アレッポ県では、シリア人権監視団、ドゥラル・シャーミーヤ(10月13日付)、イナブ・バラディー(10月13日付)、SANA(10月13日付)などによると、シリア国民軍に所属するハムザ師団とこれを支援するアル=カーイダ系組織のシャーム解放機構とシャーム自由人イスラーム運動、そしてスライマーン・シャー師団が、シリア国民軍第3軍団を指導するシャーム戦線、イスラーム軍などと、トルコ占領下のアフリーン郡(いわゆる「オリーブの枝」地域)、アアザーズ郡とバーブ郡(いわゆる「ユーフラテスの盾」地域)の各所で交戦を続けた。
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シリア人権監視団によると、シャーム解放戦線、ハムザ師団、スライマーン・シャー師団は、シャーム戦線との戦闘の末、シャイフ・ハディード(シーヤ)村近郊のサンナーラ村、アンカラ村、マルワーニーヤ村を新たに制圧した。
また、カフルジャンナ村を砲撃し、シャーム戦線と激しく交戦した。
シャッラーン町に通じる戦略的要衝に位置するカフルジャンナ村での戦闘激化を受け、同村とその近郊の国内費用(IDPs)キャンプの住民がアフリーン市、シャッラーン町方面に多数避難した。
シャーム解放機構とシャーム戦線はさらに、シャッラーン町近郊にあるクワイト・ラフマ村の集合住宅一帯で交戦、迫撃砲弾複数発が同集合住宅に着弾し、民間人1人が死亡、9人が負傷した。
また、集合住宅に向かおうとしていた救急車両も攻撃を受けた。
これに対して、シャーム戦線は、アフリーン市近郊の村々に配置していた部隊をアアザーズ市方面に徹底させつつ、アフリーン市を見下ろす戦略拠点を奪還するため、ライルーン山側からシャーム解放機構とシャーム戦線に対して反撃を試みた。
だが、イナブ・バラディー、ドゥラル・シャーミーヤ、ANHAによると、シャーム解放機構は、アフリーン郡の中心都市であるアフリーン市を制圧した。
制圧は、シャーム戦線とイスラーム軍が同市を含むアフリーン郡全域からの撤退決定を受けたもの。
シリア人権監視団も、シャーム解放機構とスライマーン・シャー師団がアフリーン市に進入し、マフムーディーヤ地区を制圧したと発表した。
制圧に先立って、シャーム戦線は市内各所から撤退し、抵抗や戦闘はなかったという。
しかし、ドゥラル・シャーミーヤが軍事筋の話として伝えたところによると、イスラーム軍はアフリーン市を撤退するにあたって、病院などの民間施設に爆発物を仕掛けて同地を放棄したという。
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一方、シリア人権監視団によると、「ユーフラテスの盾」地域では、シャーム自由人イスラーム運動とハムザ師団がシャーム戦線との交戦の末、トルコ占領下のアフタリーン市近郊のドゥワイル・ハワー村を新たに制圧した。
シャーム自由人イスラーム運動とハムザ師団はまた、アフタリーン市一帯に部隊を派遣、アフティームラート村、ダービク村への攻勢を強めた。
これを受けて、シャーム戦線は、アフタリーン市の部隊をアアザーズ市に撤退させた。
ハムザ師団がバーブ市奪還に向けて反転攻勢を強め、シャーム自由人イスラーム運動とともに、バーブ市一帯を砲撃、市内のハール市場近くと同市近郊のスースィヤーン村、カッバースィーン村一帯で、シャーム戦線と交戦した。
ANHAによると、シャーム解放戦線は、ハムザ師団、シャーム自由人イスラーム運動、スライマーン・シャー師団とともに、アアザーズ市攻略に向けた動きを見せているという。
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シリア人権監視団によると、11日以降の戦闘での死者は、シリア国民軍憲兵隊隊員2人、シャーム戦線戦闘員4人、東部軍戦闘員1人、イスラーム軍戦闘員1人、シャーム解放機構戦闘員9人、シャーム自由人イスラーム運動戦闘員1人、民間人7人。
また、SANAによると、戦闘員17人が死亡、31人が負傷、また民間人3人が巻き添えとなって死亡したという。
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ドゥラル・シャーミーヤが複数の前線筋の話として伝えたところによると、シャーム解放機構は、シリア国民軍第3軍団を構成シャーム戦線、イスラーム軍などが、アフリーン郡のすべての農村から撤退したことを確認し、地元の警察・治安当局に自治を委託した。
これを受けて、地元の警察・治安当局が村々に展開した。
同筋によると、アフリーン中央区の住民は、不正撤廃、混乱収拾、治安と安定の回復を約束しているシャーム解放機構を歓迎しているという。
また、シリア人権監視団によると、シャーム解放機構によって制圧されたカルズィーハル村では、同機構が自治を委託するシリア救国内閣が住民にパンや食料物資を配給した。
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シリア国民軍第3軍団に所属していたサマルカンド旅団やワッカース旅団はそれぞれ声明を出し、シャーム戦線およびイスラーム軍との同盟関係を解消し、シャーム戦線が指揮する第3軍団から離反し、反乱者解放機構に所属すると宣言した。
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シリア人権監視団によると、バーブ市やバザーア村では、シャーム解放機構の進攻と支配を拒否する抗議デモが行われた。
しかし、ドゥラル・シャーミーヤが複数のメディア筋の話として伝えたところによると、バーブ市とアアザーズ市の住民は、劣勢に立つシャーム戦線やイスラーム軍が、両市を軍事拠点として使用するのを回避するため、両市を中立化することを決定した。
また、アアザーズ市の活動家らはSNSを通じて、アフリーン郡から撤退したイスラーム軍の「残党」を受入れないよう住民に呼びかけた。
イナブ・バラディーによると、シリア国民軍に所属する北部の鷹旅団は、アフリーン市とアアザーズ市を結ぶ街道を封鎖し、シャーム戦線やイスラーム軍の戦闘員だけでなく、避難民のアアザーズ市への阻止する構えを見せた。
— حروب و خرائط (@abduljabbar1612) October 12, 2022
AFP, October 13, 2022、ANHA, October 13, 2022、al-Durar al-Shamiya, October 13, 2022、‘Inab Baladi, October 13, 2022、Reuters, October 13, 2022、SANA, October 13, 2022、SOHR, October 13, 2022などをもとに作成。
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