シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるマンビジュ市などでデモが再発、アサーイシュの発砲で3人が新たに死亡(2021年6月1日)

アイン・フラート(6月1日付)、イナブ・バラディー(6月1日付)、シリア人権監視団、SANA(6月1日付)、アナトリア通信(6月1日付)などが伝えたところによると、シリア政府と北・東シリア自治局の支配下にあるマンビジュ市と周辺の町や村で前日に続いて、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の徴兵制や住民に対する犯罪行為に抗議するデモが発生、強制排除を試みた内務治安部隊(アサーイシュ)の発砲で、住民3人が新たに死亡、10人あまりが負傷した。

シリア人権監視団によると、3人の死者のうち、1人はマンビジュ市郊外、2人はマンビジュ市でアサーイシュの発砲で死亡した。

住民はまた6月1日未明、ヤースィティー村一帯に設置されているシリア民主軍の拠点の一つを襲撃、焼き討ちにしたほか、マンビジュ市東のハッターフ村検問所を襲撃、これを制圧した。

https://www.youtube.com/watch?v=AmJPdzFjtig

これら検問所はデモ参加者に向けて発砲したために返り討ちにあったという。

さらに、M4高速道路沿線のカルサーン村では、住民が路上でタイヤを燃やすなどして道路を封鎖した。

**

事態悪化を受けて、シリア民主軍傘下のマンビジュ軍事評議会が、増援部隊をマンビジュ市に派遣したほか、イナブ・バラディーが、シリア民主軍の匿名筋の話として伝えたところによるとシリア民主軍に所属するテロ撲滅部隊(YAT)がマンビジュ市に至る街道を封鎖し、オートバイの使用を禁止した。

また、マンビジュ軍事評議会は声明を出し、デモが外国勢力の支持によるものだと断じ、住民に慎重に対応し、警戒するよう呼びかけた。

声明の内容は以下の通り:

(北・東シリア)自治局の門戸は、対話と議論を行うために、皆の前で開かれており、自分たちの要求や批判を行うことができ、我々が常にみなと共にあると改めて明言したい。しかし、周知の国内外の勢力がこの地域を混乱に陥れ、内乱を煽り、我らが人民が勝ちとったものを打ち壊すため、人々の正当な要求に乗じようとしている。マンビジュが享受する安全と安定を標的にしようとしている。

犯罪者とそのスリーパーセルが、外国勢力の指示を受け、軍・治安拠点を砲撃したことから、このことは明らかで、それによって死傷者が出た…。

これらの勢力は、マンビジュを含むすべての地域でシリア人が苦しんでいる経済的状況や苦難に乗じて、マンビジュの安定を打ち崩すことに利益を見出している当事者の目的やアジェンダを実現しようとしている…。

マンビジュの住民に、一部の異常なスリーパーセルが住民の正当な要求に乗じて、この地域の信頼や安定に打撃を与えようとすることに慎重に対応し、警戒するよう求める…。

**

マンビジュ市および同市一致でのデモを受け、ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ県の部族長や名士らが、北・東シリア自治局執行評議会府が設置されているアイン・イーサー市で、アブドゥルハーミド・マフバーシュ執行評議会共同議長と会談し、自衛法(2019年6月22日施行)の改正し、徴兵制を廃止し、住民の要望に応じるよう求めた。

また、アレッポ県北部に位置するトルコ占領下のいわゆる「ユーフラテスの盾」地域の拠点都市であるジャラーブルス市、「オリーブの枝」地域のサジュー村で、マンビジュ市との連帯を訴えるデモが発生した。

**

31日深夜から1日早朝にかけて事態は一旦収束した。

この間、シリア民主軍傘下のマンビジュ軍事評議会、北・東シリア自治局傘下のマンビジュ市および同郊外民主民政評議会の代表が、地元の名士と事態収拾に向けて協議した。

だが、アサーイシュは、5月31日のデモに参加した住民4人を新たに逮捕したことで、住民の怒りが再び爆発した。

**

アレッポ県では、ANHA(6月1日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるマンビジュ市北東のフーシャリーヤ村とジャート村を砲撃した。

また、トルコの占領下にあるバーブ市東に位置するブワイヒジュ村では、トルコ軍とシリア国民軍の発砲を受け、子供1人が負傷した。

**

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるハサカ市東部のガザル検問所前で、爆弾が仕掛けられたオートバイが爆発し、内務治安部隊(アサーイシュ)の隊員1人が死亡、3人が負傷した。

AFP, June 1, 2021、Anadolu Ajansı, June 1, 2021、ANHA, June 1, 2021、‘Ayn al-Furat June 1, 2021,、al-Durar al-Shamiya, June 1, 2021、‘Inab Baladi, June 1, 2021、Reuters, June 1, 2021、SANA, June 1, 2021、SOHR, June 1, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.