『ニューヨーク・タイムズ』:「タロン・アンヴィル」と呼ばれる極秘部隊がシリア領内で農夫、子供、家族、村人を巻き込むかたちで爆撃を実施(2021年12月12日)

『ニューヨーク・タイムズ』(12月12日付)は「極秘部隊のISIS(ダーイシュ(イスラーム国))に対する爆撃で民間人の死者が増加」(デイブ・フィリップス記者、エリック・シュミット記者、マーク・マッゼッティ記者)と題したリポートを掲載した。

リポートは複数の現役および退役した軍・諜報機関関係者の情報をもとに書かれたもの。

それによると、「タロン・アンヴィル」と呼ばれる極秘部隊が2014年から2019年までの期間、ダーイシュの車列、爆弾を装備した車輌、司令拠点、戦闘機部隊に対して24時間体制(三交代制)で爆撃を実施していた。

しかし、この部隊は、非戦闘員を保護するための規則を無視し、収穫作業に従事する農夫、街にいる子供、戦闘を逃れた家族、建物内に避難している村人など紛争に関与していない人々を殺害したという。

タロン・アンヴィルは、20人にも満たない人々によって複数のモニターが設置された場所不明の部屋から司令を受ける小規模な部隊だったが、ダーイシュに対して11万2000回の爆撃・ミサイル攻撃を実施し、その規模ゆえに軍の規則に対して緩い解釈がなされた。

2016年から2018年にかけて数百回におよぶタロン・アンヴィルの作戦にかかわった空軍情報部の元士官は「彼らは冷酷なまでに効率的で良い仕事をした…。だが、多くの過った爆撃を行った」と証言した。

ダーイシュに対する米軍の爆撃は最高指揮官の監督のもと、民間人の犠牲を極力回避するために正確を期して実施されていたが、4人の現役および退役した士官の話によると、タロン・アンヴィルの場合、命令は最高指揮官ではなく、米軍デルタフォースの下位の指揮官によって下されていたという。

タロン・アンヴィルの爆撃をめぐっては、パイロットらが事実確認がとれていない人口密集地域内の標的を狙うことを拒否したり、CIAの高官が爆撃の仕方に抗議することもあったという。

また、空軍内の諜報チームがタロン・アンヴィルと「レッドライン」と呼ばれる電話回線を用いて議論を行ったことや、タロン・アンヴィルの一部隊員が爆撃参加を拒否したこともあったという。

空軍の作戦司令室は、タロン・アンヴィルの爆撃で幾度となく民間人が巻き添えとなって死亡していたことを確認していた。

例えば、2017年3月に実施された爆撃では、50人が避難していたビルに対して500ポンド爆弾が使用されたが、指揮官らは、こうした事案を調査することに消極的だったという。

なお、『ニューヨーク・タイムズ』(11月13日付)にリークした、2019年3月18日のダイル・ザウル県バーグーズ村に対して米軍が行った爆撃(女性や子供を含む70人以上が死亡)も、このタロン・アンヴィルによって実施されたもの。

シリアでの爆撃は、「タスクフォース9」と呼ばれる特殊作戦部隊が実施しており、タロン・アンヴィルは公式には実在しないことになっている。

「タスクフォース9」の任務は多岐に及び、そのなかには、グリーンベレー部隊による人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の教練、ダーイシュのアブー・バクル・バグダーディー暗殺などデルタフォースによる地上作戦も含まれていた。

だが、爆撃については、そのほとんどにタロン・アンヴィルが関与していた。

その司令室は当初イラクのアルビールに設置されていたが、その後、イラク国境に近いシリア領内に設置された「グリーン・ヴィレッジ」と呼ばれる複合型居住施設に移設された。

司令室内では、隊員らはファーストネームで呼び合い、ラフな格好で、RQ-1プレデターやMQ-9 リーパーといった無人航空機(ドローン)を操り、AGM-114ヘルファイア空対地ミサイルやレーザー誘導爆弾で爆撃を行っていたという。

The New York Times, December 12, 2021をもとに作成。

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ラッカ市西でシリア民主軍が若い夫婦にいやがらせを行った末、夫を銃殺(2021年12月12日)

ラッカ県では、SANA(12月12日付)によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるラッカ市西のジャズラ交差点で若い男性に発砲し、殺害した。

ドゥラル・シャーミーヤ(12月12日付)が複数の地元筋の話として伝えたところによると、事件は、この男性(ハサン・バクリー・アブー・イブラーヒーム氏)が妻とともにジャズラ交差点のシリア民主軍の検問所を通過しようとした際に、兵士らが妻にいやがらせをしたことがきっかけ。

いやがらせを辞めさせようとする男性と口論となったシリア民主軍兵士が男性に発砲し、殺害した。

事件を知った住民らは、抗議デモを呼びかけているという。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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アレッポ県タッル・リフアト市近郊のヒルバト・ハヤート村でトルコとその支援を受ける「テロリスト傭兵」の占領に抗議するデモが行われ、住民らが参加(2021年12月12日)

アレッポ県では、SANA(12月12日付)によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のヒルバト・ハヤート村でトルコとその支援を受ける「テロリスト傭兵」の占領に抗議するデモが行われ、住民らが参加した。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県でシリア民主軍がアサーイシュに発砲、住民が街道を封鎖し抗議(2021年12月12日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の支配下にあるガラーニージュ市で人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が検問所を無視して通過しようとした内務治安部隊(アサーイシュ)の幹部の車に向けて発砲し、物的被害が出た。

これに抗議し、住民が幹線道路を封鎖し、シリア民主軍の車輌を標的とするなどとして抗議の意思を示した。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県に駐留する米軍とつながりがあり、トルコ占領地の指名手配者の監視にあたっていた男性が逃亡先のハサカ市で殺害される(2021年12月12日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県シュハイル村出身の男性(’.Sh.)がシリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるハサカ市で失踪、その後遺体で発見された。

