使徒末裔連合アッラー・アクバル旅団司令官が反体制武装集団からの離反を宣言、シリアによる化学兵器廃棄をめぐり「海上に浮かべた米国船上で危険化学物質を処理する」との提案が行われたことが明らかに(2013年11月30日)

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反体制勢力の動き

ダマスカス郊外県カラムーン地方で戦う「自由シリア軍」の各部隊は共同声明を出し、「カーブーン戦線」の名で統合したと発表した。

司令官はアブー・アンマール・ガイス氏、前線司令官はカースィル・アブー・ラアド大尉が務めるという。

クッルナー・シュラカー(11月30日付)が伝えた。

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シャバーブ・フダー大隊司令官はビデオ声明(http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=jslQ-mGZHxk)を出し、ダマスカス県・同郊外県などで戦う反体制武装集団6組織が「アジュナード・シャーム・イスラーム連合」として糾合したと発表した。

「アジュナード・シャーム・イスラーム連合」に参加した武装集団は、ハビーブ・ムスタファー旅団、サハーバ旅団大隊、シャバーブ・フダー大隊、アムジャード・イスラーム連合、首都の盾旅団。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会メンバーのアブドゥルマジード・マンジューナ弁護士はラジオ・ロザナ(11月30日付)の電話取材に対し、委員会をシリア国民の正統な代表とみなさないとするアラブ連盟のナビール・アラビー書記長の発言に関して「委員会に敵対し、その役割を反故にしようとする姿勢は新しいものではない」と批判した。

また「シリア革命反体制勢力国民連立が自分自身ではなく、11カ国(シリアの友連絡グループ)の諜報機関の命令で決定に従って決定を下していることは周知で、アラビー書記長もこうした点を踏まえて連立に対処している」と非難した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ダマスカス県旧市街ウマイヤ・モスク近くに対する迫撃砲着弾(29日)を「革命家が保有する武器で、宗派主義的民兵が攻撃した」と断じ、非難した。

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自由シリア軍参謀委員会東部戦線司令官で使徒末裔連合アッラー・アクバル旅団司令官のサッダーム・ジャマル氏が、ビデオ声明(https://www.youtube.com/watch?v=RKSbkbIi79E)で反体制武装集団からの離反を宣言、また反体制武装集団に対して「改悛」し、戦闘を止めるよう呼びかけた。

Kull-na Shuraka', December 1, 2013

Kull-na Shuraka’, December 1, 2013

ダイル・ザウル県で活動してきたというジャマル氏は、アサド政権を打倒するために使徒末裔連合に加わっていたが、アラブ湾岸諸国から武器・資金の支援を受けていることを知り、またアラブ湾岸諸国の諜報機関が、使徒末裔連合の結成を後押ししてきたと証言した。

また、アラブ湾岸諸国など近隣諸国や欧米諸国の諜報機関が、自由シリア軍参謀委員会や軍事評議会の会合に参加し、その活動を直接支援してきたと暴露した。

さらに、サラフィー主義者への対応を協議することが目的だった最近の会合では、某アラブ湾岸国の皇太子、国防省幹部も同席、この皇太子は、シリア軍を標的とした攻撃を行うよう要請したのだという。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立に関しては、某アラブ湾岸国が、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長を盗聴、またその選出そのものも連立の意思を無視した西側の諜報機関の押しつけだったと述べた。

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イスラーム・シャーム自由人運動は声明を出し、ハーン・トゥーマーン村での反体制武装集団の敗北の責任を否定する一方、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とのいかなる共闘も行わないと発表した。

シリア政府の動き

イランを訪問中のワーイル・ハルキー首相ら閣僚使節団は、イランのエスハーク・ジハーンギーリー第一副大統領と会談し、両国間関係、シリア情勢などについて協議した。

SANA(11月30日付)によると、ハルキー首相は「シリアの国土において現在、武装テロ集団とその残党の殲滅に向けたシリア・アラブ軍による大勝利を通じて、勝利の時代が作られようとしている」と述べた。

これに対して、ジハーンギーリー副大統領は「シリア政府はシリア領内において、1人たりともテロリストがいることを許さないだろう」と述べたという。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線など反体制武装集団がマアルーラー市を再び襲撃し、軍と交戦した。

