ジュネーブ8会議第1ラウンド閉幕:シリア政府代表団はリヤド2会合の閉幕声明が撤回されなければ直接協議を行わないと主張するとともに、デミストゥラ氏を「職権の範囲を超えている」と批判(2017年12月1日)

ジュネーブ8会議に参加するためにスイスを訪問中のシリア政府代表団は、ジュネーブの国連本部でスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表と会談した。

al-Hayat, December 2, 2017

シリア政府代表団の団長を務めるバッシャール・ジャアファリー国連シリア代表は、会談後の記者団に対して、サウジアラビアの首都リヤドでの反体制派全体会合(リヤド2会合)で採択された閉幕声明に関して、「総論各論いずれにおいても拒否されるべきもので、この声明が存在し続ける限り、直接協議には入れない」と述べた。

ジャアファリー国連代表は「我々は、リヤド2会合の声明での文言が前提条件を表明するものだと見ている…。我々にとって、そして多くの分析者や観察者にとって、リヤド2会合の声明は後退を意味している…。これは挑発的な言葉を用いたことによって生じた不備だ…。それゆえ、我々は、リヤード2会合の声明が総論各論いずれにおいても拒否されるべきだと考えている。とりわけ、それは今日にいたるまでの政治的、軍事的進展を考慮していない」と述べた。

ジャアファリー国連シリア代表はまた、デミストゥラ氏との会談で、ジュネーブ3会議の第2ラウンド(2016年3月)でシリア政府代表団が提示した12項目からなる原則文書をめぐって集中的な議論が行われたことを明らかにした。

シリア政府代表団は、デミストゥラ氏に対して、この文書を交渉の原則とするとともに、反体制派代表団に同文書を提示し、その反応を知らせるよう要請してきたが、デミストゥラ氏は、その後の会合においても、この要請に応えず、「自身が用意した文書を示し、これを交渉の基礎とするよう要請した」と指摘した。

また「彼は我々が示した文書の代わりに別の文書を提示したのだ…。これは仲介者としての彼の職権の範囲を超えたものだ。我々は仲介者と交渉しているのではない。仲介者を通じて交渉を行っているのだ」と批判した。

そのうえで、「我々はシリア政府代表団は、明日去る旨正式に伝えた…。(代表団がジュネーブに戻るか否かは)シリア政府が決めることになる」と述べた。

SANA(12月1日付)が伝えた。

**

なお、『ハヤート』(3月25日付)が入手した文書案において示された12項目の骨子は以下の通り:

1. シリアの主権、独立、統一の尊重。いかなる領土も譲歩せず…シリア国民は平和的な手段を通じて、占領下のゴラン高原回復に努める。
2. 国連憲章に則ったかたちでの主権平等の原則の尊重と内政不干渉。シリア人のみが実主的方法、そして投票箱を通じて自らの未来を決し、いかなる外国の干渉、圧力も受けない。
3. 市民権、政治的多元主義、シリア国民のすべての社会的要素の参加、法治主義の原則に基づいた民主的、非宗派主義的国家。
4. シリアの歴史、多元性、宗教的価値観の強化。個人や集団の報復行為への不寛容。いかなる社会集団に対する差別の拒否とその完全なる保護
5. 女性の役割の強化と、代議、国家機関、「意思決定プロセス」に占める女性の割合を30パーセントに維持すること。
6. 国連安保理決議第2254号に準じ、非宗派的で包括的な信頼の置ける統治の仕組みの構築、新憲法の起草計画・プロセスの策定、新憲法に基づく行政府の自由で公正な国連監視下の選挙を骨子とする政治移行を実行すること。
7. 移行期統治機関は、政治移行を行うための安定的な環境を提供し、政治家に平等に機会を付与し、選挙や公的生活のなかで自身を確立できるようにする。
8. 国家機関、公共福祉機関の改革の継続。国際基準、ガヴァナンス、人権の原則に準じたかたちでの公共・民間両機関の保護。移行期統治機関による汚職撲滅に向けた政策実施と人権の原則への準拠。
9. 国連安保理が指定するテロ組織、テロリストの拒否。テロ撲滅に向けた国内での取り組みと国際協調。テロへの武器、資金、教練、温床の提供を阻止するよう国際社会に呼びかけること。
10. 移行プロセスと新憲法を支持・支援する武装集団の武装解除とメンバーの吸収を通じて、強力、統一的、愛国的な軍隊の再編にシリア人は尽力すること。この軍は法律に則り、国境、国民を外的脅威から防衛することを義務とする。国家およびその機関が軍の再編後は武器を独占すること。外国はシリア領内に介入してはならないこと。
11. 国際社会の支援のもと難民の自発的な帰国を促すこと。恣意的逮捕者の釈放。失踪者の消息調査。
12. 紛争被害については、和平実現後、支援国会議を開き、経済制裁を解除すること。

AFP, December 1, 2017、ANHA, December 1, 2017、AP, December 1, 2017、ARA News, December 1, 2017、Champress, December 1, 2017、al-Durar al-Shamiya, December 1, 2017、al-Hayat, December 2, 2017、al-Mada Press, December 1, 2017、Naharnet, December 1, 2017、NNA, December 1, 2017、Reuters, December 1, 2017、SANA, December 1, 2017、UPI, December 1, 2017などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.