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国内の動き(シリア政府の動き)
『イクティサーディー』(2月4日付)は、財務省が128人の資産を「テロ活動に関与した」容疑で凍結した、と報じた。
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カルディア教会アレッポ副司教区のアントワーン・オードー司祭はAFP(2月5日付)に対して、アレッポ市内のキリスト教徒の惨状を訴える一方、「西欧は(シリアの)キリスト教徒に何ら関心を払っていない。誰も我々に耳を傾けていないかのようだ。彼らにとって我々が生きようが死のうが関係ないのだ。西欧にとっての最優先は経済力と消費社会だけなのだ」と批判した。
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ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣はシリア・アラブ・テレビ(2月4日付)のインタビューに応じ、そのなかでイスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆について「成果を出さない反体制武装集団を我々が追撃していることへの報復として空爆した」との見方を示した。
フライジュ国防大臣によると、イスラエル軍戦闘機が破壊したダマスカス郊外県ジャムラーヤーの軍科学研究センターは、反体制武装勢力がたびたび制圧を試み襲撃していた、という。
国内の暴力
ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市北部に展開する第17師団司令部の北東部で軍と反体制武装勢力が激しく交戦した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マイダーン地区で車に仕掛けられた爆弾が爆発し、車を運転していた男性1人が負傷した。
またカーブーン区で軍が砲撃を行い、子供1人を含む3人が死亡した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カフルバトナー町、ハラスター市、ザマルカー町、ドゥーマー市、ハジャル・アスワド市などが空爆・砲撃を受けた。
一方、SANA(2月4日付)によると、タッル・クルディー町、ドゥーマー市郊外、ハラスター市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町、ダーライヤー市、アドラー市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、SANA(2月4日付)によると、カフルナーヤー市、フライビル村、ハナースィル市、クシャイシュ市、ICARDA周辺などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
またアレッポ市のカーディー・アスカル地区、ブスターン・カスル地区、カッラーサ地区、シャイフ・サイード地区などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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イドリブ県では、SANA(2月4日付)によると、アブーズフール航空基地を熱ミサイルで攻撃しようとしていた反体制武装勢力を軍が攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。
またナイラブ村、シャビーバ軍事基地周辺などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。
一方、自由シリア軍自由大隊の副司令官を名乗るナキブ・ハサンなる活動家は、AFP(2月4日付)に対して、反体制武装勢力がジスル・シュグール市を包囲し、同市攻略を進めているが「3~4のアラウィー派の村が同市への我々の突入を阻んでいる」と述べた。
ジスル・シュグール市郊外の農村住民によると、これらの村から攻撃があった場合、軍が村を破壊すると警告しているため、反体制武装勢力は同市への進軍ができないという。
AFP(2月4日付)によると、ジスル・シュグール市、イドリブ市はイドリブ県において反体制武装勢力の手に落ちていない二大都市で、ジスル・シュグール市周辺にシャームの民のヌスラ戦線はいないが、シリア人サラフィー主義者からなるシャーム自由人大隊が展開しているという。
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ダイル・ザウル県では、SANA(2月4日付)によると、ダイル・ザウル市内各所で軍が反体制武装勢力と交戦し、ファルカーン旅団、カーディスィーヤ大隊メンバーを含む複数の戦闘員を殺傷した。
またジャズラ市でも軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、SANA(2月4日付)によると、ダルアー市、ハルバ・カイス村、タスィール町、ワーディー・ヤルムーク市、サフム・ジャウラーン村、シャイフ・マスキーン市、イズラア市、ヒルバト・ガザーラ町、タイバ町などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、SANA(2月4日付)によると、タッルカラフ地方に潜入しようとした反体制武装勢力を国境警備隊が撃退し、多数の戦闘員を殺傷した。
またラスタン市郊外、カフル・アーヤー村、ヒムス市ジャウバル区、スルターニーヤ地区で軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ロシア外務省は、声明を出し、シリアの「過激派」が2月3日にロシア人2人とイタリア人1人を釈放したと報じた。
この3人は2012年12月12日にヒムス県ハスヤー市一帯の街道で拉致され、釈放にあたってシリア当局が反体制武装勢力の戦闘員複数名を釈放した。
これに関して、SANA(2月4日付)は、シリア当局が外国人質3人の「解放作戦」を実行したと報じた。
同報道によると、釈放されたロシア人の1人はアレッポ県の鉄鋼所で働く技師、もう1人は通訳だという。
反体制勢力の動き
シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、アラビーヤ(2月4日付)のインタビューに応え、そのなかでファールーク・シャルア副大統領と政権退陣を前提に対話を行う用意があると述べた。
インタビューのなかで、ハティーブ議長は「重要なのは、体制が退陣のための対話という原則を受け入れることだ…。個人的には、体制がこれを受け入れれば、我々が扉を閉ざすことはあってはならないと考えている」と述べた。
ハティーブ議長は外国の圧力を受けて、政権との条件付きでの対話に応じる意思を示したのではないと断じたうえで、政権内の具体的交渉相手を誰にするかについて「例えば、副大統領だ。彼は危機開始当初から、事態が正しい方向に向かっていないと考えていた」と述べた。
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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長はジャズィーラ(2月4日付)を通じて、アサド大統領に危機解決のための対話に対する「明確な姿勢」を示すよう呼びかけた。
