イスラーム国がアル=カーイダのザワーヒリー指導者の指令に反するかたちでシリアでのジハードを継続するよう呼びかけ、ハサカ県では自由シリア軍とサラフィー主義武装集団がウガイバシュ村にある検問所を襲撃するも人民防衛隊がこれを撃退(2013年11月21日)

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反体制勢力の動き

クッルナー・シュラカー(11月21日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のアブー・ムハンマド・アドナーニー氏が音声声明を出し、アイマン・ザワーヒリー氏の声明に反するかたちで、ダーイシュへの参加を通じてシリアでのジハードを継続するよう呼びかけた。

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クッルナー・シュラカー(11月21日付)は、アレッポ県アターリブ市で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、住民に対して支援物資や金銭の提供など、水道設備などの修復などを行い、自治に積極的に関与しようとしていると報じた。

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シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)は、イドリブ県内の支配地域にある小学校5年生から高校3年生の女子生徒に対してヒジャーブ着用を呼びかけるとともに、着用義務に従わない女子生徒の入校を認めないとの姿勢を示した。

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イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官はクッルナー・シュラカー(11月21日付)に対して、同軍の殉教者数が3,000人に達していることを明らかにした。

アッルーシュ司令官によるとこの数は、イスラーム旅団の殉教者数1,500人の倍におよぶという。

アッルーシュ司令官はまた、イスラーム軍の武器入手経路に関して、90%がシリア軍から捕獲、残り10%がブラック・マーケットで購入していると主張し、外国からの支援を否定した。

しかし、ダマスカス県・ダマスカス郊外県で結成した作戦司令室に関して、クウェートの支援者会議が支援を約束したが、同司令室は47万ドルしか資金を得ることができなかったことを明かした。

この資金のうち、10万ドルはダマスカス県カーブーン区の作戦に使用され、7万ドルが司令室結成にかかる費用として支出され、残りの資金は、6つの武装部隊に5万ドルずつ配給されたという。

なおイスラーム旅団は5万ドルの資金しか受け取っていないという。

一方、イスラーム軍の参加組織に関して、アッルーシュ司令官は、サハーバ大隊、シャーム自由人大隊、ハビーブ・ムスタファー大隊が脱会したことを明らかにした。

シャームの民のヌスラ戦線に関しては、「シリアの武装部隊で、彼らと多くの戦いに参加した。彼らのなかに大胆さ、ジハードを見出している。ヌスラ戦線なしではいられない。彼らが逸脱しているとは思っていない」と述べ、共闘の必要を強調した。

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オリエント・ネット(11月21日付)は、民主的変革諸勢力国民調整委員会のラジャー・ナースィル書記逮捕(20日付)に関して、シリア革命反体制勢力国民連立とともに統一使節団を結成し、ジュネーブ2会議に参加する案を提示したことが主因だと報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ベイルート郊外のビイル・ハサン地区にあるイラン大使館近くでの自爆テロに関して、「あらゆる場所であれ民間人に対して及ぶ犯罪行為をシリア革命は非難する」と発表し、犠牲者に弔意を示した。

そのうえで、イランやヒズブッラーが犯罪・テロ行為に与することなくアサド政権は存続し得ないと主張、イランのジュネーブ2会議への参加を拒否した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、軍によるヒムス市国立病院攻撃に関して、紛争の政治的解決に真摯でない、と批判した。

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『ハヤート』(11月23日付)は、複数の消息筋の話として、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・トゥウマ暫定内閣首班がトルコ高官と会談し、トルコ側から「政治、経済、人道面での全面支援」を約束されたと報じた。

国内の暴力

イドリブ県では、ロイター通信(11月21日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が対トルコ国境に位置するアティマ村を制圧、同市を掌握していたイスラームの鷹旅団のムスタファー・ワッダーフ司令官を拘束した。

Kull-na Shuraka', November 21, 2013

Kull-na Shuraka’, November 21, 2013

一方、SANA(11月21日付)によると、ザアラーナ地方、クーリーン村、マアッルバリード村、アブー・ズフール市、タフタナーズ市、マアッラト・ヌウマーン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会によると、軍がナバク市を空爆した。

またシリア革命総合委員会は「カラムーンの戦い」で「自由シリア軍」がダイル・アティーヤ市のハーフィズ・アサド前大統領の像を破壊したと発表し、写真を公開した。

一方、シリア人権監視団によると、ハラスター市近郊の国際幹線道路での軍と反体制武装集団との交戦に、女性1人が巻き込まれて死亡、士官1人を含む4人が負傷、ダイル・アティーヤ市でも子供1人が狙撃され、負傷した。