この男性は、ダイル・ザウル県ウマル油田に駐留する米軍部隊とつながりがあり、トルコ占領下にあるいわゆる「平和の泉」地域(ハサカ県ラアス・アイン市一帯、ラッカ県タッル・アブヤド市一帯)での指名手配者の監視を統括していたとされ、ラッカ県に対する米主導の有志連合の爆撃で家族を失った親戚の追手を逃れて、10月25日にハサカ市に移動していたという。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県ブーカマール市で、指名手配者、脱走兵、兵役忌避者の大規模社会復帰手続きが続く(2021年12月12日)

ダイル・ザウル県では、SANA(12月12日付)によると、ブーカマール市に設置された和解センターで、指名手配者、脱走兵、兵役忌避者の大規模社会復帰手続きが続けられた。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県ムサッラブ村近郊でダーイシュがパレスチナ人民兵組織のクドス旅団とシリア軍大17師団の拠点複数カ所を襲撃し、24人を殺傷、ロシア軍が同地を爆撃(2021年12月12日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団、アイン・フラート(12月12日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)が11日深夜から12日未明にかけて、ムサッラブ村近郊の砂漠地帯にあるパレスチナ人民兵組織のクドス旅団とシリア軍大17師団の拠点複数カ所を襲撃し、民兵と兵士7人を殺害、17人を負傷させた。

これを受けるかたちで、ロシア軍戦闘機は同地一帯でダーイシュに対して8回の爆撃を実施した。

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、‘Ayn al-Furat, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表がシリアを訪問し、ミクダード外務在外居住者大臣と会談(2021年12月12日)

ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表がシリアを訪問し、ファイサル・ミクダード外務在外居住者大臣と会談した。

SANA(12月12日付)によると、会談では、シリア国内情勢や政治プロセスの進捗状況について意見が交わされ、ミクダード外務在外居住者大臣は、トルコが、アスタナ会議での諸合意に反して侵略的・非人道的行為を続け、国際人道法に違反して占領地のトルコ化やハサカ県への水道供給停止を行い、テロ支援や治安紊乱を試みていると指摘した。

また、ペデルセン特別代表が制憲委員会(憲法制定委員会)の進捗についての報告すると、ミクダード外務在外居住者大臣は、外国の干渉を回避することが重要だと述べた。

https://www.facebook.com/Mofaexsy/posts/3151911581762614

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるイドリブ県カフル・ムーサー村一帯を砲撃し、シリア軍兵士3人が死亡、2人が負傷(2021年12月12日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるカフル・ムーサー村一帯を砲撃し、シリア軍兵士3人が死亡、2人が負傷した。

「決戦」作戦司令室はまた、カフルバッティーフ村一帯を砲撃した。

これに対して、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のファッティーラ村、バイニーン村、フライフィル村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるアターリブ市を砲撃し、男性1人が死亡した。

シリア軍はまた、カフルタアール村に対して激しい砲撃を行った。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を8件(イドリブ県2件、ラタキア県0件、アレッポ県6件、ハマー県0件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は0件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を確認しなかった。
https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3113062812269787

AFP, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で83人、アル=カーイダとトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で29人、政府はレバノン人の入国規制を大幅緩和(2021年12月12日)

保健省は政府支配地域で新たに83人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者97人が完治し、5人が死亡したと発表した。

これにより、12月12日現在の支配地内での感染者数は計49,272人、うち死亡したのは2,814人、回復したのは30,473人となった。


https://www.facebook.com/syrianarabnews/posts/661121798604234

また、内務省は、12月13日からレバノン人の入国規制を大幅に緩和すると告知した。

告知によると、内務省が定めた新型コロナウイルス感染症にかかる感染予防対策、ないしは96時間以内のPCR検査を受け、結果が陰性だったことが入国の条件となる。
SANA(12月12日付)が伝えた。
https://www.facebook.com/syrianmoi/posts/1523754761342376

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反体制系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で12月12日に新たに29人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、146人が完治し、0人が死亡したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡0人、イドリブ郡7人、ハーリム郡13人、アリーハー郡2人、アレッポ県スィムアーン山郡0人、ジャラーブルス郡1人、バーブ郡0人、アフリーン郡6人、アアザーズ郡0人。

これにより、同地での感染者数は計92,658人、うち死亡したのは2,272人、回復したのは65,226人となった。
https://www.facebook.com/ACUSyria/posts/1729480040590213

AFP, December 12, 2021、ACU, December 12, 2021、ANHA, December 12, 2021、al-Durar al-Shamiya, December 12, 2021、Reuters, December 12, 2021、SANA, December 12, 2021、SOHR, December 12, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民305人と国内避難民(IDPs)22人が新たに政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は731,079人、2019年以降帰還したIDPsは105,572人に(2021年12月12日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報を公開し、12月11日に難民305人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民297人(うち女性89人、子供152人)、ヨルダンから帰国したのは8人(うち女性2人、子供4人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は731,079人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者334,222人(うち女性100,441人、子ども170,167人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者396,857人(うち女性119,105人、子ども202,399人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,822,156人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は960,359人(うち女性288,204人、子供489,488人)となった。

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一方、国内避難民22人が新たに帰宅した。

ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由して帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは22人、イドリブ県の「緊張緩和地帯」から帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所経由の帰還者のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は22人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は105,572人(うち女性41,366人、子供34,031人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,374,168人(うち女性423,925人、子供677,797人)となった。
https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3113065055602896

Ministry of Defence of the Russian Federation, December 12, 2021をもとに作成。

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