シリア軍側による停戦発表にもかかわらず、ロシア軍はイドリブ県、ハマー県への爆撃を再開(2019年5月19日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンに対するシリア・ロシア軍の激しい爆撃・砲撃は20日目を迎えた。

18日のシリア軍側による停戦発表で、中断していた爆撃・砲撃は再開され、ロシア軍がイドリブ県、ハマー県への爆撃を加え、イドリブ県、ハマー県でシリア軍と反体制武装集団が交戦した

シリア人権監視団によると、これにより、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より11人(民間人10人、兵士・戦闘員1人)増えて492人となった。

うち、173人が民間人(女性39人、子供34人を含む)、312人がシリア軍兵士および反体制武装集団戦闘員。

ノールス研究センターによると、シリア軍側の犠牲者は170人(うち士官40人)にのぼり、そのほとんどが、スハイル・ハサン准将の指揮下にある民兵(いわゆる第5軍弾)、パレスチナ人民兵のクドス旅団、そしてマーヒル・アサド少将が実質司令官を務める第4師団の将兵だという。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がカフルナブル市およびその一帯を8回爆撃した。

この爆撃で、女性1人と子供1人を含む3人が死亡、市内のサイイダ・ミリヤム病院が狙われ、同病院が物的被害を受け、利用不能となった。

またシリア軍がハーン・シャイフーン市、カフルナブル市、フバイト村など県南部および西部一帯を砲撃し、女性1人と子供人を含む7人が死亡した。

ドゥラル・シャーミーヤ(5月19日付)によると、ロシア軍の爆撃により、カフルナブル市で女性と子供を含む8人が死亡、多数が負傷、ハーン・シャイフーン市で3人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がザイズーン村を2回爆撃した。

シリア軍がカストゥーン村、アンカーウィー村、マイダーン・ガザール村、ハウラター村、ザイズーン村、ジャドラーヤー村、サフン村を砲撃し、女性1人と女児1人を含む3人が死亡した。

これに対して、シャーム解放機構は、カルカート村灌木地帯のシリア軍拠点を砲撃した。

一方、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構に近いイバー・シャーミーヤ(5月19日付)によると、シャーム解放機構がカルカート村灌木地帯、マイダーン・ガザール村に進軍しようとしたシリア軍を要撃した。

これに対して、SANA(5月19日付)は、反体制武装集団がシリア軍によって制圧されたハマーミーヤート村一帯を砲撃、これに対してシリア軍が反撃したと伝えた。

シリア軍はまた、フワイズ村、カルカート村一帯で活動するシャーム解放機構の拠点を砲撃したという。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を14件(ラタキア県11件、ハマー県2件、イドリブ県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を9件(アレッポ県1件、ラタキア県3件、ハマー県5件)確認した。

AFP, May 19, 2019、ANHA, May 19, 2019、AP, May 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 19, 2019、al-Hayat, May 20, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 19, 2019、Nors for Studies, May 19, 2019、Reuters, May 19, 2019、SANA, May 19, 2019、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, May 19, 2019、SOHR, May 20, 2019、UPI, May 19, 2019などをもとに作成。

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