2012年2月16日のシリア情勢

国連の動き

国連総会で、アサド政権による人権侵害を非難し、アラブ連盟外相会議決議(行程表)を全面支持する決議が採択された。

非難決議は、加盟国193カ国中137国が支持した。反対票を投じたのは、ベラルーシ、ボリビア、中国、キューバ、北朝鮮、エクアドル、イラン、ニカラグア、ロシア、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの12カ国。

またレバノン、アルジェリア、ベトナム、スリランカ、スリナム、セント・ビンセント・グレナディーン、ツバル、ウガンダ、ミャンマー、ナミビア、ネパール、タンザニア、アンゴラ、アルメニア、フィージー、コモロ、カメルーンは棄権、また3カ国が技術的な理由で投票しなかった。

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国連総会でのシリア非難決議採択を受け、スーザン・ライス米国連大使は、「シリア国民は世界の国々が自由と安全のために彼らを支持していることが知っている」と述べた。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連大使は、シリア非難国連総会決議に関して、「西側諸国、一部のアラブ諸国、そして過激なテロ集団のシリアに対する陰謀の一貫」と非難した。

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イランの国連大使は「内政不干渉の原則を遵守し、決議に反対した」と述べた。

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国連の潘基文事務総長は、アサド大統領により新憲法国民投票日程発表に関して、民間人殺害を停止することがより重要と述べる一方、アサド政権が人道に対する罪を犯していると非難した。

反体制勢力の動き

Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はクウェート紙『ラアユ』(2月16日付)に対して、「暴力、殺戮、狙撃が完全に停止するまで国民投票には参加できない」と述べた。

また「憲法は社会を構成するすべての当事者のコンセンサスの結果として生まれる社会契約であり、そのなかには各県で平和的革命・インティファーダを行う代表者や愛国的反体制勢力が含まれねばならない」と述べ、アサド政権が一方的に作成した草案を拒否する姿勢を示した。

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アサド大統領による新憲法草案国民投票の日程(2月26日)発表を受け、地元調整諸委員会は声明を出し、「犯罪者体制への国民の支持を確認」させる投票をボイコットするよう呼びかけ、アサド政権を「発足以来、憲政上、そして社会的な正統性を欠いている」と断じ、あらためてその徹底的な打倒を呼びかけた。

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シリア国民評議会のアナス・アブダ氏はBBC(2月16日付)に対して、憲法草案国民投票に関して、「ヒムス、イドリブ、ハマーなどでの人道に対する罪から注意をそらすための政府のトリック」と述べ、拒否の姿勢を示した。

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シリア国民評議会はカタールの首都ドーハで会合を開き、ブルハーン・ガルユーン事務局長の任期を3ヵ月延長するとともに、人民民主党の重鎮の一人ジョルジュ・サブラー氏を運営委員会メンバーに任命した。

国内の暴力・反体制勢力掃討

シリア人権監視団は、ダルアー県全体で軍・治安部隊によって「虐殺」が行われたと発表し、包囲された市民の行方の「即時解明」を呼びかけた。

同監視団が住民(ムハンマド氏)の話として伝えたところによると、軍・治安部隊は県内の村を一つずつ掃討、「自由シリア軍兵士は抵抗を試みたが、装備不足と市民への報復を恐れて撤退した」。

また同監視団によると、多数の住民が戦火を逃れて非難したという。

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Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

Kull-na Shuraka’, February 16, 2012

ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルヌブーダ町で、士官複数を含む離反兵10人と民間人4人が軍・治安部隊の砲撃で殺害された。

タイバト・イマーム市とスーラーン市を結ぶ街道では、離反兵が軍・治安部隊を襲撃し、兵士4人を殺害した。

一方、SANA(2月16日付)は、ハマー市のハマディーヤ地区で武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、複数の武装テロ集団メンバーが逮捕されたと報じた。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マッザ区のイラン大使館前で、葬儀の会葬者が体制打倒と自由シリア軍支持を訴えるデモを行った。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合報道官のムハンマド・シャーミー氏によると、治安部隊はデモ参加者に実弾、催涙ガスなどを用いて強制排除、複数を逮捕した。

シャーミー氏によると、ジャウバル区、カダム区、マイダーン地区、ハジャル・アスワド市の複数の学校で反体制デモがあったという。

また、シリア法律研究調査センターのアンワル・ブンニー弁護士は、AFP(2月16日付)に対して、ダマスカスで反体制活動家13人が一斉摘発されたと述べた。

al-Hayat, February 17, 2012

al-Hayat, February 17, 2012

ブンニー弁護士によると、治安当局はダマスカスにあるシリア表現の自由センターの事務所で、マーズィン・ダルウィーシュ所長、ラッザーン・ガザーウィー女史(ブロガー)、ヤーラー・バドル氏、ヒンナーディー・ザフルート氏、アブドゥッラフマーン・ハマーダ氏、リーター・ドゥユーブ氏、ミヤーダ・ハリール氏、ジュワーン・フランスー氏、スナー・ズィーターニー氏、ハーニー・ズィーターニー氏、バッサーム・アフマド氏、マンスール・ハミード氏、マハー・サブラーニー氏が逮捕された。

