自由シリア軍参謀委員会がベイルート郊外で発生した自爆テロを非難し実行グループと自由シリア軍の無関係を主張、民主統一党のムスリム共同党首が訪問先のイスタンブールでトルコ高官らや反体制勢力の幹部らと会談(2013年8月16日)

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反体制勢力の動き

自由シリア軍参謀委員会のルワイユ・ミクダード政治広報調整官はAFP(8月16日付)に、ベイルート郊外ダーヒヤでの15日に自爆テロに関して「民間人を標的としたこの犯罪行為を非難する…。彼ら(イスラーム教徒の母アーイシャ中隊)は、自由シリア軍やシリア革命に属するとは言っていなかった」と述べ、関与を否定した。

そのうえで「犯罪者(アサド大統領)とともにシリア国民の殺戮に参加している者にこの犯罪の責任がある」と述べ、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長のアサド政権支持がテロの原因だと非難した。

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自由シリア軍国内合同司令部のファフド・ミスリー中央広報担当官はAKI(8月16日付)に「現時点での(移行期)政府樹立は、シリアとシリア国民に対する歴史的犯罪になる…。我々は移行期におけるいかなる政府の樹立をも断固拒否する…。我々は真の愛国的革命勢力に、半ば解放された地域で執行委員会を設置することを要求する。この委員会は独立性を持ち、現地に存在し、いかなる党派的・宗派的・個人的なアジェンダ・ヘゲモニーにも従属しないことが条件だ」と述べた。

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AKI(8月16日付)は、シリアのビジネスマン・ジャーナリストの情報として、イタリア人宣教師パウロ・ダルリオ氏(ダイル・マール・ムーサー修道院修道長)が存命だと報じた。

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民主統一党のサリーム・ムスリム共同党首は訪問先のトルコのイスタンブールでトルコ高官と会談した。

複数の消息筋によると、ムスリム共同党首は、トルコ側の人道支援が「商人の手に渡り、ブラック・マーケットで出回っている」ことに対処するよう求めたが、トルコ側はトルコ赤新月社に対応を求める旨回答したという。

またムスリム共同党首はシリアの反体制勢力の幹部らとも会談し、平和的な紛争解決の可能性について協議したが、結論は得られなかったという。

ムスリム共同党首はこの会談で、シリア革命反体制勢力国民連立が国内の武装集団への制御を失ったとしたうえで、「西クルディスタンで戦っている集団は自分たちに属していないと言うが、同時にこれらの勢力をかくまい、依存している。こうした集団があなたたちに属していないのに、なぜかくまうのか?」と非難したという。

シリア政府の動き

クッルナー・シュラカー(8月16日付)は弁護士組合筋の話として、ニザール・スカイフ組合総裁が、アリー・マムルーク国民安全保障会議議長の要請を受け、2ヶ月間職務を行っていないという理由で、反体制活動に与する弁護士12人を除名したと報じた。

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クッルナー・シュラカー(8月16日付)は、シリア・クルド人民主国民連合がダマスカス県のダーマールーズ・ホテルで記者会見を開き、組織の原則・目標を発表したと報じた。

2013年初めにハサカ県カーミシュリー市でバアス党関係者参加のもとに結成されたとされる同組織は、シャームの民のヌスラ戦線などサラフィー主義武装集団によるクルド人地域への「テロ」を非難する一方、欧米諸国、地域各国の内政干渉を拒否した。

一方、他のクルド民族主義組織との関係に関しては、「クルド世論を独占せず、いかなる組織、党にとってかわるものではない」と述べた。

国内の暴力

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国とシャームの民のヌスラ戦線が、ラアス・アイン市を重火器、迫撃砲などで砲撃し、民主統一党人民防衛隊と交戦した。

またユースフィーヤ村、カルフーク村でも16日深夜に、イラク・シャーム・イスラーム国とシャームの民のヌスラ戦線が民主統一党人民防衛隊と交戦した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ウワイナ村、イーラージャーグ村、ドゥーカルマーン村、ジャカル村、カナーヤ村、ヤラーン村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国とシャームの民のヌスラ戦線と交戦した。

また同監視団によると、アレッポ市サーフール地区、ズィルバ村で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(8月16日付)によると、クワイリス村、ハーン・アサル村、アターリブ市、ナイラブ村、ズィルバ村で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、ブスターン・カスル地区、ラーシディーン地区、マルアブ・バラディー地区で、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

シリアの複数のサイトによると、アレッポ法医学局のアブドゥッタウワーブ・シャフルール局長がアレッポ市アクラミーヤ地区の自宅前で武装集団に誘拐された。

『ハヤート』(8月20日付)によると、シャフルール氏は、ハーン・アサル村での化学兵器使用の調査を主導した人物。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、スーサク村をイラク・シャーム・イスラーム国が砲撃し、民主統一党人民防衛隊と交戦した。

また、同監視団によると、反体制武装集団が第17師団基地の集合施設を迫撃砲で攻撃した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、バイト・シュクーヒー村で軍と反体制武装集団が交戦、また反体制勢力がクルド山、トルクメン山(ラビーア町一帯)を軍がヘリコプターで空爆した。

一方、SANA(8月16日付)によると、バイト・シュクーヒー村、アブー・マッカ村および同村郊外の丘陵地帯で、軍が反体制武装集団の掃討を完了、同地の治安を回復した。

またキンサッバー地方で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザイル市のジュバイラ地区、ハウィーカ地区、マヤーディーン市が軍の砲撃を受け、ジュナイナ村で反体制武装集団の戦闘員1人を含む2人が死亡した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区で狙撃され負傷した反体制武装集団の司令官がシャーグール区で死亡した。

