アントニー・ブリンケン米国務長官は、国連安保理で開かれたシリアの人道状況への対応をめぐる会合に出席し、2020年7月に停止されたバーブ・サラーム国境通行所(アレッポ県)とヤアルビーヤ国境通行所(ハサカ県)を通じた越境(クロスボーダー)人道支援の再開と、現在も唯一利用が認められているバーブ・ハワー国境通行所(イドリブ県)を通じた支援の期間延長を呼びかけた。
ブリンケン国務長官は次のように発言した。
安保理は複雑な多くの課題に取り組んでいる。だが、これはそうした課題ではない…。シリアの人々の命は、緊急支援が受けられるかどうかにかかっている。我々は、そうした支援が彼らのもとに届けられるための経路を作り出し、それを閉鎖するのではなく、開かねばならない。
安保理が当時、これらの二つの人道的な通行所(バーブ・サラーマ国境通行所とヤアルビーヤ国境通行所)を再び承認しなかったことの正当な理由はなかった。また、これらの通行所が今日も閉鎖されたままである正当な理由もない。
安保理メンバーはすべき仕事をしなければならない。それは人道支援のため三つの国境通行所すべてを再び承認することだ。
シリア人数百万人の生活がかかっている人道支援を政治的な争点にすることを止めよう。
CNN(3月29日付)などが伝えた。
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国連安保理は2014年7月14日に、安保理決議第2165号を採択し、半年に限って反体制派支配地域への国連関連機関による越境人道支援を行うことを認めていた。
同決議では、周辺諸国の同意とシリア政府への通告(同意は不要)がなされれば、反体制派の支配下にあったバーブ・サラーマ国境通行所(アレッポ県)、バーブ・ハワー国境通行所(イドリブ県)、ラムサー国境通行所(ダルアー県)、クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)の実効支配下にあったヤアルビーヤ国境通行所(ハサカ県)を経由して人道支援を行うことができる旨、定められていた。
同決議はその後、安保理決議第2191号(2014年12月17日採択――2016年1月10日まで延長)、第2332号(2016年12月21日採択――2018年1月10日まで延長)、第2393号(2017年12月19日採択――2019年1月10日まで延長)、第2449号(2018年12月14日採択――2020年1月10日まで延長)、第2504号(2020年1月11日採択――2020年6月10日まで延長)、決議2533号(2020年7月11日採択――2021年7月10日まで延長)で更新された。
だが、国連安保理決議第2504号では、シリア政府の支配下に復帰したラムサー国境通行所とヤアルビーヤ国境通行所が除外された。
また、賛成12、棄権3(ロシア、中国、ドミニカ共和国)で辛うじて採択された決議2533号では、トルコの占領下に置かれていたバーブ・サラーマ国境通行所が除外された。
AFP, March 30, 2021、ANHA, March 30, 2021、CNN, March 29 2021、al-Durar al-Shamiya, March 30, 2021、Reuters, March 30, 2021、SANA, March 30, 2021、SOHR, March 30, 2021などをもとに作成。
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