ラアス・アイン市でクルド最高委員会とキール―氏含む「市民平和革命保護国民委員会」が会合を開き、民主統一党と自由シリア軍の間の戦闘を停止させる手段について協議(2013年2月5日)

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国内の動き(シリア政府の動き)

『ワタン』(2月5日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことに関して、「ハティーブの発言には欠けているものがあり、国民に最低限受け入れられる対話、協議をもたらすには不充分だ」と報じた。

また「この声明はヌスラ戦線を擁護した過ち…を正そうとする政治的計略と評価し得る…。政治的には重要な発言だが、2年近く、機を逸したものである」と付言した。

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クッルナー・シュラカー(2月5日付)は、複数の消息筋の話として、ラーミー・マフルーフがベラルーシでのシリアテルの支店開設の認可を得た、と報じた。

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クッルナー・シュラカー(2月5日付)は、アサド政権と民主的変革諸勢力国民調整委員会の間で、次期内閣において後者が6閣僚に配分されるとの秘密合意がなされている、と報じた(未確認情報)。

6閣僚とは、教育大臣ないしは高等教育大臣、環境大臣、経済大臣、農業大臣、国務大臣の5閣僚と、もう1閣僚はハイサム・マンナーアに与えられるポストだが任所は未定だという。

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Syria News(2月6日付)は、シリア・ポンドの米ドルに対する買為替レートが1ドル=80.20ポンドに、売為替レートが80.50ポンドに改訂された、と報じた。

これまではそれぞれ79.27、79.99ポンドだった。

なお闇レートは、平均で92.75、93.50ポンド程度で推移しているという。

反体制勢力の動き(在外)

シリア国民評議会執行部は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との交渉の意思を示したことを「革命の目的と義務に反している」と断じたうえで、「連立の制度のもとで諮られておらず、また協議もされていない個人的決定で…連立の結成合意に矛盾している」と拒否した。

またイランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣との会談については、「イランが現体制を支持する限り、シリア国民評議会が拒否している措置」と非難した。

そのうえで、こうした独断行動が反対勢力の亀裂を助長すると警鐘を鳴らした。

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シリア革命総合委員会メンバーでヒムス県の活動家だというハーディー・アブドゥッラーは、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことに関して、「残念ながら、体制による破壊と殺戮の…時間を与えた…アラブ諸国や国連のこれまでのイニシアチブ以下」と非難した。

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シリア革命反体制勢力国民連立メンバーでシリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長は、イラク・クルディスタン地域政府のマスウード・バールザーニー大統領に対して謝意を示した。

スィーダー事務局長は、バールザーニー大統領が、かつてシリア革命への支持を表明したこと、クルド人どうしの対立を解消すべくクルド最高委員会の設立を支援したこと、シリアへの人道支援を支援していることに謝意を示した。

反体制勢力の動き(国内)

ドゥーマー市で反体制活動をしているというアブー・ナディームなる活動家はフェイスブック(2月5日付)で、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことに関して、「親愛なるダウトオールよ、我々がアサドの占領を終わらせるために交渉するのが気に入らないなら、兵站を送るか、黙ってろ」と綴り、支持を表明した。

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クッルナー・シュラカー(2月5日付)は、シリア報道と表現の自由センターのマーズィン・ダルウィーシュ代表、フサイン・ガリール、ハーニー・ズィーターニーが釈放されたと報じた。

また収監中のアブドゥッラフマーン・ハマーダ、マンスール・ウマリーの2人も近く釈放される、という。

5人は2012年2月にダマスカスで空軍情報部に人のメンバーとともに逮捕されていた。うち8人は5月に釈放されていた。

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ユーチューブ(2月5日付)で、反体制武装勢力(ファトフ旅団メンバー)が軍に協力したとの理由で市民4人を処刑するビデオがアップされた。

シリア人権監視団によると、このビデオは2012年1月にアレッポで撮影されたものだという。

クルド民族主義勢力の動き

クルディーヤ・ニュース(2月5日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市でクルド最高委員会と「市民平和革命保護国民委員会」が会合を開き、民主統一党保護部隊と自由シリア軍の間の戦闘停止の方途をめぐって協議した。

「市民平和革命保護国民委員会」はシリア民主フォーラムのミシェル・キールー代表、アブドゥルバーリー・ウスマーン、タミーム・ザーヒド、ヤースィル・イヤードからなり、両者の停戦を実現するために5日にトルコからシリアに入国した。

一方、クルド最高委員会側からは、イルハーム・アフマド、アブドゥッサラーム・アフマド、イスマーイール・ハムユ、アフマド・スライマーン、アールダール・ハリールが協議に参加した。

民主統一党によると、この会合で、クルド最高委員会は、自由シリア軍との対話開始を提案するとともに、委員会によるラアス・アイン市の自治、すべての武装勢力の撤退、被災者への物資提供の自由の保障などを提案した。

