2012年5月20日のシリア情勢

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、ドゥーマー市に隣接するリーハーン農場地区に軍・治安部隊が砲撃した。

またドゥーマー市では、UNSMISの車輌の数メートル脇にRPG弾が着弾した。複数の目撃者によると、UNSMISの車は軍検問所に駐車中に砲撃を受けた。死傷者はなかった。

同市は軍・治安部隊の離反兵掃討作戦によってゴースト・タウンと化しているが、『ハヤート』(5月21日付)は、「UNSMISの監視団がされば、武装集団が戻り、問題を起こすだろう」との軍兵士の言葉を伝えた。

なお、シリア人権監視団によると、UNSMISが去った後、ドゥーマー市内での軍・治安部隊による治安維持活動で市民1人が殺害され、数十人が負傷した、という。

一方、SANA(5月20日付)によると、シャイフーニーヤ村で武装テロ集団が軍に発砲、大尉1人と兵士2人が死亡した。

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ダマスカス県では、地元調整諸委員会(ムラード・シャーミー)などによると、カフルスーサ区、アッバースィーイーン広場、バグダード通り、サウラ通りの検問所などで反体制武装集団と治安部隊が交戦、軍・治安部隊による厳戒態勢が強化され、シャーミー病院に続く道路などが閉鎖された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、スーラーン市に軍・治安部隊が突入し、子供3人を含む16人が死亡した。

一方、『シャルク』(5月20日付)は、武装集団がサラミーヤ市郊外でハマーディー・ウマル氏を誘拐したと報じた。同氏はファイサル・クルスーム前ダルアー県知事の兄弟。

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ダルアー県では、SANA(5月20日付)によると、ナワー市で武装テロ集団がシリア軍曹長の自宅を襲撃、同曹長と妻を殺害した。

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ヒムス県では、SANA(5月20日付)によると、ヒムス市郊外のマウジュ農場地域で軍・治安部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト多数を死傷させた。

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イドリブ県では、『クッルナー・シュラカー』(5月20日付)によると、対トルコ国境のバーブ・ハワー地方で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦した。

アサド政権の動き

ハサン・トゥルクマーニー副大統領補佐官は、シリア政府・治安機関高官多数が暗殺されたとのジャズィーラとアラビーヤの19日の報道に関して、根拠がない誤報と非難、「私も同僚も祖国に奉仕するための義務を遂行している」と述べた。

またムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣、ダーウード・ラージハ国防大臣も上記報道を否定した。

反体制勢力の動き

『ラアユ』(5月20日付)は、在米の複数のチュニジア筋の話として、シリアで逮捕されたチュニジア人戦闘員2人が、ナフダ党のラーシド・ガンヌーシー党首の仲介によりチュニジアの刑務所から釈放されていたと報じた。

また、同消息筋は、シリアで逮捕されたチュニジア人の19人がいずれもチュニジアのカタール大使館によってリクルートされたことを明らかにした。

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自由シリア軍は、『クッルナー・シュラカー』(5月20日付)に対して、同組織の士官がシリア軍第7師団からRPG弾などの武器を購入した述べ、シリア軍が崩壊寸前だと主張した。

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シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者は『ラアユ』(5月20日付)に対して、「同胞団はレバノンにいない」と述べ、バッシャール・ジャアファリー国連大使が国連に提出した書簡の内容を否定した。

またシリア・ムスリム同胞団は声明を出し、レバノンのシャイフ、アフマド・アブドゥルワーヒド師の暗殺(後述)に関して、「シリアの兄弟と連帯する途上にあったシャイフがアサドの悪党の手によって殺された」と非難、アサド政権の関与を断じた。

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地元調整諸委員会は声明を出し、5月20日のダイル・ザウル市内の軍施設に対する「爆弾テロ」に関して、厳重な警備が敷かれており近づくことさえできないとしたうえで、同事件を含む一連の「テロ」が政府の自作自演だと断じた。

第10期人民議会をめぐる動き

『クッルナー・シュラカー』(5月20日付)は、ダマスカス県の信頼できる消息筋の話として、第10期人民議会選挙の投票率は実際は12%にも満たなかったと報じた。

Kull-nā Shurakā’, May 20, 2012

Kull-nā Shurakā’, May 20, 2012

レバノンの動き

北部県アッカール郡のクハイハート村にある軍の検問所でアフマド・アブドゥルワーヒド師(スンナ派シャイフ)が射殺された。また同乗していたムハンマド・フサイン・ムルヒブ氏も死亡した。

