反体制活動家でジャーナリストのハーディー・アブドゥッラー氏がマヒーン町での軍と反体制武装集団の戦闘で、頭を撃たれ重傷を負い、野戦病院に搬送された。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、マヒーン町の武器弾薬庫を軍が地対地ミサイルで攻撃する一方、反体制武装集団と交戦し、戦闘員3人を殺害した。
同武器庫はバーバー・アムル・コマンド旅団が占拠していたという。
またヒムス市のワアル地区、ガントゥー市を軍が砲撃した。
一方、SANA(11月5日付)によると、マヒーン町周辺、ラスタン湖、ダール・カビーラ村周辺、ラスタン市、キースィーン村周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のキヤースィーヤ検問所を反体制武装集団が手製の迫撃砲で攻撃し、複数の兵士が死傷した。
一方、SANA(11月5日付)によると、サルミーン市、ビンニシュ市、カフルシャラーヤー市、アーファス市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市のイマード・アルヌーク学校付近の一帯に、軍が突入し、逮捕摘発活動を行った。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・アブヤド市西部のビール・カンヌー村、マルーフ・カマル村、スーサク村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線の拠点を攻撃した。
これにより人民防衛隊戦闘員1人とサラフィー主義戦闘員2人が死亡した。
一方、クッルナー・シュラカー(11月5日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、アスハーブ・ヤミーン旅団のムハンマド・カンジュ司令官を拉致した。
同報道によると、カンジュ氏は、武装した車両で、ティシュリーン・ダムを経由して、ラッカ市に向かう途中だったという。
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アレッポ県では、リハーブ・ニュース(11月5日付)によると、アレッポ市マイサルーン地区周辺で、軍が大規模な逮捕摘発活動を行い、多数の若者を逮捕した。
またシャーム・ネットワーク(11月5日付)によると、軍がアレッポ市バニー・ザイド地区に突入し、反体制武装集団と交戦する一方、反体制武装集団はアーミリーヤ地区の軍拠点を急襲した。
一方、SANA(11月5日付)によると、タッルアラン村、タッル・ハースィル村、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、バービース村、カブターン・ジャバル村、ハンダラート・キャンプ、フライターン市東部、ファーフィーン村、アイス村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、旧市街入り口、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、SANA(11月5日付)によると、ダルアー市、ブスラー・シャーム市、アトマーン村郊外、マアルバ町、ウンム・マヤーズィン町、タイバ町、タファス市、ナワー市、ブスル・ハリール市、ハワービー市、シャイフ・マスキーン市、インヒル市、アイン・フライハ市、ジャームース市、ヒーラーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、アクナース・バイト・ムカッダス大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラタキア県では、SANA(11月5日付)によると、アラー村、バルーマー村、バイト・ハルビヤー村、ラウダ村、ズワイク村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ボスニア人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、SANA(11月5日付)によると、タッル・ハミース村郊外、ビジャーリーヤ村、タッル・イード村、アブー・カサーイブ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がラッカ市内の時計台の農夫像の頭を破壊した。
この像は、反体制活動家から「自由の像」と呼ばれていた。
レバノンの動き
レバノン・タウヒード潮流は声明を出し、シリア国内でのサラフィー主義者との戦闘に参加していた党員3人が11月4日に戦死したと発表した。
声明によると、3人はダマスカス郊外県のヘルモン山南西部に位置するアルナ村での戦闘に参加していたという。
レバノン・タウヒード潮流はドゥルーズ派のウィアーム・ワッハーブ氏が党首を務める政党。
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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首はLBCI(11月5日付)のインタビューで、アサド政権の和解を模索しているとの一部報道に対して、「再びダマスカスに行くことはないだろう」と否定した。
諸外国の動き
アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表はジュネーブで、ウェンディー・シャーマン米政治担当国務次官、ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣、ゲンナージー・ガティロフ外務次官と会談し、ジュネーブ2会議について協議した。
3者との非公式会合後、英仏中の代表も参加し、協議が継続された。
ブラーヒーミー共同特別代表は会談後、「開催日を発表できる情勢にない」と語り、ジュネーブ2会議の早期開催は困難との見通しを示した。
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ジョン・ケリー米国務長官は、訪問先のワルシャワで「どのようにしたら反体制派がアサド続投に同意を示すと考えられるのかまったくわからない」と述べた。
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イランのモハンマド・ジャファード・ザリーフ外務大臣はフランス24(11月5日付)に「イランはすべての外国の勢力に、シリアからの撤退を要求する用意がある。我々はシリア領からの非シリア人すべての撤退のために圧力をかける用意がある」と述べた。
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国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、安保理への非公開文書で、シリア国内各所で約250万人が「身動きがとれず、包囲されている」としたうえで、うち約28万8,000人をシリア軍がダルアー県、ヒムス県などで包囲していると指摘、シリア政府に近隣諸国経由での人道支援物資の搬入を認めるよう圧力をかけるべきだと提言した。
『ハヤート』(11月6日付)が報じた。
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カタールのタミーム・ビン・ハマド首相は同国シューラー議会で初めて演説を行い、「シリアの革命家」の支援を継続すると述べる一方、ジュネーブ2会議に関して「無条件、無期限の交渉は何ももたらさない」と主張した。
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ロイター通信(11月5日付)は、化学兵器禁止機関が、シリアでの化学兵器廃棄のために収集した資金が約1,000ユーロ(1,350万米ドル)にしか達しておらず、2014年以降の任務遂行のため、さらなる資金収集が必要だと報じた。
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『ハヤート』(11月7日付)によると、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長はカイロでの記者会見で、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と米露高官の会談が不調に終わり、ジュネーブ2会議の開催日が確定しなかったことに関して「不快でおかしい」と述べた。
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サマンサ・パワー米国連大使は、「我々は明らかに、この政権(アサド政権)に…懐疑心を抱いている」としたうえで、「シリア政府の一部が化学兵器の備蓄を維持したいと考えていることを示唆するものがある」と述べた。
AFP(11月5日付)が報じた。
AFP, November 5, 2013、al-Hayat, November 6, 2013, November 7, 2013、Kull-na Shuraka’, November 5, 2013、LBCI,
November 5, 2013、Naharnet, November 5, 2013、Reuters, November 5, 2013、Rihab
News, November 5, 2013、Russia Today, November 5, 2013、SANA, November 5,
2013、Sham Network, November 5, 2013、UPI, November 5, 2013などをもとに作成。
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