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国内の暴力
ヒムス県では、シリア人権監視団が「ヒズブッラーと共和国護衛隊の特殊部隊からなる増援部隊が、クサイル市に派遣され…、広範な作戦を準備している」と発表した。
またクサイル市北部、西部を中心に軍が激しい空爆を行った。
同監視団によると、クサイル市の戦闘で、反体制武装集団側について戦っていたレバノン人戦闘員6人が死亡した。
このほか、ヒムス市アクラマ地区に対して軍が砲撃を加えた。
一方、SANA(5月29日付)によると、軍がクサイル市郊外のダブア航空基地、ドゥワイル村、ムハージリーン村で反体制武装集団を殲滅し、制圧、治安を回復した。
またカフルラーハー市、タッルドゥー市、アルジューン市、東ブワイダ市、タドムル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス県では、シリア革命総合委員会によると、ジャウバル区、カーブーン区に軍が砲撃を加えた。
一方、SANA(5月29日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会によると、バイト・サフム市、バービッラー市、シャブアー町、ハラスター市、カーラ市などに対して軍が砲撃を加え、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(5月29日付)によると、軍が、スィーディー・ミクダード地方、バイト・スィヒム地方で反体制武装集団を殲滅、両地域の約60平方キロにわたる一帯を完全制圧し、治安を回復した。
この掃討作戦で、軍はシャバーブ・フダー大隊の戦闘員多数を殲滅した。
またハラスター市、リーマー市、ラアス・アイン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、イズラア市、ヌアイマ村、シャジャラ町、タファス市、タッル・シハーブ町、ムザイリーブ町などに軍が砲撃を加えた。
一方、SANA(5月29日付)によると、タスィール町、フラーク市、ブスラー・シャーム市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市に軍が砲撃を加えた。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市カルム・ジャバル地区、バニー・ザイド地区、マーイル町などに、軍が砲撃を加えた。
一方、SANA(5月29日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、マンナグ航空基地周辺、ジュバイラ村、アルカミーヤ村、アレッポ市サーリヒーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラタキア県では、SANA(5月29日付)によると、リヤーナ村、リーハーニーヤ村で、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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イドリブ県では、SANA(5月29日付)によると、ナイラブ村、ハマーマ市、タイイバート村、カニーヤ村、ズアイニーヤ市、ミシュミシャーン市、ガッサーニーヤ村、シャンナーン市、マジュダリヤー村、カフルラーター市、クマイナース村、サルジャ村、ビンニシュ市、マアッラトミスリーン市、サラーキブ市、ジダール・ブカフルーン市、ダイル・ラガブ市、アブー・ズフール航空基地周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、SANA(5月29日付)によると、ハサカ県ナースィラ地区で、は体制武装集団が爆弾を仕掛けた車が爆発し、市民2人が負傷した。
シリア政府の動き(その他の国内の動き)
Dam Post(5月29日付)は、シリア政府に近い消息筋の話として、シリア政府がロシアとの間で、クサイル市制圧と治安回復が完了するまで、ジュネーブ2会議の開催を引き延ばすとの確約を確認し合ったと報じた。
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ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、マヤーディーン・チャンネル(5月29日付)に対して、シリア革命反体制勢力国民連立が「シリアに対して陰謀を企てる諸外国の道具だが、彼らだけが反体制勢力ではない。独自の決定を下すことができる愛国的な反体制勢力がシリアにはいる」と述べ、ジュネーブ2会議に「善意」をもって「前提条件なしに」参加することを改めて確認した。
またアサド大統領の進退に関して、「シリア国民以外に大統領の進退に触れる権限がある者はいない。誰がシリアを統治するかに、アメリカなどは関係ない。我々がそれを許してしまえば、世界の国々は、自らの国の元首の正統性を疑われることになろう」と述べた。
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AFP(5月29日付)は、シリアの石油生産量が20,000バレル/日に低下したと報じた。
2011年3月の380,000バレル/日から95ポイントの低下。
またガス生産量も、3,000万平方リットルから1,500万平方リットルに減少している。
反体制勢力の動き
民主的変革諸勢力国民調整委員会はフェイスブック(5月29日付)を通じて、「民間人を狙った暴力のエスカレートと、シリアでの戦闘への地域の組織・勢力の直接の関与」がジュネーブ2会議の開催を阻害しかねないと批判した。
この声明に関して、クッルナー・シュラカー(5月29日付)は、クサイル市住民の話として、民主的変革諸勢力国民調整委員会が声明のなかで、クサイル市での戦闘にヒズブッラーが参加していることを明記に躊躇したと報じた。
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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、ヒムス県クサイル市での戦闘に関して、「クサイル市が政府の手に落ちれば、反体制勢力にとって大打撃になる。なぜなら、彼らが武器供与に利用してきたレバノン国境が閉ざされるからだ」と述べた。
