2014年4月8日のシリア情勢:諸外国の動き

『ハヤート』(4月8日付)は、米国が「穏健な反体制派」とみなしている武装集団に「漸進的に支援を増大させる」ことを決定し、対戦車砲供与、戦闘員の教練が行われていると報じた。

これを受け、自由シリア軍参謀委員会前政治広報調整官で参謀委員会を離反したルワイユ・ミクダード氏が指導しているとされる「ハズム運動」(12組織)に対戦車ミサイル600基が供与された、という。

事実、Youtubeでは、イドリブ県での戦闘で反体制武装集団が米国が開発したTOW対戦車ミサイルを使用している映像がアップされたという。

同紙が西側消息筋の話として伝えたところによると、バラク・オバマ米大統領は、米軍・治安当局高官やシリアの周辺諸国からの提言に従い、隣国(複数)で毎月300人から600人の戦闘員を教練すること、伝統的兵器、通信機器、対戦車砲などを供与することを決定したという。

提言のなかには、中東地域諸国から「使用を限定し、誤った者に手渡さないことを、指紋捺印のうえ誓約させる」ことを条件に携帯式の対戦車ミサイルを供与するとの案も示されたが、オバマ政権は慎重な態度を示したという。

「暫定的武器供与増大」には、二つの目的があり、第1の目的はシリア国内での「パワー・バランス」を変化させ、アサド政権に移行期統治委員会樹立に向けた交渉を通じた紛争の政治的解決を受け入れされることで、これが実現しない限りにおいて、米国はジュネーブ2会議の交渉再開には消極的な姿勢をとり続けることになるという。

第2の目的は、「穏健な反体制派」にアル=カーイダ系の武装集団に対抗する能力を与えることで、これに関して米国は、シリア領内のイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の拠点空爆の可能性さえも否定していないという。

なお、米国は反体制勢力への支援戦略として、シリア革命家戦線、ムジャーヒディーン軍、イスラーム戦線と「穏健な反体制派」の対話を通じて、タウヒード旅団、シャームの鷹旅団などの懐柔をめざしているが、シャーム自由人イスラーム運動については、シャームの民のヌスラ戦線に近いという理由で排除しようとしているという。

al-Hayat, April 8, 2014をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.