ロシアの仲介により西クルディスタン移行期民政局とシリア政府はハサカ市での停戦の合意、民政局は同市の90%を掌握(2016年8月23日)

ハサカ県では、『ハヤート』(8月24日付)によると、ラタキア県のフマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍司令部で、ロシア軍高官の仲介のもと、ハサカ市で武力衝突してきた西クルディスタン移行期民政局とシリア政府が停戦に合意した。

複数のクルド人反体制活動家によると、停戦合意は以下4点を骨子とするという:

1. 23日午前2時に西クルディスタン移行期民政局アサーイシュ・人民防衛隊と国防隊・シリア軍双方が戦闘を停止する。
2. 国防隊が制圧・解放したすべての地域をアサーイシュに引き渡し、アサーイシュがこれを管理する。
3. シリア軍部隊はハサカ市から退去する。
4. ハサカ県警察(シリア政府当局)が市内の公共機関が立ち並ぶ治安厳戒地区を管理し、同地区内におけるいかなる武装勢力の存在も許さない。

ハサカ市内での戦闘をめぐっては、西クルディスタン移行期民政局側が「ジャズィーラ地区」(ハサカ県内の同民政局の支配地域)における国防隊の解体を要求してきたが、停戦合意には盛り込まれていない。

またシリア政府側も、ハサカ市内を衝突前の状態に現状回復することを主張してきたが、これも認められなかった。

西クルディスタン移行期民政局側の交渉団に参加したスィーハーヌーク・ディーブー氏(人民防衛隊幹部)はAFP(8月23日付)に対して、停戦合意は午前3時に発効したとしつつ、「現時点では合意に達したのは、戦闘停止だけで、その持続は、提案されているそのほかの交渉条件の進捗次第」だと述べた。

なお、16日から続いていた西クルディスタン移行期民政局アサーイシュ・人民防衛隊と国防隊・シリア軍の戦闘の結果、前者はハサカ市の約90%を支配下に収めることに成功した。

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一方、SANA(8月23日付)は、「クルディスタン労働者党の武装部門アサーイシュ」(西クルディスタン移行期民政局のアサーイシュと人民防衛隊)と「シリア政府当局」(国防隊とシリア軍)が停戦に合意したことを受け、ハサカ市内での戦闘が徐々に終息し、日常生活が回復しつつある、と伝えた。

同報道によると、アサーイシュは23日にも停戦に違反し、市中心街の中央市場(スーク・ハール)の西側に隣接するアスカリー地区で治安部隊隊員を狙撃、1人を殺害したが、こうしたなかでも市内では多くの商店が通常通りの営業を行ったという。

西クルディスタン移行期民政局とシリア政府当局は21日、ハサカ市内での戦闘を終息させることで原則合意し、その後アサーイシュ側による違反によって発効が遅れているが、最終的な調整作業が進行中で、23日午前9時から、①双方による捕虜、犠牲者の遺体、負傷者の引き渡し②ハサカ市とカーミシュリー市を結ぶ街道、ハサカ市内外のシリア軍拠点にいたる道路、そして市内の道路の再開、③クルド問題解決に向けた作業および支援の継続、④政府機関を解雇された職員の処遇についての協議、が開始されたという。

AFP, August 23, 2016、AP, August 23, 2016、ARA News, August 23, 2016、Champress, August 23, 2016、al-Hayat, August 24, 2016、Iraqi News, August 23, 2016、Kull-na Shuraka’, August 23, 2016、al-Mada Press, August 23, 2016、Naharnet, August 23, 2016、NNA, August 23, 2016、Reuters, August 23, 2016、SANA, August 23, 2016、UPI, August 23, 2016などをもとに作成。

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