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国内の暴力
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の掃討作戦を避けて、サラーキブ市住民の約60%が避難した。
しかしロンドンで活動する同組織が、このような統計データを正確に入手、処理できるとは思えない。
同監視団によると、サラーキブ市と軍・治安部隊と離反兵の交戦で、市民1人が死亡した、という。
イドリブ革命指導評議会広報局メンバーだというヌールッディーン・アブドゥーなる人物によると、軍・治安部隊の戦車26輌がサラーキブ市に突入した。
またアブドゥー氏によると、自由シリア軍は23日に同市から撤退した、という。
このほかシリア人権監視団によると、アルナバ村で治安部隊の発砲により女性1人が殺害された。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、インシャーアート地区、カラム・ザイトゥーン地区、バイヤーダ地区、クサイル市に対して軍・治安部隊が砲撃し、10人が殺害された。
一方、SANA(3月24日付)によると、武装テロ集団がジャブサのガス工場の油田地帯に爆弾を仕掛けて爆破し、約70万立方メートルのガスが焼失した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ヒルバト・ガザーラ町で市民1人が治安部隊によって射殺された。
またブスラー・シャーム市の軍・治安部隊の検問所で兵士1人が殺害された。
一方、SANA(3月25日付)によると、カフルシャムス町では、治安維持部隊と武装テロ集団が工船し、テロリスト3人が殺害された。
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ハサカ県では、シリア時人権監視団によると、対イラク国境を警備する国境警備隊が襲撃され、3人が殺害された。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルアト・マディーク町に軍・治安部隊が激しい攻撃を加えた。
Afaazは26日、ヒムス市バーブ・アムル地区での外国人ジャーナリストの違法な取材や国外への脱出を支えてきた活動家のジャースィム・ハーリド・ディヤーブ氏がクサイル市近郊で逮捕されたと発表した。
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ダマスカス県・ダマスカス郊外県では、ダマスカス・郊外調整連合のムハンマド・シャーミーなる人物によると、カフルスーサ区、ドゥーマー市、アルバイン市、グータ東部の各地などで軍・治安部隊と自由シリア軍の間で激しい戦闘が行われたほか、反体制デモが続けられたというが、真偽は定かでない。
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アレッポ県では、アレッポ調整連合によると、アレッポ市スッカリー地区、シャッアール地区、サーフール地区、アシュラフィーヤ地区で反体制デモが行われたというが、真偽は定かでない。
その他の国内の動き
SANA(3月25日付)によると、ダマスカス県のダウワール・ジャマーリクおよびカッサーア地区で連続自爆テロの犠牲者を追悼する行進を慈善団体が行った。
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SANA(3月25日付)によると、ダイル・ザウル市では、外国の内政干渉拒否、改革支持を訴える大規模集会が開催された。
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SANA(3月24日付)によると、シリアのドゥルーズ派のシャイフ・アクル(最高位)、アフマド・サルマーン・ヒジュリー師が23日に死去した。
これを受け、フェイスブックなどでは同師がアサド政権に暗殺されたといった根拠のない書き込みがなされた。
アサド政権の動き
『クッルナー・シュラカー』(3月24日付)は、ベイルート在外筋の話として、リフアト・アサド前副大統領が国内のアサド家と秘密裏に会談し、和解したと報じた。
同報道によると、この和解を受け、リフアト・アサド前副大統領は、アサド大統領に、バアス党を分割し、民族主義ブロックを発足するといった構想を提案した、というが真偽は定かでない。
国外の反体制勢力の動き
パリの自由シリア軍広報局は声明を出し、自由シリア軍事評議会のもと自由シリア軍とシリア革命最高軍事評議会が実質的に統合したことを明らかにした。
同声明によると、「アンタキアにある自由シリア軍の基地で、ムスタファー・シャイフ准将が自由シリア軍事評議会の議長に正式に就任した」。
またこの軍事評議会は10人の上級士官(准将1人、大佐6人など)からなり、「リヤード・アスアド大佐の指導のもとに活動を行う」という。
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自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐は、軍事評議会の発足に関して、「現地でのシリアの反体制勢力の糾合」が実現したとしたうえで、「自由シリア軍の軍事戦略、情報政策、予算、計画実行支援」が同評議会に委ねられると述べた。
