2013年11月27日のシリア情勢

反体制勢力の動き

イスラーム戦線は「イスラーム戦線憲章:ウンマ計画」(http://all4syria.info/wp-content/uploads/2013/11/ميثاق-الجبهة-الإسلامية.pdf)を発表し、自らの活動方針およびヴィジョンを発表した。

「イスラーム戦線憲章」は、序論、結論、および4部からなり、イスラーム戦線を「政権の完全打倒とアッラーの法に主権が帰するイスラーム国家の建設をめざすイスラーム的・包括的な政治・軍事・社会体」と位置づけている。

第1部では、イスラーム戦線がいかなる外国勢力にも従属しない独立した組織だと明言、その存在と活動方針がイスラームから発していると主張している。

また武装集団を単一の軍事組織へと統合するために活動するとしている。

第2部では、体制の完全打倒、現体制の行政、軍事、司法の停止、政権幹部の処罰、独立イスラーム国家の樹立、社会復興のための資源・財の運営、社会におけるイスラーム的アイデンティティの保持、というイスラーム戦線の目標が明示されている。

第3部では、シリア分割への拒否の姿勢を強調される一方、外国との関係に関しては、「政治化されない」ことを条件に支援を歓迎すると主張している。

第4部では、世俗主義、民主主義、市民国家、クルド問題、マイノリティ問題、外国人戦闘員(ムハージリーン)などに関するイスラーム戦線の姿勢が説明されている。

このなかで、イスラーム戦線は、世俗主義、議会制民主主義、市民国家を「専制と権利喪失を見出すことができる」として拒否する一方、クルド人、マイノリティ、外国人戦闘員の権利を尊重するとしている。

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シリア自由人旅団は声明を出し、各地の司令官の人事改編を行うとともに、第16師団からの脱会を発表した。

クッルナー・シュラカー(11月27日付)によると、第16師団はバドル殉教者旅団が指導する武装集団の連合体で、当初はイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)も参加していたが、旅団とダーイシュの対立を受け、ダーイシュが脱会を発表していたという。

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シリア革命反体制勢力国民連立メンバーでシリア・クルド左派党のシャッラール・カッドゥー氏は、民主連合党が推し進める西クルディスタン移行期民政局評議会に関して、「シリアの国土保全をめざすものでなく…、クルド人地域住民の自治に反する」と批判した。

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イフバーリーヤ・チャンネル記者のムハンマド・タウフィーク・サギール氏とカメラマンのジャミール・トゥース氏が、ハサカ県ラアス・アイン地方で「自由報道連合」(クルド最高委員会)の許可無く取材活動を行い、「シリア軍が同市を解放した」とのリポートを行った直後、アサーイシュに逮捕された。

クッルナー・シュラカー(11月27日付)が伝えた。

シリア政府の動き

SANA(11月27日付)は、外務在外居住者省高官の話として、「シリア・アラブ共和国は国連潘基文事務総長がジュネーブ2会議開催の日程を2014年1月22日に決定したことを歓迎する」と報じ、アサド大統領の指示に沿ってシリアが正式な使節団を派遣することを改めて確認した。

また「移行期間においてアサド大統領の居場所はない」と主張する西側諸国の外務大臣らの発言に関しては、「植民地時代を想起させるものであり…、こうした国の政府を孤立させる」と非難した。

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アサド大統領はイランのハサン・ロウハーニー大統領と電話会談を行い、イランの核開発問題の進展などについて協議した。

アサド大統領は会談で、ジュネーブでのイランと米英独仏中ロの6カ国の核開発縮小と制裁緩和に関する合意に祝意を示すとともに、開発途上国が平和的核エネルギーを手に入れる権利を確立した、と賞賛した。