またジャウバル区、カーブーン区で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(8月16日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またバーブ・シャルキー地区、ドゥワイラア地区、マイダーン地区に、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、子供4人を含む市民6人が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、フジャイラ村、ザバダーニー市で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、クッルナー・シュラカー(8月16日付)によると、ダーライヤー市地元評議会の広報局長のシャーヒル・マアダマーニー氏が、迫撃砲による攻撃で負傷、死亡した。

他方、SANA(8月16日付)によると、アドラー市、アルバイン市、リーハーン農場、ドゥーマー市、ハラスター市、ブハリーヤ農場、ダイル・サルマーン農場、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町、タッル市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人大隊の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市の航空基地の集合施設を反体制武装集団が攻撃する一方、軍はタッラフ村を砲撃した。

一方、SANA(8月16日付)によると、カフルヌブーダ町などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タファス市、ナワー市で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(8月16日付)によると、ダルアー市、タファス市、アトマーン村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、アンサール・スンナ大隊戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アウラム・ジャウズ市一帯、ラーム・ハムダーン村、カフルズィーター市、マアッラト・ヌウマーン市を軍が砲撃し、子供1人を含む複数が死傷した。

一方、SANA(8月16日付)によると、アイン・ガザール村、マラーニー村、カニーヤ村、ジャーヌーディーヤ町、タッル・サラムー市、バラーギースィー市、タッル・ダマーン村、ハルウィーヤ市、マアッラトミスリーン市、マアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村、ビンニシュ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ガントゥー市に軍が砲撃を加え、子供1人が死亡した。

一方、SANA(8月16日付)によると、クサイル市郊外で、レバノンから潜入した反体制武装集団を軍が撃退した。

またヒムス市クスール地区、カラービース地区、ブスターン・ディーワーン地区、バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区、キースィーン村、カルアト・ヒスン市、ダール・カビーラ村、タルビーサ市、ラスタン市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、マナール・チャンネル(8月16日付)で、レバノン紛争戦勝記念演説を行った。

演説において、ナスルッラー書記長は「必要なら、私はタクフィール主義者との戦いに自ら出向くだろう。ヒズブッラーと私は、ダマスカスの政権を倒そうとする反乱分子と戦うためにシリアに行くだろう」と述べた。

また「我々は、シリア国民とこの国の大義、すなわちパレスチナのために戦うだろう…。我々が戦いの命運を決する。イスラエルとのすべての戦争に勝利したように、我々はテロとタクフィール主義者の戦いに勝利するだろう」と強調した。

15日のベイルート郊外ダーヒヤでの自爆テロに関しては、「おそらく、タクフィール主義集団が昨日の爆発の背後におり、疑う余地なく、彼らの一部はイスラエルのために活動している」との見方を示した。

また「現在確かなのは、彼ら(自爆テロの実行犯)が外国の支援を受けたタクフィール主義者だということだ」と付言した。

そのうえで、「殺人者どもよ、我々はたとえ国家が突き止められなくても、お前たちを突き止める…。我々は、国防や治安において国家にとって代わるものではない。しかし国家が責任を果たさなければ、我々がそれを行う…。もしシリアに介入したという理由でヒズブッラーを罰するというのなら、私は、タクフィール主義者がシリア国民をもっともあしざまにしていると言いたい。彼らはモスクを破壊し、子供たちを殺している。これに対し、我々は特定の地域に入っているだけで、民間人を殺さないようにしてきた…。我々は虐殺を犯していない。タクフィール主義者と戦ってきただけだ」と述べた。

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北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区で、武装集団どうしが衝突、発砲した。

NNA(8月16日付)が報じた。

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自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官は、『ハヤート』(8月17日付)に「我々はレバノン領外への干渉に反対しており、この問題(シリアの紛争への関与)に関して、我々とヒズブッラーの間に何の相互理解もない…。レジスタンスのシリアへの関与はヒズブッラーとシリア人の間の相互理解の一部をなしているのみだ」と述べた。

諸外国の動き

イラクのホシェル・ゼバリ外務大臣は訪問先のワシントンDCでの講演で、イランからシリアへの空路での武器供与について「減少したと言える。しかし供与は停止してはいない…。我々は他国に義務を果たせることができなかったとして、イラクをスケープゴートとみなしたりはしたくない。我々は自らの義務を果たしているし、さらにそうすると考えている」と述べた。

AFP(8月16日付)が報じた。

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国連難民高等弁務官事務所の報道官はジュネーブで、アレッポ市やシリア北東部の貧困地域からイラク(クルディスタン地域)への避難民が急増、1日だけで約7,750人がティグリス川を越えて流入していると発表した。

避難民急増の理由は不明だという。

また、エジプトのシリア人避難民に関して、「事態を注視している」と述べ、混乱拡大に懸念を表明した。

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『ハヤート』(8月17日付)などは、国連の複数の高官の話として、化学兵器使用に関する国連調査団が18日にシリアの首都ダマスカスに入ると報じた。

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GCCのアブドゥッラティーフ・ビン・ラシード・ザナーニー事務局長は声明を出し、15日のベイルート郊外ダーヒヤでの自爆テロを非難した。

AFP, August 16, 2013、AKI, August 16, 2013、al-Hayat, August 17, 2013, August 18, 2013, August 20, 2013、Kull-na Shuraka’, August
16, 2013、Kurdonline, August 16, 2013、al-Manar Channel, August 16, 2013、Naharnet,
August 16, 2013, August 17, 2013、NNA, August 16, 2013、Reuters, August 16,
2013、SANA, August 16, 2013、UPI, August 16, 2013などをもとに作成。

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