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シリア政府の動き
シリアの外務在外居住者省は、国連安保理議長と事務総長に書簡を送付、そのなかでアレッポ市での同時爆破テロの被害およびアル=カーイダの一派であるシャームの民のヌスラ戦線の犯行だったことを報告、国際社会に対してシリア国内でのテロ撲滅のための非難、必要な措置を求めた。
SANA(10月4日付)が報じた。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がクドスィーヤー市への2度目の特殊作戦を実施したが、共和国護衛隊メンバー21人が殺害された。
監視団のラーミー・アブドゥッラー代表は「発砲、マイクロバスを標的とする爆発、そして交戦によって共和国護衛隊メンバーの死者数は21人に上った」と発表した。
だが、目撃者・医師などの話として「クドスィーヤー市の共和国護衛隊の団地に複数の救急車が派遣されており、犠牲者数は上る可能性がある」と付言した。
犠牲者のほとんどは爆発による犠牲者で、「おそらく武装集団は、団地近くに小型爆弾を仕掛けたようだ」と述べ、テロの可能性を示唆した。
またザーキヤ町では、軍・治安部隊の砲撃で市民5人が死亡、また反体制武装勢力との交戦で兵士4人が死亡した、という。
さらに、サクバー市でも軍・治安部隊の砲撃で市民5人が死亡した、という。
アブドゥッラフマーン代表はAFP(10月4日付)に対して、軍・治安部隊はダマスカス郊外県での反体制武装勢力との戦闘に決着をつけるべく、3日から大規模作戦を行い、各地で砲撃を行っているが、いまだ成功していないという。
一方、SANA(10月4日付)によると、クドスィーヤー市、ザーキヤ町などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を交戦・追撃し、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市旧市街、マイダーン、アーミリーヤ、スィルヤーン、サイフ・ダウラ、サーフール、アルクーブといった地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、反体制武装勢力の戦闘員6人が死亡した。
一方、サラーフッディーン地区での戦闘では、軍・治安部隊兵士6人が殺害された。
これに対して、SANA(10月4日付)は、アレッポ市スライマーン・ハラビー地区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力の残党を掃討、「浄化」を完了したと報じた。
またアレッポ市ブスターン・バーシャー地区、ハナーヌー地区、ナズラ・ファイイド地区などで、反体制武装勢力の拠点を攻撃、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した、という。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市、ハウラ地方、ラスタン市、カルアト・ヒスン市が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
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ダイル・ザウル県では、SANA(10月4日付)によると、ダイル・ザウル市、ダイル・ザウル市・マヤーディーン市街道、ムーハサン市、マリーイーヤ村で軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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ダルアー県では、SANA(10月4日付)によると、ダルアー市内の避難民キャンプ、ダム街道地区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力を掃討、「浄化」を完了した。
またタッル・シハーブ町では、軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトを攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ハマー県では、SANA(10月4日付)によると、ハマー市、バーブ・ターカ村で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。
トルコをめぐる動き
AFP(10月4日付)は、トルコ治安筋の話として、3日夜に行われたトルコ軍のタッル・アブヤド市への攻撃は、4日早朝に再開された、と報じた。
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国連安保理はプレス向け声明(SC/10783)を採択し、シリア軍によるトルコ・アクチャカレへの砲撃を「もっとも強い調子」で非難した。
声明全文の内容は以下の通り:
The members of the Security Council condemned in the strongest terms the shelling by the Syrian armed forces of the Turkish town of Akcakale, which resulted in the deaths of five civilians, all of whom were women and children, as well as a number of injuries. The members of the Security Council expressed their sincere condolences to the families of the victims and to the Government and people of Turkey.
The members of the Security Council underscored that this incident highlighted the grave impact the crisis in Syria has on the security of its neighbours and on regional peace and stability. The members of the Council demanded that such violations of international law stop immediately and are not repeated. The members of the Security Council called on the Syrian Government to fully respect the sovereignty and territorial integrity of its neighbours.
The members of the Security Council called for restraint.
諸外国の動き
欧州評議会議員会議(ストラスブール)は、シリアでの「目にあまる継続的、体系的な人権侵害」を「人道に対する罪」として非難する決議を賛成多数で可決した。
この決議は「近隣諸国への避難民流失への国際社会の沈黙」に遺憾の意を表すとともに、政府と反体制勢力の双方に暴力停止を求めた。
しかし、アレッポ市での連続爆破テロに代表されるサラフィー主義者の外国人戦闘員の暴力については言及しなかった。
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一方、欧州評議会のソービョーン・ジャグランド(Thorbjørn Jagland)事務局長は、シリアからとトルコへの越境攻撃による犠牲者の発生に「大いなる懸念」を表明した。
しかしアレッポ市での連続爆破テロに代表されるサラフィー主義者の外国人戦闘員の暴力とその犠牲者については言及しなかった。
AFP, October 4, 2012、Akhbar al-Sharq, October 4, 2012、al-Hayat, October 5, 2012、Kull-na Shurakaʼ, October 4, 2012、al-Kurdiya News, October 4, 2012、Naharnet.com, October 4, 2012、Reuters, October 4, 2012、SANA, October 4, 2012などをもとに作成。
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