一方、ロウハーニー大統領は、イランがシリア国内のテロとの戦いにおいてシリアを支持するとの姿勢を表明した。

SANA(11月27日付)が報じた。

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クッルナー・シュラカー(11月27日付)は、アブー・ファドル・アッバース旅団が、ダマスカス郊外県で捕捉した反体制武装集団の負傷者を拷問にかけ、シリアの衛星放送がアル=カーイダのメンバーだと断じる映像を配信している、と報じた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、東グータ地方のマルジュ地方で、軍、国防隊、ヒズブッラーの戦闘員、アブー・ファドル・アッバース旅団が反体制武装集団と交戦し、シリア人戦闘員12人と外国人戦闘員5人が死亡した。

同監視団によると、軍はヒズブッラーの戦闘員、アブー・ファドル・アッバース旅団の支援を受け、反体制武装集団の進軍を止めることに成功したという。

一方、SANA(11月27日付)によると、軍がカーラ市の西に位置するアイン・バイダー農場で反体制武装集団を掃討し、同市を制圧した。

また、ダイル・アティーヤ市、ナバク市、ビビーラー市、ダイル・アサーフィール市、ザマルカー陸橋、ハラスター市、ハーン・シャイフ・キャンプで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

これに対し、反体制武装集団はジャルマーナー市、アドラー市の警察団地などに迫撃砲で攻撃を加え、子供1人が死亡、市民多数が負傷した。

他方、ダマスカス郊外県革命調整連合のユースフ・ブスターニー報道官は、クッルナー・シュラカー(11月27日付)の電話取材に対し、東グータ地方での戦闘で「自由シリア軍」がヒズブッラーの戦闘員250人以上を殺害、ヒズブッラーとアブー・ファドル・アッバース旅団の戦闘員約100人を捕捉したと主張した。

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クナイトラ県では、シリア革命総合委員会が、ビイル・アジャム地方のハワーリド中隊基地を「自由シリア軍」が完全制圧したと主張した。

同委員会によると、「自由シリア軍」は早朝から、「タウヒードの夜明け」と銘打って、クナイトラ県での戦闘を激化させたのだという。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(11月27日付)によると、26日から、ウガイバシュ村で、民主連合党人民防衛部隊がムハンマド軍、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と激しく交戦し、サラフィー主義戦闘員10人以上を殺害し、同村を制圧、民家50件を焼き討ち、「自由シリア軍」やシャームの民のヌスラ戦線を支持していた住民6人を殺害した。

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イドリブ県では、シリア革命総合委員会が、アサド政権を支援する外国人戦闘員が拠点としているイドリブ市内の「人民軍」の本部や、競技場近くの「シャッビーハ」拠点を「自由シリア軍」が戦車で砲撃したと主張した。

また『ハヤート』(11月28日付)によると、軍はカフルタハーリーム町、アイン・ラールーズ市を空爆した。

一方、SANA(11月27日付)によると、カフルタハーリーム町で、軍がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカフルルーマー村からアルバイーン山、マアッラト・ヌウマーン市方面に潜入しようとした武装集団を軍が撃退したほか、アルバイーン山周辺、アイン・シーブ村、カフルジャーリス村、ヒーシュ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、『ハヤート』(11月28日付)によると、複数の活動家が、ナワー市のコンコース大隊基地を「自由シリア軍」が攻撃する一方、軍がブスル・ハリール市、タスィール町、ナーフタ町を空爆したと主張した。

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アレッポ県では、『ハヤート』(11月28日付)によると、複数の活動家が、「自由シリア軍」がヌッブル市、ザフラー町を砲撃する一方、シャイフ・ユースフ市周辺に位置する丘陵地帯を制圧したと主張した。

またシリア人権監視団によると、アレッポ市のシャイフ・サイード地区で、軍がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦し、サラフィー主義戦闘員20人を殺害した。

一方、SANA(11月27日付)によると、アレッポ市アーミリーヤ地区、サラーフッディーン地区に潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。