アフマド・アブドゥルワーヒド導師はムスタクバル潮流のハーリド・ダーヒル議員がハルバ市で主催した集会に出席し、演説する途上だった。集会は暗殺事件の発生を受け中止された。

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ナハールネット(5月20日付)は、治安当局高官の話として、アブドゥルワーヒド師が乗った車が検問所での停止を行ったため、軍が発砲、射殺したと報じた。

しかしLBC(5月20日付)は、アブドゥルワーヒド師に同行者の話として、同師の車は検問所で停車すると、一部の兵士が「集会にはもう行けないだろうに」と侮辱、発砲を受けたと報じた。

さらにMTV(5月20日付)は、治安筋の話として、クハイハート村の検問所が銃撃に曝され、最初に発砲を受けたのはアブドゥルワーヒド師の車ではなかったと報じた。

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アブドゥルワーヒド師暗殺を受け、北部県各所(アッカール、ディンニーヤ、トリポリ)では住民が暗殺に抗議し、タイヤを燃やすなどして、シリア、トリポリのヌール広場、バッダーウィー、ベイルートに向かう道路を封鎖した。

また同様の抗議行動は、ベイルート南部のナーイマ(山地県シューフ郡)の高速道路、ベイルート県内のヴェルダン、ビシャーラ・フーリー、カスカース、コルニーシュ・マズラア、バアルベック県ベカーア郡東部などでも発生した。

さらにNNA(5月20日付)によると、ベイルート県内のターリク・ジュダイダにあるベイルート・アラブ大学で衝突があり、機関銃やロケット弾が使用され、6人が負傷した。

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アブドゥルワーヒド師暗殺を受け、アッカール郡のムフティーやイスラーム教法曹界は追悼のためのゼネストを呼びかけた。

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ムスタクバル潮流代表のサアド・ハリーリー前首相は、アブドゥルワーヒド師暗殺を受けて声明を出し、対シリア国境に混乱をもたらし、アサド政権に利益をもたらすような計画があることは明白だとしたうえで、アッカール郡住民に対してこうした策略に乗らないよう呼びかけた。

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ムスタクバル潮流のハーリド・ダーヒル議員は、アブドゥルワーヒド師が頭と首を撃たれて死亡したことを明らかにしたうえで、軍兵士の一部が「民兵のような行為」を行ったと非難、「シリアのバッシャール・アサド大統領を支持する者が我々を弱体化させようとしていることは明白だ…アブドゥルワーヒドを殺す命令が下されたのだ」とシリアの関与を推定した。

また「この政府はレバノン国民を代表してない」と述べ、ナジーブ・ミーカーティー内閣の対シリア政策をアサド政権寄りだと非難した。

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ナハールネット(5月20日付)によると、レバノン北部県(アッカール郡ムカイブラ村)からシリア領内(ヒムス県ムシャイルファ村)に越境しようとしたシリア人が撃たれ、1人が死亡、2人が負傷した。

複数の目撃者によると、事件が発生したレバノン北部国境地帯には5月18日からシリア軍が展開している、という。

諸外国の動き

ロシア連邦会議国際問題委員会のミハイル・マルゲロフ委員長は、RT(5月20日付)に対して、シリア情勢に関して「力ずくで体制転換などできない。シリア人が自分たちで問題を正常化しなければならない」と述べ、外国の干渉に改めて拒否の姿勢を示した。

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ロバート・ムードUNSMIS司令官、ババカル・ガイ国際連合事務総長特別顧問、エルヴェ・ラドス平和維持活動担当事務次長はダマスカスでワリード・ムアッリム外務在外居住大臣と会談し、アナン特使の停戦案の実施状況やUNSMISの展開状況などに関して協議した。

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AFP(5月20日付)は、シリアで暮らしていたパレスチナ人約480人が2011年3月以降、混乱を避け、シリアからヨルダンに避難している、とヨルダンのUNRWAが発表したと報じた。

AFP, May 20, 2012、Akhbār al-Sharq, May 20, 2012、al-Ḥayāt, May 21, 2012、Kull-nā Shurakā’, May 20, 2012、LBC, May 20, 2012、MTV, May 20, 2012、Naharnet.com, May 20, 2012、NNA, May 20, 2012、al-Raʼy, May 20, 2012、Reuters, May 20, 2012、RT, May 20, 2012、SANA, May 20, 2012、al-Sharq, May 20, 2012などをもとに作成。

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