2013年1月20日のシリア情勢

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市、ダーライヤー市などに対して、軍が空爆を行い、5人が死亡した。

またハッラーン・アワーミード市近郊のバーリカ村に対する軍の空爆で、女性1人、子供3人を含む1家5人が死亡したという。

『ワタン』(1月20日付)は、政府に近い消息筋の話として、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市周辺の反体制武装勢力が、軍の攻撃によって、拠点の多くを破壊され、甚大な被害を受け、フェイスブック上で活動する調整を通じて、支援物資、医療支援を呼びかけている、と報じた。

そのうえで「軍はアジトに残っているテロリストを殲滅するための特殊地上作戦を行うだろう」と付言した。

一方、SANA(1月20日付)によると、ムライハ市、ダーライヤー市で軍が反体制武装勢力と交戦、ハムザ・ブン・アブドゥルムトリブ大隊軍事評議会、使徒末裔大隊のメンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またドゥーマー市郊外、ハラスター市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、アクラバー村でも軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウバル区、スルターニーヤ地区に軍が砲撃を加え、反体制武装勢力と交戦した。

一方、SANA(1月20日付)によると、タルビーサ市、ハウラ地方、サブガ市、東ブワイダ市、カフル・アーヤー村などで軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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アレッポ県では、複数の活動家によると、シャームの民のヌスラ戦線の指導のもとに反体制武装集団がアレッポ国際空港とナイラブ航空基地の防衛を任務とする第80旅団第599防空大隊の基地に突入した。

突入した反体制武装勢力は、大量の武器弾薬を奪い、撤退したという。

一方、SANA(1月20日付)によると、アレッポ市アンサーリー地区などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

またバーブ市、クワイリス市、マーリア市、アッサーン村、タームーラ村、ドゥワイリーナ地方東部、シャイフ・ナッジャール市などで、軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダルアー県では、SANA(1月20日付)によると、ブスラー・シャーム市の砦を襲撃しようとした反体制武装勢力に軍が応戦し、戦闘員を殲滅した。

またバスラー・ハリール市などで軍が反体制武装勢力と交戦、殲滅した。

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イドリブ県では、SANA(1月20日付)によると、ビンニシュ市、サンバル市、クーリーン市、アリーハー市、イフスィム村、ダイル・サンバル村などで軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またワーディー・ダイフ軍事基地周辺でも軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

国内の動き(シリア政府の動き)

危機解決に向けたプログラムに関する内閣の決定を実施するための閣僚委員会(作業チーム)が、最高救援委員会メンバーと合同会合を開き、最高救援委員会が、シリア赤新月社、赤十字国際委員会、各県の関係当局などとの連携・調整のもと、国外避難民の帰国、家族訪問の促進、各県の被災者への支援拡充などを行うことを確認した。

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ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、シリア・アラブ・テレビ(1月20日付放映)のインタビューで、アサド大統領の1月6日の演説が「曖昧だった移行期へのシリアによる解釈」だとしたうえで、「とりわけ調整、そして若い世代」をはじめとする反体制武装勢力に対話を呼びかけた。

シリア政府の交換が「調整」に対して直接対話を呼びかけるのはこれが初めて。

ムアッリム外務在外居住者大臣はまた、アサド大統領の危機解決に向けたプログラムが「外国からのイニシアチブへの道を閉ざす」ものだと評価した。

そのうえで「彼ら(欧米諸国、湾岸アラブ諸国、トルコなど)は、船が揺らいだ時に船長が最初に逃げることはないという事実を無視している」と述べ、「アサド大統領の退任という意味での政治体制の変換を前提とする」欧米諸国などの取り組みは成功しないだろう強調し、これらの国が、大統領の進退について言及することは許されないとの立場を示した。

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AFP(1月20日付)は、UAE在住の複数のシリア人の話として、アサド大統領の母アニーサ・マフルーフが10日ほど前からドバイに滞在していると報じた。

アニーサ・マフルーフは、数ヶ月前から同国に滞在する大統領の姉のブシュラー・アサド一家の住居の近くに居を構え、滞在している、という。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会はフェイスブック(1月20日付)を通じて声明を発表し、トルコ政府が「シリア領内にテロを輸入」していると批判した。

声明において同委員会は、トルコから潜入する反体制武装勢力が「個人ないしは集団で孤立した市民や、シリア政府がもはや代表していない国民の財産である国家機関への攻撃を行っている」と指弾した。