また、ハーン・シャイフ・キャンプ一帯、バービッラー市にも迫撃砲弾が着弾、ザマルカー町が軍の空爆を受けた。

他方、クッルナー・シュラカー(11月21日付)によると、ダイル・アティーヤ市では、反体制武装集団が爆弾を仕掛けた車を爆発するなどして軍事情報局検問所複数カ所を攻撃、軍事情報局ダイル・アティーヤ局長のナースィル・ハーッジ・アフマド少佐らを殺害した。

このほか、SANA(11月21日付)によると、ザマルカー回廊、バービッラー市、ダーライヤー市、カーラ市周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ハムラー地区、シャアラーン地区(スィブキー講演)、旧市街のマナーヒリーヤ地区、アスルーニーヤ地区、マッザ86地区に迫撃砲弾が着弾した。

一方、SANA(11月21日付)によると、カーブーン区、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また、ルクンッディーン区、バーブ・トゥーマー地区、カッサーア地区、アッバースィーイーン地区、マサーキン・バルザ地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民10人が負傷した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(11月21日付)によると、ハサカ市・タッル・タムル町間に位置するウガイバシュ村にある民主統一党人民防衛隊検問所を、「自由シリア軍」とサラフィー主義武装集団が襲撃し、人民防衛隊の戦闘員10人を殺害した。

しかし人民防衛隊は武装集団を撃退した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サラーフッディーン地区に、反体制武装集団が迫撃砲弾を撃ち込む一方、軍もジャズマーティー地区を砲撃した。

また、クッルナー・シュラカー(11月21日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がアターリブ市郊外のバータブー村の地元評議会本部を制圧した。

一方、SANA(11月21日付)によると、ICARDA、ナイラブ村北部、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、アナダーン市、フライターン市、カフルダーイル村、カフルハムラ村、ダフラ・シャルファ市、ダイル・ジャマール回廊、カースティールー街道、ムスリミーヤ街道、ナッカーリーン村北部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、旧市街、ブスターン・カスル地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のカラム・シャーミー地区にあるハーッジ・アーティフ講演に迫撃砲が着弾し、市民9人が死亡した。

一方、SANA(11月21日付)によると、ラスタン湖、ハーリディーヤ村、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤ村、カフルラーハー市、シャーイル山(ハマー県)西部、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また、ヒムス市マハッタ地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民3人が死亡、25人が負傷した。

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ダルアー県では、SANA(11月21日付)によると、インヒル市、ダルアー市国立病院周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また対ヨルダン国境地帯では、ヨルダンのジャーナリストらを乗せたバスに対して、反体制武装集団が爆弾を仕掛け車を爆破させ、5人が負傷した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線など複数の武装集団が制圧していたCONOCOガス工場一帯をイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)に属す武装部族集団が制圧、シャリーア委員会メンバー多数を拘束した。

またダイル・ザウル市ハウィーカ地区、フシャーム市が軍の砲撃を受けた。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タブカ市が軍の砲撃を受ける一方、第17師団基地周辺で軍と反体制武装集団が交戦した。

レバノンの動き

『ナハール』(11月22日付)は、ベイルート県郊外ビイル・ハサン地区のイラン大使館前での自爆テロに関して、容疑者1人が逮捕されたと報じた。

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『サフィール』(11月22日付)は、治安筋の話として、ベイルート県郊外ビイル・ハサン地区のイラン大使館前での自爆テロの実行犯がレバノン人ではなく、ヨルダンから入国した外国人である可能性が高いと報じた。

また同紙によると、実行犯は犯行の前日にヴェルダン地区のフォー・シーズンズ・ホテルに宿泊、ホテルを出た70分後に自爆テロが発生したという。

諸外国の動き

エジプト外務省報道官は、シリア人避難民、とりわけ大学生など学生の状況改善のための会合を開催したと発表した。

AFP, November 21, 2013、al-Hayat, November 22, 2013, November 23, 2013、Kull-na Shuraka’, November 21, 2013、al-Nahar, November 21, 2013、Naharnet, November 21, 2013、Orient.net, November 21, 2013、Reuters, November 21, 2013、Rihab News, November 21, 2013、al-Safir, November 21, 2013、SANA, November 21, 2013、UPI, November 21, 2013などをもとに作成。

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