なお民主統一党人民防衛隊と自由シリア軍の戦闘は1月30日以降小康状態にある、という。

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シリア・クルド国民評議会は、ハサカ県ダイリーク市(マーリキーヤ市)郊外のスィーマールカーとティグリス川対岸のイラク(イラク・クルディスタン地域政府実効支配地域)のフィーシュハーブールの間の国境通行所を開設し、通商関係強化を図ると発表した。

数日中に、ティグリス川に軍事用橋梁を架けるという。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サビール地区のマルハブ兵舎周辺で軍と反体制武装勢力が激しく交戦し、多数の死者が出た。

また軍は、ハナースィル市を制圧し、サフィール市およびアレッポ市南西部に向かって進軍した。この進軍は、反体制武装勢力によるワーハ市とサフィーラ市の科学研究センターの包囲を解除することが目的だという。

なおハナースィル市制圧では、子供6人を含む市民9人が死亡したという。

一方、SANA(2月5日付)によると、タッル・ハースィル村・タッルアラン市間の交差点、ハナースィル市、サフィーラ市、カフルナーハー村、マーイル町、ジャブール市などで、軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を実施し、複数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。

またアレッポ市では、シャッアール地区、バニー・ザイド地区、マサーキン・ハナーヌー地区、シャイフ・サイード地区などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。

他方、アレッポ市ではアフマド・ハムザ人民議会議員の兄弟のハーリド・ハムザが反体制武装勢力に拉致され、殺害された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルナーズ町が軍の空爆・砲撃を受けた。

一方、SANA(2月5日付)によると、ムガイル村で軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殲滅、拠点・装備を破壊、同村を制圧した。

またハルファーヤー市での戦闘で、軍はファールーク大隊の複数の戦闘員を殲滅した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市、ダーライヤー市などが軍の空爆・砲撃を受けた。

一方、SANA(2月5日付)によると、ダーライヤー市、ザバダーニー市、タッル・クルディー町、ドゥーマー市郊外、ハラスター市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、武器・拠点を破壊した。

またハーン・シャイフ(パレスチナ難民キャンプ)地方の住宅地で、反体制武装勢力が車に仕掛けようとしていた爆弾が誤爆し、戦闘員2人が死亡した。

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ヒムス県では、SANA(2月5日付)によると、ガントゥー市、ヒムス市ジャウバル区、スィブガ地区、タルビーサ市、タッルドゥー市などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

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イドリブ県では、SANA(2月5日付)によると、アブー・ズフール航空基地の襲撃を試みた反体制武装勢力を軍が要撃し、戦闘員を殲滅、装備を破壊した。

またジスル・シュグール市郊外のヤアクービーヤ村、シャグル村、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺などで、軍が反体制武装勢力と交戦、複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(2月5日付)によると、ダイル・ザウル市内各所、サーリヒーヤ市、ヒサーン村、アザーウィー村で、軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殲滅した。

諸外国の動き

『ハヤート』(2月6日付)は、フランスのジェラール・オロ国連代表大使がアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表が「シリアの危機解決の鍵を米国とロシアが握っていると考える過ちを犯した」と述べた、と報じた。

オロ国連代表大使はまた「米国とロシアが明日合意したとしても、シリアを救済することなどできない…。なぜなら現地で戦っている者がシリアの運命を決めるからだ」と付言した。

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ヴィクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことに関して、「シリア政府が和平に少しでも関心があるなら、今席につき、連立と話をしなければならない。そうすれば我々はハティーブの呼びかけを強く支援するだろう」と述べた。

しかし「ハティーブは…アサド政権に安住の地がなければならないと考えているとは思わない」と付言した。

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イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は、マヤーディーン(2月5日付)に対して、「戦争は解決策ではない…。戦争をもって支配する政府にとって、その執政はきわめて難しい。同じ方法で権力に付く集団にとっても、執政はきわめて困難だ…。シリアで宗派戦争が行うべきでない」と述べ、「国民どうしの愛国的相互理解を実現」を呼びかけた。

一方、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆については「弱さゆえの行動」と非難した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことに関して、「このような対話の開催を促すのに必要なあらゆる支援を行う」と歓迎の意を示した。

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は中国を訪問し、北京の外交部で翟雋外交副部長と会談した。

SANA(2月5日付)によると、会談で、ミクダード副大臣は危機解決政治プログラムについて説明、支持を求めた。

これに対して、翟外交副部長は、中国が2012年6月のジュネーブ合意、国際法、国連憲章に基づき、シリアの危機への外国の干渉を認めないとの姿勢を改めて示した。

AFP, February 5, 2013、Akhbar al-Sharq, February 5, 2013、Facebook, February 5, 2013、al-Hayat, February 6, 2013、Kull-na Shuraka’, February 5, 2013、al-Kurdiya News,
February 5, 2013、al-Mayadin, February 5, 2013、Naharnet, February 5, 2013、Reuters,
February 5, 2013、SANA, February 5, 2013、Syria News, February 6, 2013、Youtube,
February 5, 2013、al-Watan, February 5, 2013などをもとに作成。

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