米国防総省監察総監室「米軍がシリアから部分撤退したことで、イラク軍やシリア民主軍への支援が減少した。これらの部隊には長期間ダーイシュと戦う能力はない」(2019年8月6日)

米国防総省監察総監室は、2019年4月1日から6月30日までのダーイシュ(イスラーム国)に対する有志連合の「テロとの戦い」(CJTF-OIR(「生来の決戦作戦」統合任務部隊))の進捗に関する報告書(8月2日付)を米議会に提出、公開した。

米議会に報告書が提出されるのはこれが18回目。

監察総監室の公式ホームページ(https://www.dodig.mil/)によると、報告書における主な指摘点は以下の通り:

1. ダーイシュは、支配地域を維持するだけでなく、シリアで破壊活動を行い、またイラクでの破壊能力を強化し続けている。
2. ダーイシュは、シリア、イラク両国で依然として暗殺、自爆攻撃、誘拐、焼き討ちなどを行っている。
3. ダーイシュはシリアでセルを再生し、イラクに司令拠点や支配地域を広げようとしている。
4. 米軍はシリアから部分撤退を実施したが、これにより、ダーイシュの新たな細胞に対処するための教練や装備を必要としていた協力部隊への支援が減少してしまった。
5. 米国の支援を受けるイラク軍と人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍には、ダーイシュの戦闘員に対する長期的作戦を行う能力がない。
6. とりわけ、イラク軍にはダーイシュから解放した両地を長期間維持することはできない。一方、シリア民主軍は、戦闘員の数、装備、諜報能力といった点で、新たに発生するダーイシュのセルに対処する能力がそもそも限定されている。

AFP, August 7, 2019、ANHA, August 7, 2019、AP, August 7, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 7, 2019、Reuters, August 7, 2019、SANA, August 7, 2019、SOHR, August 7, 2019、UPI, August 7, 2019などをもとに作成。

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