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国内の動き
人民議会は、イスラエルによるガザ空爆を非難し、国際社会にイスラエルのジェノサイドを停止させるため圧力をかけるよう求める決議を採択、発表した。
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シリアのウムラーン・ズウビー情報大臣はイランのアーラム・チャンネル(11月17日付)に出演し、フランスによるシリア革命反体制勢力国民連立の「シリア国民の正統な代表としての承認」を、「新たな政治的価値を何ら付与しない」と指摘、トルコやカタールによるテロ支援を無視したフランス政府の再三にわたる関与を厳しく非難した。
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ダマスカス県の国連ビル前で、ダマスカス大学の学生数百人がデモを行い、イスラエルによるガザ空爆に抗議した。SANA(11月17日付)が報じた。
国内の暴力
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区に迫撃砲が着弾し、パレスチナ人を含む4人が死亡した。
迫撃砲着弾に先立って、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦、パレスチナ人戦闘員が軍・治安部隊とともに戦っていた、という。
またダマスカス県に至る主要な街道で、軍・治安当局が道路封鎖を行うなどして厳戒態勢を強化した。
一方、SANA(11月17日付)によると、マッザ区のジャラー・スポーツ・シティ近くで爆弾が仕掛けられた車が爆発した。死傷者はなかった。
またバーブ・シャルキー地区の農業省の駐車場に反体制武装勢力が発射した迫撃砲が着弾し、駐車中のガス輸送トラックが大破した。死傷者はなかった。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザバダーニー市およびその周辺で軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する逮捕摘発活動を行い、迫撃砲などで攻撃した。
またブワイダ市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
一方、SANA(11月17日付)によると、フジャイラ村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、「ゴラン自由人大隊」を名乗る集団の戦闘員、外国人戦闘員多数を殺傷した。
またジャルマーナー市では、反体制武装勢力が住宅地を攻撃し、市民6人が死亡、12人が負傷した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表が、ブーカマール市郊外のハムダーン農業用空港を反体制武装勢力が制圧したと発表した。
アブドゥッラフマーン代表によると、この制圧により、ダイル・ザウル県北東部から南部にかけての領域を反体制武装勢力が掌握、また16日に制圧が完了したというブーカマール市の維持にも資する戦果だという。
活動家のズィヤード・アミールによると、これに対して軍はハムダーン農業用空港を空爆し、反体制武装勢力は多数の戦車を失った、という。また軍が残された兵士の救出作戦を試み、戦闘が激化した、という。
『ハヤート』(11月18日付)によると、ハムダーン農業空港は、軍がヘリコプターの発着場、戦車部隊の拠点として転用していた、という。
これに対して、SANA(11月17日付)は、ダイル・ザウル市南部の墓地で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員を殲滅した、と報じた。
このほか、ダイル・ザウル市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力の戦闘員1人が死亡した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ライラムーン地区の反体制武装勢力が軍・治安部隊の拠点を襲撃、これに対して軍は空爆で応戦した。
またアレッポ市ハムダーニーヤ地区でも大きな爆発があったという。
一方、SANA(11月17日付)によると、ハンダラート・キャンプ、ダーラ・イッザ市、カフルアンマ市、アレッポ市マルジャ地区、ライラムーン地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の拠点を攻撃、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市に対して、軍が空爆を続けた。
一方、SANA(11月17日付)によると、イドリブ市近郊、ハーリム市、マアッラ・ニウマーン市、ムハムバル村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、SANA(11月17日付)によると、ヒムス市ワルシャ地区、ハウラ地方周辺、クサイル市郊外、ラスタン市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。
反体制武装勢力の動き
シリア国民評議会内の会派「シリア革命評議会」のハイサム・マーリフ代表は『ハヤート』(11月18日付)の取材に応じ、国際社会に対して「シリア革命反体制勢力国民連立への武器、資金、人道支援の供与を通じた支援」を求めた。
またアラブ連盟が連立をシリア国民の唯一の正統な代表として承認することを期待すると述べた。
暫定政府構想に関しては、「我々は暫定政府発足のための対話を行うためのイニシアチブを示してきただけで、私がその首班になる必要はない」と述べた。
マーリフは2012年7月のカイロでの反体制武装勢力の会合で、シリア革命評議会を結成、暫定政府首班への就任を宣言している。
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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長はサウジアラビアを訪問し、首都リヤドでサウード・ファイサル外務大臣と会談した。
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アラビーヤ(11月17日付)は、ダイル・ザウル県の裁判長でバアス党ダイル・ザウル支部指導部メンバーのアリー・アウンが離反を宣言した、と報じた。
諸外国の動き
中国外交部の洪磊報道官は、シリアの反体制勢力への武器供与を推し進めようとするフランスのローラン・ファビウス外務大臣の発言(15日)に関して、国際社会によるいかなる措置もシリアの暴力停止と危機の平和的解決をめざすものでなければならないと述べ、疑義を呈した。
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シリア革命反体制勢力国民連立の使節団がフランスを訪問し、フランソワ・オランド大統領らと会談した。
使節団はアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長、ムンズィル・マーフースらからなり、オランド大統領のほか、ローラン・ファビウス外務大臣、エリク・シュヴァリエ駐シリア・フランス大使らと会談した。
会談後の共同記者会見で、オランド大統領は「連立議長は、次期内閣にはシリアのすべての構成要素、とりわけキリスト教徒とアラウィー派が参加すると明言した」と述べ、宗派主義的なポスト配分によるシリアの分断を奨励した。
また「連立議長によって任命された駐フランス・シリア大使が駐在することになるだろう」と述べ、ムンズィル・マーフースをシリア大使として受け入れる意向を示した。
オランド大統領によると、シリアの新大使は、フランスが指定するパリ市内の場所に駐在することになる、という。
反体制武装勢力への武器供与については、「武装強化の必要」があるとしつつ、「国際社会は、これらの武器を監視する必要があると考えており、この問題をめぐる最善の決定を行うべくEUで議論がなされるだろう」と述べた。
また「フランスは連立との密接な連絡のもと、解放地域への人道支援を継続するだろう」と付言した。
一方、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、シリア社会のすべての構成要素からなる「テクノクラート内閣」を発足する意思があることを明らかにした。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は訪問先のエジプト、カイロ大学で講演し、「正統性のないバッシャール・アサド体制は敗北する定めにある…。国際社会、とりわけ安保理は、シリア各地での虐殺に沈黙を続けられるのか」と述べた。
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ドイツ日刊紙『スドゥッツェ・ツァイトゥング』(Suddeutsche Zeitung、11月17日付)は、ドイツ国防省筋の話として、トルコがNATOに対して要請を行えば、ドイツは兵士170人とパトリオット・ミサイルをトルコ南東部の対シリア国境地域に派遣する用意があると述べた。同報道によると、トルコ側からこうした要請は未だないという。
AFP, November 17, 2012、Akhbar al-Sharq, November 17, 2012、Alarabia.net, November 17, 2012、al-Hayat, November 18, 2012、Kull-na Shuraka’, November 17, 2012、al-Kurdiya News,
November 17, 2012、Naharnet, November 17, 2012、Reuters, November 17, 2012、SANA,
November 17, 2012などをもとに作成。
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