『ハヤート』(12月1日付)によると、マアルーラー市攻撃は、ナブク市に対する軍の包囲の緩和を試みる動きだという。

またシリア人権監視団によると、ナブク市、ヤブルード市、リーマー農場を軍が爆撃する一方、国防隊、ヒズブッラーの戦闘員とともにナブク市でシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国などからなる反体制武装集団と交戦した。

これに関連して、シリア革命反体制勢力国民連立は「アサド軍、シャッビーハ、傭兵がダイル・アティーヤ市郊外の農園で民間人35人を虐殺した」と発表した。

一方、SANA(11月30日付)によると、ナブク市周辺、マアルーラー市周辺(サフィール・ホテル周辺)、リーマー農場、ダイル・サルマーン市、ドゥーマ-市郊外、ムライハ市、カイサー市、ハラスター市、アルバイン市、ダーライヤー市、ザバダーニー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム軍の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またキスワ市で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、市民2人が負傷した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、アルシューナ村、アサーフィラ村を反体制武装集団が襲撃し、両村を制圧し、軍の戦車、兵員輸送車などを捕獲した。

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アレッポ県では、バーブ市で軍がクラスター爆弾を投下し、市民12人を「虐殺」した、とシリア革命総合委員会が主張した。

これに関して、『ハヤート』(12月2日付)は、女性7人、子供4人、戦闘員3人を含む26人が死亡したと報じた。

一方、SANA(11月30日付)によると、ティヤーラ村で軍が反体制武装集団の掃討を完了し、同村を制圧した。

またアルバイド村、キンディー大学病院周辺、カフルハムラ村、ワディーヒー村、アウラム・クブラー町、アレッポ中央刑務所周辺、ハーン・トゥーマーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、シャイフ・サイード地区、ラーシディーン地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(11月30日付)によると、バルザ区、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、鷹中隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(11月30日付)によると、マアッラシャムシャ市、ワーディー・ダイフ村、ジダール・ブカフルーン市、サルジャ村、アルバイーン山周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(11月30日付)によると、キースィーン村、シャーイル山(ハマー県)西部一帯、マハッサ地区、ダール・カビーラ村、ハーリディーヤ村周辺、ヒムス市バーブ・フード地区、カラービース地区、ワルシャ地区、サフサーファ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

NNA(11月30日付)によると、レバノン軍がベカーア県バアルベック郡アルサール地方のワーディー・フマイドでサラフィー主義武装集団に属する男性1人を逮捕した。

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ナハールネット(11月30日付)などによると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で武装集団どうしが交戦し、少なくとも6人が死亡、22人が負傷した。

諸外国の動き

化学兵器禁止機関アフメト・ウズムジュ事務局長声明を出し、シリアの化学兵器の廃棄作業に関して、米国が危険性の高い化学物質(数百トン)について、海上に浮かべた自国船上で処理するとの提案を行ったことを明らかにした。

この提案は非公式の執行理事会でなされたという。

また化学兵器禁止機関によると、無害化が比較的容易な18種類、約800トンの化学物質の廃棄処理に関する公募に対して、企業35社が応じたという。

さらに、化学兵器製造施設18施設のうちの12施設を「産業用」に転換することを求めるシリア政府の申請に対しては、これを認めないことを決定した。

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ローマ法王フランシスコはヴァチカンでギリシャ・カトリック教会アンチオキア(アンタキア)総大司教のグレゴリウス3世ラッハームと会談した。

AFP(11月30日付)によると、会談でフランシスコは「我々は祈りと和解の力を信じている。あらゆる暴力行為から手を引き、すでに多くの被害をもたらしてしまっている問題の公正且つ持続的な解決策を対話を通じて案出するよう改めて呼びかけたい」と述べたという。

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AFP(12月1日付)は、ヨルダンのサラフィー主義消息筋の話として、シリアのダルアー県での戦闘に参加していたサラフィー主義戦闘員のムハンマド・アブー・ラバーダ氏(アブー・ハフス)が重傷を負い、搬送されていた病院で死亡した。

AFP, November 30, 2013, December 1, 2013、al-Hayat, December 1, 2013、Kull-na Shuraka’, November 30, 2013, December 1, 2013,
December 2, 2013、Naharnet, November 30, 2013、NNA, November 30, 2013、Reuters,
November 30, 2013、Rihab News, November 30, 2013、SANA, November 30, 2013、UPI,
November 30, 2013などをもとに作成。

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