ハティーブ議長は「体制は明確な姿勢をとらねばならない。我々は国益のために手を差し伸べている。我々が平和的に退陣するよう支援しようとしている。現下の体制におけるイニシアチブとは是非を述べることだ」と続けた。
また「事態を解決したいと思うなら、体制は参加してもよい…。真剣で誠実であれば放り出されることはなく、反体制勢力によって歓迎されるだろう」と述べた。
さらに「体制がこの危機から国民を脱出させたいなら、我々はみな、人命喪失や破壊を最小限に食い止めるかたちで国益と政権退陣のために助け合うだろう」と付言した。
そのうえで「私は体制に、国民へ傲慢で上から目線の考え方を止めよと、言いたい。バッシャール博士よ、この国は深刻な危機に曝されていると私はお前に言いたい。少しでもいいから蛮行を止めよ。眠る前にお前の子供の目を見れば、少しは人間性が戻るはずだ。解決策が分かるだろう」と述べた。
一方、ミュンヘンでのロシア外相、米副大統領との会談の内容に関して、「すべての反体制勢力の間で合意されていることがある。我々はさらなる流血と破壊を望んでいない。それゆえ危機解決のため政治的イニシアチブをとっている…。このイニシアチブによって体制は去らねばならない…。これが会談の基軸をなしていた」と述べた。
また「アメリカ人、ロシア人、イラン人、欧州人のなかに解決策をイメージできるものなどいない。シリア国民のみが解決策を決する。それゆえ我々は、シリアの体制指導部に、さらなる破壊が生じるまえに出口を探させよ、と言いたい」と強調した。
さらに「国民にさらなる流血を避けたいという明確なメッセージを伝えたいなら、私が要求した通り、まずは逮捕者を釈放することから始めよ…。私は冗談を言っているのではない。政治的ジョークではない…。一度でもいいから真剣に対処するよう体制に求めているのだ」と付言した。
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民主的変革諸勢力国民調整委員会のムンズィル・ハッダーム広報局長はフェイスブック(2月4日付)で声明を出し、そのなかでシリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長がアサド政権との条件付きでの対話を行う意思を示したことに関して「歓迎の意」を示した。
声明でハッダーム局長は「ハティーブ議長の発言は、国民調整委員会をはじめとする民主的勢力、人民大衆から歓迎されている」と述べた。
そのうえで「国民調整委員会、連立、シリア民主フォーラム、シリア国民救済大会参加組織、ジュネーブでのシリア反体制勢力大会参加組織をはじめとする様々な反体制勢力が連絡を強化し、交渉の基礎と原則に関して合意形成するための会合を開く」ことを呼びかけた。
レバノンの動き
進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、党機関紙『アンバー』(2月4日付)で、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権との対話に応じる意思を示したことを「大胆な決断」と支持した。
諸外国の動き
クルディーヤ・ニュース(2月4日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市で戦闘を続ける民主統一党人民防衛隊と自由シリア軍・サラフィー主義者の調停を行うため、トルコから入国しようとしているミシェル・キールー(シリア民主フォーラム代表)ら「市民平和革命保護国民委員会」をトルコ当局が妨害している、と報じた。
同報道によると、「市民平和革命保護国民委員会」は対シリア国境の国境通行所で3時間待たされた末、翌日の訪問を伝えられたという。
国境通行所のシリア両側では、クルド最高委員会の使節団が4時間にわたって「市民平和革命保護国民委員会」の入国を待っていたという。
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『ハヤート』(2月5日付)は、2月6日にカイロで予定されているイスラーム諸国会議機構(OIC)首脳会談の準備会合で、閉幕声明のシリア情勢に関する文言の内容をめぐって、イランを含む各国が、サウジアラビア、トルコと対立していると報じた。
同報道によると、イランを含む各国は、アサド政権による弾圧を一方的に批判するのでなく、すべての当事者に暴力停止を呼びかけることを主張したのに対し、トルコとサウジアラビアはアサド政権を非難することに固執したという。
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イランのサイード・ジャリーリー国家安全保障最高会議書記長は滞在先のダマスカスで記者団に対して、「シオニスト政体は、33日戦争、22日戦争、8日戦争(レバノン紛争、2008年と2012年のガザ侵攻)のときと同じようにシリアに対して最近行った空爆を後悔するだろう」と述べた。
またジャリーリー書記は「シリアの国民と政府はこの問題を深刻に捉えており、イスラーム世界はシリアを支援する…。アサド大統領はシオニスト政体との戦闘においてイスラーム世界の最前線に位置している」と付言した。
一方、シリア国内の混乱については、「当初から、我々はすべての当事者に対話のテーブルにつき、国民対話を実現させるよう求めてきた…。アサド大統領のイニシアチブはこの対話の基礎となるだろう」と述べた。
また「善意を示した者(シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長)は、これまでに自分たちが依拠してきた誤った方法から目を背けねばならない。解決策は国民の権威のもとに結実せねばならず、国民が自らの運命を決めねばならない」と付言した。
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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は訪問先のベルリンで、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長との会談について触れ、「対話を継続することで合意した」と述べた。
また「シリア軍は強大で、充分な能力を持っている。外国からの戦闘員など必要ない…。我々は(アサド政権に)経済支援を行っている。ガソリンや小麦を送っている。またイラク経由で電力を供給しようとしたが、この試みはいまだ成功していない」と述べた。
AFP, February 4, 2013、Akhbar al-Sharq, February 4, 2013、Alarabia.net, February 4, 2013、Aljazeera.net, February 4, 2013、DP-News, February 5, 2013、Facebook, February 4, 2013、al-Hayat, February 5, 2013、al-Iqtisadi, February 4, 2013、Kull-na Shuraka’, February 4, 2013、al-Kurdiya News, February 4, 2013、Naharnet, February 4, 2013、Reuters, February 4, 2013、SANA, February 4, 2013などをもとに作成。
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