『クッルナー・シュラカー』(2月16日付)によると、13人は空軍情報部によって逮捕された。

一方、SANA(2月16日付)によると、マイダーン地区のイマーム・アナス・ブン・マーリク・モスクのシャイフ、ムハンマド・アフマド・アウフ・サーディク師が武装テロ集団によって暗殺された。

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アレッポ県では、複数の反体制活動家によると、バザーア村で治安部隊が大規模な摘発を行い、14人を逮捕した。

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なお地元調整諸委員会によると、各地での軍治安部隊の掃討作戦で少なくとも40人が死亡、数百人が負傷した、という。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はベイルート郊外(ダーヒヤ)で開催去れた「殉教指導者への忠誠」祝典参加者に対してテレビ演説を行い、アサド政権打倒をめざすアラブ諸国を厳しく非難した。

ナスルッラー書記長は以下のように述べた。

「バハレーン人民は放置されている。誰もそのことを問わない。アラブ連盟も、国連も、イスラーム諸国会議機構も…。(シリアに関して)一つの目的がすべての者たちの間で合意されている…。アサド政権に要求されていたのは、(ハマースの)ハーリド・ミシュアル政治局長とレバノンのレジスタンスを引き渡すことだ…。シリア政府に改革を求める者たちに我々は言いたい。シリア政府を構成する人々は改革について語り、対話と暴力停止を呼びかけ、改革プロセスを包摂した憲法草案の国民投票に向かっている…。アサド大統領とシリア政府がこれまで実行したのは改革である…。シリア政府の転覆を求めるアラブ諸国のどの政府が改革を実行したのか?」

諸外国の動き

ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、アサド大統領が「クーデタなしに去ることも、路線を変更することもないだろう」と述べた。

またシリア国内(ダマスカス、アレッポ)での自爆テロに関して「アル=カーイダの指紋」が残されていると指摘し、イラクのアル=カーイダ・メンバーがシリア国内への入り、反体制勢力内に浸透している可能性があると述べた。

一方、米上院外交委員会はアサド政権による「野蛮で不当な」暴力を非難する決議を可決した。

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イスラエル紙『ハアレツ』(2月16日付)は、シリア国内での反体制運動に対してイスラエルがどのような公式の立場をとるかをめぐって、ベンヤミン・ネタニヤフ内閣内で意見の不一致が生じていると報じた。

同報道によると、アアヴィグドール・リーベルマン外務大臣および外務省高官が、シリア国内での弾圧を拒否し、アサド大統領の退任を求める姿勢を明示することを求めている一方、ネタニヤフ首相は、アサド政権への対応を明示しないことが得策と考えている、という。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、ウィーンでロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談し、シリア情勢などに関して意見を交換した。

会談後ジュペ外務大臣は、シリア情勢をめぐって「パリとモスクワは安保理で決議案を準備するために行動する用意がある…。我々には暴力停止のためのアラブ連盟の試みと人道支援のための決議案のためにニューヨークで行動する用意がある」と述べた。

しかしラブロフ外務大臣は、「何らのオファーも受けていない段階で、フランスのオファーについて意見を述べることはできない…。(ジュペ)外務大臣は、人道支援のための新たな決議を検討していると知らせた…。それが用意でき次第健闘する用意があると表明しただけ」と答えた。

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ロシアのインテルファクス(2月16日付)は、ロシア消息筋の話として、国連総会での決議に関して、「バランスを欠き、我々の立場を考慮していない」と報じた。

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ジャズィーラ(2月16日付)は信頼できる消息筋の話として、ハマースのハーリド・ミシュアル政治局長がアサド大統領との会談がキャンセルされたと報じた。

同報道によると、アリー・マムルーク軍事情報局長が1月にミシュアル書記長と会談し、アサド大統領との会談を調整すると伝え、日時が設定されたが、会談の3日前にマムルーク局長がミシュアル書記長に対して面談のキャンセルが伝えられた、という。

AFP, February 16, 2012、Akhbār al-Sharq, February 16, 2012、Aljazeera.net, February 16, 2012、DP News, February 16, 2012、Haaretz, February 16, 2012、al-Ḥayāt, February 17, 2012、Kull-nā Shurakā’, February 16, 2012、al-Ra’y, February 16, 2012、Reuters, February 16, 2012、などをもとに作成。

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