イランのライースィー大統領、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領がテヘランで会談:分離主義的計画を拒否するとの閉幕声明を発表(2022年7月19日)

イランの首都テヘランで開催されたエブラーヒーム・ライースィー大統領、ロシアのヴラジーミル・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の首脳会談(アスタナ・プロセス保障国首脳会談)は、シリアの主権、領土の一体性に向けて確固たる取り組みを行い、あらゆる形態のテロに対する戦いを継続、シリアの主権を弱体化させようとする分離主義的計画を拒否することを改めて確認するとした閉幕声明を発表した。

閉幕声明では、「テロとの戦い」を口実として、領内に新たな現実を創出しようとする試みを拒否するとしたうえで、すべてのテロ組織、機関、政体を根絶するための協力を継続すると強調、トルコが「分離主義テロリスト」とみなすクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)とそれを軍事的に後押しする米国に対抗する意志を暗に示した。

また、声明では、難民、国内避難民(IDPs)の自発的な帰還を促す必要があるとし、国際社会に水道、電気、下水、医療、教育、学校、病院など基本インフラ整備に向けたプロセスやプロジェクトに寄与するよう呼び掛けた。

このほか、イスラエルによるシリア領内への度重なる攻撃を国際法違反と非難した。

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ライースィー大統領は会談後の共同記者会見で、シリアの主権と領土の一体性が維持されなければならないとしたうえで、米国の違法駐留を避難、同地から撤退し、シリア全土にシリア政府の権威が及ぶべきだと主張した。

また、イドリブ県などで依然として「テロリスト」が活動していると指摘、イラン、ロシア、トルコの三カ国が「テロとの戦い」を継続することを確認したと述べた。

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プーチン大統領は、ロシア、イラン、トルコの三カ国は、シリアの紛争の政治的解決に向けて積極的に意見を交わし、国連安保理決議第2254号をはじめとする諸原則に従って、シリアの主権、領土の一体性に向けた取り組みを行い、シリアの未来が外国からの偏見を排除したかたちでシリア国民によって決されるべきものであることを確認したと述べた。

また、シリアでの「テロとの戦い」と三カ国の連携によって、ダーイシュ(イスラーム国)などのテロ組織が敗北し、シリアでのテロの脅威は軽減しているとしつつ、シリアでのテロの完全根絶に向けて「テロとの戦い」を継続する意思を示した。

一方、シリア北東部の情勢については、一部諸外国が軍事的活動を続けようとしていると述べ、トルコや米国を暗に非難、国連の諸決議や国連憲章に基づいてこの地域にシリアの国家権威が及ぶ必要があると述べた。

また、難民に帰還についても、すべてのシリア人が日常生活を回復するための国際社会の支援が重要だと述べた。

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トルコのエルドアン大統領は会談後の記者会見で、シリア民主軍を主導するクルド民族主義民兵組織の人民防衛隊(YPG)を排除することで、シリア国民がもっとも大きな利益を享受できる、と述べた。

エルドアン大統領はまた、YPGが外交の支援を受けてシリアを分割しようとしていると述べ、米国と一部西欧諸国を暗に批判、トルコとして沈黙することはない、と付言した。

そのうで、シリアにはさまざまなテロ組織が活動しているが、その間に違いはないとし、これを排除する必要があると強調した。

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SANA(7月19日付)、アナトリア通信(7月19日付)などが伝えた。

AFP, July 19, 2022、Anadolu Ajansı, July 19, 2022、ANHA, July 19, 2022、al-Durar al-Shamiya, July 19, 2022、Reuters, July 19, 2022、SANA, July 19, 2022、SOHR, July 19, 2022などをもとに作成。

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