サラフィー主義武装集団7組織が「独立した政治・軍事・社会的運動体」としてのイスラーム戦線の結成を発表するなか、プーチン大統領がエルドアン首相と会談、後者は「過激派集団も暴力の責任の一端を担っている」との見解を示す(2013年11月22日)

Contents

反体制勢力の動き

サラフィー主義武装集団7組織がビデオ声明(http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=3QVZmtity7A)を出し、イスラーム戦線を結成したと発表した。

Kull-na Shuraka', November 22, 2013

Kull-na Shuraka’, November 22, 2013

イスラーム戦線は、シャームの鷹旅団のアフマド・イーサー・シャイフ司令官がシューラー評議会議長を、またタウヒード旅団のアブー・ウマル・フライターン市が副議長を、ハック旅団のアブー・ラーティブ・ヒムスィー氏が書記長を務める。

またシャーム自由人大隊のアブー・アッバース氏が法務責任者に、イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官が軍事司令部の司令官に、イスラーム自由人運動のハッサーン・アッブード司令官が政治委員会議長に就任した。

イスラーム戦線に所属した7組織は、イスラーム軍、シャーム自由人運動、シャームの鷹旅団、タウヒード旅団、アンサール・シャーム大隊、ハック旅団、クルド・イスラーム戦線で、『ハヤート』(11月23日付)によると、50,000人以上の戦闘員を擁する。

Youtube, November 22, 2013

Youtube, November 22, 2013

シャイフ議長によると、イスラーム戦線は、単なる軍事組織ではなく「独立した政治・軍事・社会的運動体」だという。

イスラーム戦線は、アサド政権の「完全打倒」と「アッラーの主権が確立したイスラーム国家の建設」をめざし、「社会におけるイスラームのアイデンティティを維持し、イスラーム的人格を完成させ、構成、独立、相互扶助の原則のもと、イスラームの原則に合致したかたちでのシリアを再建する」という。

また「シャリーアの原則に依拠…、イスラーム社会においては何人たりともこの原則に疑義を呈することは許されず、憲法などの法律の制定やその執行はこの原則に依拠すべき」としている。

『ハヤート』(11月23日付)は、信頼できる消息筋の話として、イスラーム戦線は、シャームの民のヌスラ戦線と共闘する一方、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)に対抗するだろうと報じた。

**

民主的変革諸勢力国民調整委員会のムンズィル・ハッダーム報道官はフェイスブック(11月22日付)で、ラジャー・ナースィル書記の逮捕に関して、委員会が、メンバーを含む逮捕者の釈放がなければ、ジュネーブ2会議への出席を見合わせることを真剣に検討している、と綴った。

**

シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者はアラビーヤ(11月22日付)に「バッシャール・アサドを支援する国があるが、これらの国は共犯者だ。イランは自分たちが革命的だと言うが、ハーフィズ・アサド体制と同様の犯罪者だ。ヒズブッラーはシリア国民を殺してパレスチナを解放しようとしている…。ハサン・ナスルッラーはパレスチナを解放するためにシリアで戦っている!」と批判した。

**

シリア革命反体制勢力国民連立のファールーク・タイフール副議長(シリア・ムスリム同胞団)は、反体制勢力の統一使節団が結成されなければ、ジュネーブ2会議に参加しないだろうと述べた。

クッルナー・シュラカー(11月22日付)が報じた。

シリア政府の動き

カドリー・ジャミール前経済問題担当副首相はDPA(11月22日付)の電話取材に対して、「アサド大統領は大統領選挙に再出馬を禁じるものはないが、それは個人的な願望と国民の願望による、と述べた。第1の願望についてだが、私はあると思う。しかし第2の願望について話すことは時期尚早だ…。アサド大統領は次期選挙実施まで留任するだろう。これは国際社会において合意されている」と述べた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とシャームの民のヌスラ戦線が、国際幹線道路上に位置する要衝ダイル・アティーヤ市をほぼ完全に制圧した。

これに関して、ラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、AFP(11月22日付)に「軍は依然としてダイル・アティーヤ市のバースィル病院や、同市周辺の丘陵地帯に展開している」と述べた。

また同監視団によると、ダイル・アティーヤ市に近いナバク市でも、ダーイシュ、ヌスラ戦線が軍と交戦しているという。

しかし、シリア軍治安筋は、AFPに対して反体制武装集団によるダイル・アティーヤ市制圧を否定、「テロリストはカーラ市から逃走、同市周辺の建物に立てこもっており、軍がこれに対処している」と述べた。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、「自由シリア軍」が軍との数日にわたる戦闘の末、ダイル・アティーヤ市を完全制圧したと発表し、「政権が勝利しているという幻想の嘘を明らかにする成果」と鼓舞した。

このほか、シリア人権監視団によると、軍は、カラムーン地方の16以上の村を空爆する一方、ザバダーニー市、ダイル・アティーヤ市、ムウダミーヤト・シャーム市、ダーライヤー市、ハーン・シャイフ・キャンプ、ザマルカー町に対して砲撃を加えたほか、バービッラー市一帯で、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員、アブー・ファドル・アッバース旅団が、サラフィー主義武装集団と交戦した。

