イスラエル軍はシリア領内の9の前哨基地を設置、占拠を続ける構え(2025年2月11日)

イスラエル軍ラジオ局(ガレー・ツァハル)のジャーナリスト兼ニュースリポーターのドロン・カドッシュ氏は、占領下ゴラン高原の東側に隣接する兵力引き離し地域(AOS)を取材、イスラエル軍ラジオ局が報じたリポートの内容をXを通じて報告した。

その内容は以下の通り。

シリアのヤルムーク川河畔、イスラエル、シリア、ヨルダン三ヵ国の国境地帯にあるシリア側地域を訪問した。この場所は1973年以来、イスラエル人記者が訪れたことのない地域だ。 右側の山はヨルダン領、左側はイスラエル領、そして正面はシリア領だ。 この三ヵ国の国境地帯の三角形の境界線のうち、現在イスラエルが2つの辺を支配している。我々は第890空挺部隊とともにこの地域を訪れた。

イスラエル国は、ひそかにシリア領内に安全地帯を設置した。 これは一時的な部隊の駐留にとどまらず、安全地帯全体に沿って9つの前哨基地が建設されており、工事はすでに進行中だ。 このうち2つは、シリア領のヘルモン山(シャイフ山)地域にあり、さらに7つは緩衝地帯内とその外側にある。 これらの前哨基地には、居住施設、シャワー、集会所、さらにはシナゴーグまで備えた完全なインフラが整備されている。

第890空挺部隊の兵士たちは、前哨基地の建設が完了するまでの間、アサド体制軍が残していった施設を利用している。彼らは、かつての兵舎で寝泊まりし、アサド軍の壕や警備所を使用している。 中隊長のA大尉は、「あたかも通常の前線任務を遂行しているように日常的にパトロールや警備を行っている」と語った。 だが、兵士たちに唯一不足していたのは、トレーニング施設だったため、自作の簡易トレーニング設備を工夫して作り上げた。

ヤルムーク川河畔を非装甲ジープで走行中、周辺のシリアの村の住民と出会った。彼らは羊を放牧したり、ヤルムーク川から村に水道管を引いていた。 彼らのすべての行動はイスラエル国防軍の許可を得て行われている。 軍は、基本的には、特定の区域内での農作業や移動を許可しているが、すべて軍の承認が必要だ。これまでのところ、特筆すべき衝突は発生していない。

イスラエル国防軍は現地住民と継続的な対話を行っている。 軍は境界線を明確にするため、移動可能な地域と立ち入り禁止区域を示す標識を設置し、さらにシリアの村に検問所を配置して、住民の移動を管理している。 対話は予備役の民間連絡将校が担当しており、彼らが住民との調整を行う役割を担っている。兵士たちは住民と直接接触することはほとんどない。

我々が訪問したヤルムーク川と三ヵ国の国境地帯には、スンナ派住民やパレスチナ人住民が多く暮らしている。 この地域におけるイスラエル国防軍の現在の課題は、ハマースや新たなスンナ派パレスチナ系テロ組織の拠点化への懸念である。現時点ではその兆候は顕著ではないが、先週には、イスラエル国防軍はこの地域にあるハマースの武器庫を爆撃した。

一部の村には武装した地元警察部隊が存在し、イスラエル国防軍と非公式かつ静かな連携を行っている。 例えば、クナイトラ県地域では、地元警察の検問所が設置されており、その近くにはイスラエル国防軍の検問所もある。 軍は地域から武器を排除する活動を進めている。ある村では、地元の村長が「武器を引き渡すので、村でレバノンで行ったようなことはしないでほしい」と述べ、軍に武器の回収を依頼したという。

興味深い調整はヨルダン側との協力である。現在、ヨルダン側の国境沿いシリア領内でもイスラエル国防軍と接触するようになっている。 ヨルダンとの協力は当然ながらはるかに円滑で、完全な連携が取られている。ヨルダン側にとっても、対岸に見慣れた勢力がいることは一定の安心感を与えるものと推測される。 実際には、イスラエルとヨルダンの国境線がさらに5〜6キロメートル延長されたようなかたちとなっている。

シリアからの安全保障上の脅威は依然として未知数で、イスラエル国防軍は現地での動向を引き続き注視している。 そのため、2025年を通じて、イスラエル国防軍は同地域に大規模な部隊を維持する計画を立てている。現在、現地には3個旅団が配備されているが、10月7日以前は1個大隊のほぼ半分の兵力しか展開していなかった。 現時点では、シリア安全保障地帯の維持がいつ終了するかは未定であり、新たな通知があるまで継続される予定である。

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