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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ジュネーブ2会議への参加に関して、イランの部隊とヒズブッラー戦闘員の攻撃の停止と撤退を国際社会が断行させる必要があるとの姿勢を明示した。
ハーリド・サーリフ広報局長が読み上げたこの声明において、連立はまた、アサド政権による暴力停止、革命勢力によるシリア国民の防衛も、ジュネーブ2会議への参加の条件として示した。
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自由シリア軍合同司令部中央広報局は声明を出し、クサイル市およびその周辺の戦況に関して、過去48時間、ヒズブッラーの戦闘員40人以上を殺害、70人以上を負傷させたと発表した。
またクサイル市での反体制武装集団への支持表明が書かれたプラカードを子供に掲げさせ、その写真を公開した。
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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン元事務局長は、イスタンブールでの会合でのシリア革命反体制勢力国民連立の新規メンバー加入問題をめぐる決定に関して、「連立に対する恥辱であり、革命に対する犯罪である」と厳しく非難した。
クッルナー・シュラカー(5月29日付)が報じた。
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『シラーウ』(5月29日付)は、アラブ外交筋の話として、ジュネーブ2会議に出席するは反体制勢力の代表団は20人から構成される見込みだと報じた。
20人の内訳は、シリア革命反体制勢力国民連立の代表が7人、民主的変革諸勢力国民調整委員会の代表が5人、それ以外の組織の代表が8人になるという。
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クッルナー・シュラカー(5月29日付)は、バラダーの鷹大隊を名のる反体制武装集団司令官の話として、ヒズブッラーの支援物資(燃料)を積んだ車列をザバダーニー市で攻撃、破壊したと報じた。
レバノンの動き
ミシェル・スライマーン大統領はムスタクバル・チャンネル(5月29日付)のインタビューで、「ヒズブッラーは、シリアでなく、レバノンのレジスタンスだ。すべてのレバノン人に支援されており、閣議声明でも支持されている。ナスルッラー書記長にはこのことを遵守して欲しい…。軍、国民、レジスタンスのバランスを維持するため、ヒズブッラーはシリアの戦争に関与しないべきだ。レジスタンスは国家の保護下に戻るべきだ」と述べた。
諸外国の動き
イランの首都テヘランで、欧米諸国、サウジアラビア、カタール、トルコが主導する「シリアの友連絡グループ」に対抗するかたちで、「シリアの友大会」が開催され、包括的国民対話をシリアの危機解決の唯一の方法であることを確認、またあらゆる外国の干渉の拒否、ジュネーブ2会議開催に向けた国際社会の努力への指示を確認する声明を発表した。
声明ではまた、シリア領に対する攻撃と国民に対する殺戮行為を拒否するとともに、対シリア経済制裁の解除、避難民の帰還の必要が強調された。
大会には、アラブ・イスラーム地域、アフリカ、ラテンアメリカ、欧州各国の閣僚・高官ら44人の代表が出席した。
主な参加国は、ロシア、中国、イラク、アルジェリア、そして開催国のイラン。
なお大会後の記者会見で、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、ジョン・マケイン米上院議員のシリアへの密入国に関して「不法行為」と厳しく批判した。
SANA(5月29日付)が報じた。
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国連人権理事会は、アサド政権とヒズブッラーなどの戦闘員による人権侵害を非難する声明を採択した。
声明は、カタール、トルコ、米国などが提案、47カ国中36カ国が賛成票を投じた。反対票を投じたのはヴェネズエラ1国のみだったが、8カ国が棄権した。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、アサド政権による人権侵害を一方的に批判する国連人権理事会での決議採択に関して、「一方的な決議で、嫌悪感を生じる」としたうえで、「この有害なイニシアチブを米国代表は強引に推し進めている」と厳しく非難した。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、下院外交委員会で、「紛争に参加しているヒズブッラーの戦闘員に関して、その数は3,000から10,000人に及ぶとされるが、我々の推計によると3,000から4,000人だ」と証言した。
またファビウス外務大臣は「重武装し、死ぬ準備ができた戦闘員が数千人もいれば、事態は大きく異なる…。アサド政権側に増援があり、変化が生じている…。イラン、ヒズブッラーが全面関与し、ロシアが武器供与を続けている」と付言した。
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米国務省のジェン・プサキ報道官は、ヒズブッラーの戦闘員のシリアでの戦闘参加に関して「これは受け入れられない、非常に危険な事態の激化を招く。我々はヒズブッラーに戦闘員をシリアからただちに撤退させるよう要求する」と述べた。
AFP, May 29, 2013、Dam Post, May 29, 2013、al-Hayat, May 30, 2013、Kull-na Shuraka’, May 29, 2013、Kurdonline, May 29, 2013、al-Mayadeen,
May 29, 2013、Naharnet, May 29, 2013、Reuters, May 29, 2013、SANA, May 29,
2013、al-Shiraʻ, May 29, 2013、UPI, May 29, 2013などをもとに作成。
写真はKull-na Shuraka’, May 29, 2013、SANA, May 29, 2013。
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