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シリア革命最高軍事評議会のハーリド・アリー大佐は、自由シリア軍のアスアド大佐が「自由シリア軍の実戦における指導を監督するだろう」と述べ、現地で活動するすべての部隊に同大佐の指導に服すよう呼びかけた。
またシリア革命最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将ら上級士官に関しては、彼らが自由シリア軍の戦略と武装・財政支援の手段を決定すると付言し、実際の指揮はアスアド大佐に委ねるとしたうえで、同大佐、シャイフ准将が、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長と折衝を続けていることを明らかにした。
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一方、在外の反体制勢力の一つ、シリア国民評議会は、4月2日に予定されているシリアの友連絡グループ第2回会合に先立って、3月26、27日にイスタンブールで大会を開くと発表した。
レバノンの動き
進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、「アサド家との和解に到達し得ると考える者は気が狂っている」と述べた。
ジュンブラート党首はハーフィズ・アサド前大統領の死と前後して、親シリア派から反シリア派に身を転じ、2005年の独立インティファーダを支援した後、2009年に3月14日勢力を離反し、アサド大統領と和解している。
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アドナーン・マンスール外務大臣は、『サフィール』(3月24日付)に対して、「レバノンはシリア国民評議会を承認しないだろう」と述べた。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・プリコドコ大統領補佐官は、コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使とメドベージェフ大統領の会談を前に、外国の反体制勢力の支援を停止しなければ、アサド政権と反体制勢力の停戦は困難だろう、と述べた。
同補佐官は「西側が危機の一方の当事者にだけ財政支援している限り、シリアの危機は正常化し得ないだろう」としたうえで、「シリアの友連絡グループ」がこうした方法に依拠していると批判的な姿勢を示した。
一方、インテルファクス通信(3月24日付)は、クレムリン高官が「アサド大統領の状況がきわめて困難であり、彼に計画があるかどうかも分からない。彼が今後さらに10年も政権の座にとどまることを誰も期待していない」と述べたと報じた。
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『ハヤート』(3月25日付)は、ヨルダンの治安当局が領内(マフラク市)のシリア人避難キャンプでスパイ活動をするシリア人離反兵10人を逮捕した、と報じた。
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GCCのアブドゥッラティーフ・ズィヤーニー事務局長はロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣の20日の発言に関して、「カイロでのロシアとGCCの合意の精神に反する」と批判した。
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トルコの慈善団体は、2週間前にシリア領内での違法な取材の最中に身柄を拘束されたトルコ人記者2名の身柄をめぐって、トルコ・シリア両国で帰国のための交渉が行われている、と発表した。
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米国内務省は、「シリア国内の混乱を踏まえ」、滞在期間を超過したシリア人に対してビザなしでの米国内での滞在を認めるとの決定を下した。
米高官によると、これにより約2,500人から3,000人が引き続き米国内に滞在することになる、という。
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UNHCRは報告書を発表、そのなかでシリア人避難民約14,000人がレバノン領内に避難してきたとの数値を明らかにした。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、『ハヤート』(3月25日付)に対して、3月末のバグダードでの連盟首脳会談で、シリア情勢に関する統一の姿勢が打ち出され、国連での必要な決議採択が実現することを期待する、と述べた。
AFP, March 24, 2012、Akhbar al-Sharq, March 24, 2012、al-Hayat, March 25, 2012、Kull-na Shuraka’, March 24, 2012、Naharnet.com, March 24,
2012、Reuters, March 24, 2012、al-Safir, March 24, 2012、SANA, March 24, 2012、al-Sharq al-Awsat, March 27, 2012などをもとに作成。
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