また、バナーン町、ハーン・アサル村、マスカナ市、ハイヤーン町、マアーッラト・アルティーク村、ハンダラート・キャンプ、バービース村、ワディーヒー村、キンディー大学病院周辺、アレッポ中央刑務所周辺、アッザーン市、カフルダーイル村、アウラム・クブラー村、カースティールー地方、アイタイン市、ムスリミーヤ村、シャイフ・ナッジャール市、アレッポ市ブスターン・カスル地区、スッカリー地区、シャイフ・サイード地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(11月27日付)によると、バルザ区、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(11月27日付)によると、ガーブ地方サルマーニーヤ村で、軍が反体制武装集団を殲滅した。

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ヒムス県では、SANA(11月27日付)によると、タッルドゥー市、カフルラーハー市、ヒムス市バーブ・フード地区、カラービース地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(11月27日付)によると、ムサイフラ町で、シャリーア法廷本部を軍が攻撃・破壊、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷した。

またダルアー市各所、アトマーン村、ナースィリーヤ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(11月27日付)によると、ダイル・ザウル市ラシュディーヤ地区、シューラー村、マヤーディーン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

クッルナー・シュラカー(11月27日付)は、レバノンの信頼できる複数の消息筋からの情報として、シリア軍が9月に化学物質をレバノン国内に移転させ、化学兵器国際機関の査察をかわしていたと報じた。

同報道によると、化学物質は、シリア国境に近いベカーア県バアルベック郡マシュルーア・カーア=ジャウラ地方に9月7日に運び込まれたのだという。

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AFP(11月28日付)は、フサイン・ハーッジ・ハサン農業大臣(ヒズブッラー)の甥アリー・リダー・フアード・ハーッジ・ハサン氏(22歳)が27日、ヒズブッラーの戦闘員3人とともに、ダマスカス郊外県カラムーン地方での戦闘で死亡したと報じた。

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『ワールド・トリビューン』(11月27日付)は、レバノンの複数の消息筋の話として、ヒズブッラーが対シリア国境地域などで、イランの無人戦闘機200機を使用して、偵察・監視活動を行っていると報じた。

諸外国の動き

トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣がイランを訪問し、ハサン・ロウハーニー大統領、モハンマド・ジャワード・ザリーフ外務大臣らと会談、シリア情勢などについて協議した。

イラン通信(IRNA)によると、会談でダウトオール外務大臣は「人道支援、戦争停止、避難民の帰還、テロリストの追放と治安回復、平和的な問題の正常化」といった点でイラン大統領と意見の一致を見たという。

一方、ザリーフ外務大臣は、イラン、トルコ両国がジュネーブ2会議開催前にシリア国内での戦闘を停止すべく互いに努力し合うだろうと述べた。

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ロシアのミハエル・ボクダノフ外務副大臣は、ジュネーブ2会議に、イラク、ヨルダン、レバノン、トルコの代表も参加することになるだろうと述べるとともに、シリア政府の使節団団長がワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣になるだろうとの見方を示した。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は声明を出し、1月22日開催予定のジュネーブ2会議ジュネーブ2会議に関して、シリア政府の使節団にアサド大統領は参加しないと発表した。

ただし、アサド大統領は、ジュネーブ2会議の使節団を率いることはないとこれまでにたびたび明言している。

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『ハヤート』(11月28日付)は、イラク・クルディスタン自治政府の治安当局が、シリアで反体制武装活動を行うサラフィー主義集団に参加していたクルド人1人を逮捕したと報じた。

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クッルナー・シュラカー(11月27日付)によると、ベルギー当局は、シリアへの帰国を拒否した駐ブリュッセル・シリア大使館に勤務していたフサイン・S氏の滞在期間を1年間延長することを決定した。

AFP, November 27, 2013, November 28, 2013、al-Hayat, November 28, 2013、Kull-na Shuraka’, November 27, 2013、Naharnet, November
27, 2013、Reuters, November 27, 2013、Rihab News, November 27, 2013、SANA,
November 27, 2013、UPI, November 27, 2013、The World Tribune, November 27, 2013などをもとに作成。

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