他方、SANA(11月22日付)によると、アルバイン市、リーハーン農場、ハラスター市、バハーリーヤ市郊外、ダイル・アティーヤ市周辺、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また、サイドナーヤー町のシールービーム修道院周辺、ジャルマーナー市に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民4人が負傷した。

しかし、シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、シリア軍がダマスカス郊外県サイドナーヤー町のシールービーム修道院をカラムーン地方に対する砲撃の拠点として利用していると主張、非難した。

**

ダマスカス県では、シリア革命総合委員会、カーブーン区周辺で、軍と反体制武装集団が交戦した。

また、シリア人権監視団によると、カッサーア地区、クスール地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾した。

一方、SANA(11月22日付)によると、カーブーン区、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また、カッサーア地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民2人が負傷した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ナッカーリーン村で軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員、アブー・ファドル・アッバース旅団が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線と交戦、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)を軍が空爆した。

一方、SANA(11月22日付)によると、シャイフ・ナッジャール市工業団地、アレッポ市カースティールー地区、キンディー大学病院周辺、アレッポ中央刑務所周辺、ハーン・アサル村、アナダーン市、フライターン市、ICARDA周辺、ナッカーリーン村一帯で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区を軍が空爆した。

またCONOCOガス工場一帯で、シャームの民のヌスラ戦線をはじめとするサラフィー主義武装数段が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦した。

**

ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(11月22日付)によると、ウガイバシュ村での民主統一党人民防衛隊とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘を受け、ダイル・ザウル県に展開していたイスラーム軍の偵察部隊がハサカ県ラアス・アイン市方面に向かった。

**

イドリブ県では、SANA(11月22日付)によると、アリーハー市、タッル・サラムー市、アブー・ズフール市西部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダルアー県では、SANA(11月22日付)によると、シャイフ・サアド村、シャイフ・マスキーン市、ナースィリーヤ村、アブー・ガーラ村、アイン・フライハ村、サフム・ジャウラーン村、ヒーラーン村、ザアルーラ村、ラフィード村、ラスム・ダルブ村、ダルアー市内各所、サムリーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ヒムス県では、SANA(11月22日付)によると、ラスタン市、タルビーサ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ナハールネット(11月22日付)などによると、爆弾を積んだ自動車8台がレバノン国内に入国したとする内務治安軍総局 宛の総合情報総局文書のコピーがインターネットなどで公開されていると報じた。

この文書には、8台の車種、色などが列記されている。

**

NNA(11月22日付)によると、レバノン軍は、ベカーア県バアルベック郡マクナ村・ユーニーン村間で、武装集団と交戦の末、500キロのTNT爆弾が仕掛けられた車を押収、爆弾を解除した。

**

LBCI(11月22日付)は、ベイルート県郊外ビイル・ハサン地区のイラン大使館前での自爆テロの実行犯の1人の身元が判明したと報じた。

同報道によると、実行犯の1人は南部県サイダー市出身のムイーン・アブー・ダフル氏で、サラフィー主義シャイフのアフマド・アスィール師と近しい関係にあったという。

ジャディード・チャンネル(11月22日付)によると、アブー・ダフル氏は、クウェート、シリアに滞在していたという。

**

OTV(11月22日付)は、ベイルート県郊外ビイル・ハサン地区のイラン大使館前での自爆テロの実行犯が使用していたとされる偽造IDカードの写真を入手、公開した。

諸外国の動き

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、サンクトペテルブルクを訪問中のトルコのレジェップ・チイプ・エルドアン首相と会談し、シリア情勢などについて協議した。

会談後の共同記者会見では、両首脳は、ジュネーブ2会議を早期に開催する必要があることを確認したと述べた。

プーチン大統領は「多くの過激派が現在、シリアで戦っているという事実を無視することはできない。彼らに混乱の責任はある」と述べた。

また「トルコ首相が述べた通り、我々はおしなべて、この方向(ジュネーブ2会議開催)に向けて前進している。この大会はまもなく開催されるだろう」と述べた。

そのうえで「モスクワはシリア政府に大会参加を説得すると約束し、それを実行した。現在、西側のパートナーが反体制を同じように説得しなければならない」と述べた。

一方、エルドアン首相は「民間人殺戮の根本的責任」がアサド政権にあるとしつつ、「過激派集団も暴力への責任の一部を負っている」と述べた。

また「シリア情勢が悪化するなかこれ以上時間を無駄にはできない…。当初から我々はシリアに関する国際会議の開始を支持してきた。しかし残念ながら、最初の大会(2012年6月のジュネーブ合意)は望ましい結果をもたらしていない」と述べた。

**

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表はジュネーブで、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣と会談し、ジュネーブ2会議の準備などについて協議した。

AFP, November 22, 2013、Alarabia.net, November 22, 2013、DPA, November 23, 2013、al-Hayat, November 23, 2013、Kull-na Shuraka’, November 22, 2013、al-JadeedI, November
22, 2013、LBCI, November 22, 2013、Naharnet, November 22, 2013、NNA, November
22, 2013、OTV, November 22, 2013、Reuters, November 22, 2013、Rihab News,
November 22, 2013、SANA, November 22, 2013、UPI, November 22, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.