また「大多数の(ラアス・アイン)市民は、避難を強いられ、住居や財産を放棄し、それらをこうした大隊が略奪している。そしてこれにより、民主連合党人民防衛部隊は、地域住民を護るため、攻撃への応戦を余儀なくされている」と指摘した。

そのうえで「革命に侵入した不純物であり、外国、とりわけトルコのアジェンダを代表しているこうした集団を厳しく非難する。これらの国は、主権を明らかに違反するかたちで、こうした集団に武器を供与し、外国人戦闘員、兵站、装甲車を国境を越えて潜入させており…、シリア国民、自由と尊厳のための革命に奉仕していない」と付言した。

さらにトルコ政府に対してあらゆるかたちで圧力をかけ、こうしたテロ支援を停止させるよう国際社会に呼びかけた。

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シリア国家建設潮流は声明を出し、ハサカ県ラアス・アイン市での民主連合党人民防衛部隊と自由シリア軍の戦闘に関して、反体制武装勢力の「目的が体制と対決することでなく、住民が望もうが望むまいが、支配できるならどこでも支配しようとしていることを示すものである」と批判した。

また「ラアス・アイン市には現在住民はいなくなってしまっている…。これらの大隊の目的には多くの疑義が呈されている。彼らは常にトルコ領から…入ってきているが、その一方でトルコ当局はラアス・アイン市の避難民の入国を阻止していることを知っている」と付言した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のムンズィル・マーフース(在パリ代表)は、ムアッリム外務在外居住者大臣のテレビでの発言に関して、「反体制勢力国民連立は、ムアッリム外務在外居住者大臣や体制とともに組閣を行うことはない。なぜなら、国民を殺害し、政治的解決に繋がるあらゆるものを拒否する体制と検討することなどないからだ…。(アサド大統領の)演説は政治解決検討の可能性を根絶した」と述べ、アサド政権との対話を拒否した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のルワイル・サーフィーは「我々はこれらの人々を信用していない。彼らは政治をもてあそんでいるだけだ」と述べ、アサド政権との対話を拒否した。

諸外国の動き

イラクのホシェル・ゼバリ外務大臣は『ハヤート』(1月21日付)に対して、「バグダードが得た最新の情報によると、政府軍は一部のメディアが報じている以上に、ダマスカス県・ダマスカス郊外県を制圧している。また政府はダイル・ザウル、ダルアー、アレッポも明らかに制圧しているようだ。アサド政権が国連の決定やアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表の提案を承認しないことを、こうした状況が正当化している」と述べた。

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『ル・モンド』(1月20日付)は、西側諜報筋の話として、シリア軍が2012年12月に殺傷力のない化学兵器を反体制勢力に対して使用した、と報じた。

しかし、フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、この報道に関して、「我々は当該機関に調査を要請し、我々だけでなく他の国も調査した。しかし彼らは、これらの武器(化学兵器)が使用されていないと解答した」と否定した。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、Euro 1(1月20日付)に対して、1月28日に予定されているシリア革命反体制勢力国民連立の大会に参加する意思を示す一方、シャームの民のヌスラ戦線に関して、「少数派」と述べ、シリアの反体制勢力における影響力を否定した。

一方、シリアの現体制については、「事態はおぞましく、アサドは早急にされねばならない」と述べた。

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イランのアリー・アクバル・ヴェラヤティー元外務大臣は、マヤーディーン(1月20日付)に対して、「アサド大統領が退任させられれば、イスラエルに対するレジスタンスの隊列が壊されるだろう」と述べ、シリアの体制転換がイランにとっての「レッド・ライン」だと立場を表明した。

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国連人権問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング運用部長がシリアを訪問し、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣と会談した。

AFP(1月20日付)によると、グング運用部長の訪問は「シリアの危機と必要とされる人道支援の規模を直接評価すること」が目的だという。

AFP, January 20, 2013、Akhbār al-Sharq, January 20, 2013、al-Ḥayāt, January 21, 2013、Kull-nā Shurakā’, January 20, 2013、al-Kurdīya News,
January 20, 2013、al-Mayādīn, January 20, 2012、Le Monde, January 20, 2012、Naharnet, January 20, 2013、Reuters, January 20, 2013、SANA,
January 20, 2013、al-Waṭan, January 20, 2012などをもとに作成。

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