シャーム解放機構支配地、トルコ占領地でシャーム解放機構に反対するデモが行われ、イスラーム解放党のメンバーらの釈放、政府との和解拒否などが訴えられる(2023年6月9日)

イナブ・バラディー(6月9日付)、オガレット・ポスト(6月9日付)、NPA(6月9日付)、シリア人権監視団などによると、シャーム解放機構の支配下にあるイドリブ県アティマ村近郊の国内避難民(IDPs)キャンプ(アティマ・キャンプ)、ダイル・ハッサーン村、フーア市、ダーナー市近郊のIDPsキャンプ、トルコ占領下の「ユーフラテスの盾」地域内のアレッポ県バーブ市、スーラーン・アアザーズ町で「暴君に正統性なし」と銘打ったデモが行われ、デモ参加者は、イスラーム解放党メンバーおよびそれ以外の逮捕者全員の釈放、家宅捜索反対を訴えるとともに、シャーム解放機構による「恣意的でシャッビーハ的」な逮捕に拒否の姿勢を示すとともに、「暴君どもの手法は一つ、我々の目的は革命」などと連呼し、シリア政府との和解拒否、シリア革命の原則維持を訴えた。

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イナブ・バラディー(6月9日付)、ムドン(5月16日付)などによると、イスラーム解放党のメンバーらは、シャーム解放機構が「(メンバーらの)口封じをし、抑圧体制(シリア政府のこと)の手法を真似し、同体制に対する戦線を凍結した」と非難、これに対してシャーム解放機構側は、イスラーム解放党が反体制派の隊列を分裂させ、戦闘員を裏切り、噂を拡散していると非難している。

両者の対立は、5月7日にシャーム解放機構に所属する総合治安機関がダイル・ハッサーン村でイスラーム解放党の「書記長」を含むメンバーや住民を逮捕、家宅捜索を行ったことで一気に激化した。

ダイル・ハッサーン村で活動するイスラーム解放党の「書記長」は同日晩に釈放されたが、その際、総合治安機関が要撃を受け、隊員1人が撃たれて死亡、2人が負傷した。

複数筋によると、ダイル・ハッサーン村の住民は、武器を所持しておらず、要撃には関与していないと主張しており、発砲は総合治安機関による誤射で、住民は負傷した隊員を病院に搬送するなど救命活動に参加したという。

なお、ダイル・ハッサーン村の住居に対するシャーム解放機構の総合治安機関の強襲では、女性1人が負傷したほか、別の女性1人が流産したという。

5月7日に逮捕されたメンバーや住民のうち、18歳の高校生と無所属の戦闘員の1人が5月29日に釈放された。

https://www.facebook.com/watch/?v=772840127659071

https://www.facebook.com/watch/?v=3527841560833836


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一方、シリア人権監視団によると、政府の支配下にあるダルアー県のジャースィム市とナワー市で、「アッラーは、我々のなかで彼らと和解する者を正すことはない」などと書かれたビラがばらまかれた。

AFP, June 9, 2023、ANHA, June 9, 2023、al-Durar al-Shamiya, June 9, 2023、‘Inab Baladi, June 9, 2023、al-Mudun, May 16, 2023、NPA, June 9, 2023、Reuters, June 9, 2023、SANA, June 9, 2023、SOHR, June 9, 2023、Ugaritpost, June 9, 2023などをもとに作成。

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