ロシアはイドリブ県での戦闘停止、人道支援、難民帰宅を求める安保理報道声明案を廃案に(2019年6月3日)

国連安保理非常任理事国を務めるベルギー、ドイツ、クウェートの三カ国は、イドリブ県を中心とする反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)に対するシリア・ロシア軍の攻撃と、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構によって主導される反体制派とシリア軍・親政権民兵の戦闘の激化を受けて、同地での停止、人道支援、避難民の帰宅を求める報道声明案を提出したが、ロシアが「バランスを欠く」と非難、採決を経ずに廃案となった。

ロシアの国連代表は決議案に関して「北西部(イドリブ県など)の情勢はシリアの他の地域とは別個に捉えられねばならない」としたうえで、「声明案は、イドリブ県がテロ組織であるシャーム解放機構によって支配されているという事実を完全に無視している」と非難した。

また声明案には、米主導の有志連合がダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあったダイル・ザウル県南東部のバーグーズ村などに対して違法な爆撃を続けてきたことへの言及がないと指摘、声明案を提案した三カ国が「シリア情勢に対して偏ったアプローチをしてきたこと」に遺憾の意を示した。

AFP, June 3, 2019、ANHA, June 3, 2019、AP, June 3, 2019、al-Durar al-Shamiya, June 3, 2019、al-Hayat, June 4, 2019、Reuters, June 3, 2019、SANA, June 3, 2019、SOHR, June 3, 2019、UPI, June 3, 2019などをもとに作成。

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