アムネスティ・インターナショナル中東・北アフリカ地域部長のフィリップ・ルーサー氏は、アサド大統領が9日のヤフー・ニュースとのインタビューでサイドナーヤー刑務所での虐待に関するアムネスティ・インターナショナルの報告書に関して、「バッシャール・アサドに隠し立てするものがないなら、サイドナーヤー刑務所やその他のシリア国内の拘置所への監視団の訪問を直ちに認めばならない」と反論した。
ルーサー氏はまた「アサド大統領はアムネスティ・インターナショナルの報告の信憑性に疑義を呈したが、彼はサイドナーヤー刑務所を訪れたわけでもなければ、そこでの実情についてのいかなる情報も開示していない」と付言した。
インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:
**
「私はメディアを通じて(ドナルド・トランプ大統領に)メッセージは伝えない。メッセージを伝えるのなら、さまざまなチャンネル、おそらく外交チャンネルを通じて行うだろう。しかし、我々のメッセージはいかなるものであれ公式なメッセージだ。シリアで起きていることに関して、我々には一つの立場しかない…。それはテロとの戦いを行っているというものだ」。
「選挙運動中から現在にいたるまでのトランプ大統領の姿勢は、テロとの戦いを最優先事項にするというものだ。我々はこの最優先事項に同意する」。
「テロリスト、テロとの戦い(において、米国と協力する意思があるということ)だ。これは自明だ…。ロシア、イランを含むさまざまな国とテロとの戦いで協力することが最優先事項だ」。
「米国が真剣にテロリストを打ち負かしたいと考えているなら、シリア政府を通すべきだ…。どの国であっても、その国の国民や政府と協力しなければテロを打ち負かすことなどできない…。米国が真剣なのなら、他の国(ロシアなど)と同じように、(米国のシリアへの派兵は)もちろん歓迎される」。
「派兵は協力の一貫だ…。だが、真剣でなく、テロだけでなく、シリアの主権、統合についての明確な政治姿勢を持たないのなら、派兵について云々することはできない。なぜなら、こうした要素が信頼を醸成するからだ」。
「(米ロの「テロとの戦い」における協力は)本質的だ。世界中のどんな紛争のどんな協力も、ロシアと米国の和解が必要だ」。
「(トランプ大統領が設置をめざす「安全地帯」は、危険にさらされている市民を守ることはないだろう。シリア人にとって「安全地帯」とは、安定と安全が確保され、テロリストがいなくなり、近隣諸国や西側諸国によるテロリストへの支援がなくなったときに生じるものだ。それは自然な安全地帯として生じるもので、我々の国がそれにあたる。シリア人は「安全地帯」など必要としていない。「安全地帯」を作り出すことより安定を実現することの方がよっぽど実現性が高く、プラクティカルで、低コストだ。「安全地帯」はまったく現実的でない」。
「彼ら(難民)は二つの理由で避難を余儀なくされた。第1に、テロリストの活動と外交の支援。第2に、シリアへの制裁だ…。シリア難民の問題は西側、そしてトルコ、カタール、サウジアラビアといった地域諸国がテロリストを支援したことによって作り出された人道災害だ」。
「私が危機当初から行ってきた政策は、シリア人どうしの対話を支援し、テロリストと戦い、和解を支援するというものだ。そしてこれらは成功している。それゆえ、難民問題に大統領の責任はない」。
「シリアなど7カ国からの入国を禁じた米大統領令は、米国の問題で、米国の主権に関わっている。どの国にも入国を規制する権利はある…。だが、もし大統領として、その賛否を訊かれれば、私の責任は、シリア人が外国で難民になることを認めるようその国の大統領に求めることではない。私の責任、彼らがシリアに帰国できるようにするための安定を回復することだ…。だからこの大統領令が正しいとか間違っているとか議論しない」。
「一部の難民はテロリストと明らかに関係している…。例えば、シリアで機関銃を持って人々を殺していたテロリストが、欧州や西側で難民となって写真に写っていることがある」。
「多くの難民が…治安面での問題や制裁にもかかわらずシリアに帰国している。シリア人の大多数は帰国したいと考えているだろう」。
「アレッポ(解放)はテロとの戦いにおける重要な一歩だ…。だが、それが転換点だとは言わない。なぜなら、我々は今も同じ道を同じ方向に進んでいるからだ…。おそらくテロリストたちにとって転換点だったのではないだろうか。彼らの主人である西側や地域諸国にとって転換点だったのではないだろうか」。
「人権に関して、米国がシリアと関係を構築することにどのような問題があるというのか。では逆に訊きましょう。サウジアラビアと米国の親密な関係はどのようにして実現したのか…。私は米国、そして米国内の刑務所で人権侵害があったとするレポートについて訊きたい…。米国は人権について云々する立場にはない。ヴェトナム戦争から今にいたるまで、何百万人という市民を殺戮しているからだ」。
「アムネスティ・インターナショナルの(サイドナーヤー刑務所での虐待に関する)レポートは、この組織に対する疑問を提起している。我々はアムネスティ・インターナショナルが偏っていないなどと見ていない。常に偏っていて、政治化している。そうした組織が何の証拠もなくレポートを出すこと自体恥ずべきことだ」。
「処刑はシリアの法律の一部だ。もしシリア政府、ないしはシリアの帰還が処刑を執行したいというのであれば、合法的に行し、過去数十年にわたりそのようにして処刑は行われてきた」。
「我々がダーイシュ(イスラーム国)を作り出したのではなく、あなた方、米国がこうした面倒を作り出したのだ。「穏健な反体制派」がシリア国内でダーイシュやシャームの民のヌスラ戦線になるなかで、彼らや反乱者を誰が支援してきたのか。我々は支援しなかった。それは陰謀ではなく、事実、現実だ。あなた方の国、英国、フランスは、反体制派を支援し、彼らに公然と武器を供与してきた」。
「我々はアレッポ市で病院を空爆などしなかった…。そうすうことは我々の利益に反するからだ…。つまりそうした主張はウソだ…。彼らは、我々が「樽爆弾」なる爆弾を無差別に使用していると言った翌日には、我々が病院、学校、車列を狙って攻撃しているという」。
「すべての戦争は悪い戦争だ…。すべての戦争には犠牲がつきもので、すべての戦争において無実の人々が代償を払わされる…。だから、戦争を終わらせねばならない。だが、犠牲者が出ることは国を守らなくていいということを意味しない…。我々はもちろん、民間人を犠牲にすることを回避しなければならない。なぜなら、彼らは国民であるだけでなく、そうすることが道徳に関わる問題だからだ…。もし、我々が民間人を意図的に殺しているのであれば、それはテロリストを手助けすることになる」。
「拷問は防衛ではない。なぜ拷問しなければならないのか。拷問と国防に何の関係があるというのか」。
AFP, February 11, 2017、AP, February 11, 2017、ARA News, February 11, 2017、Champress, February 11, 2017、al-Hayat, February 12, 2017、Iraqi News, February 11, 2017、Kull-na Shuraka’, February 11, 2017、al-Mada Press, February 11, 2017、Naharnet, February 11, 2017、NNA, February 11, 2017、Reuters, February 11, 2017、SANA, February 11, 2017、UPI, February 11, 2017などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.