ロシア、トルコ、イランの仲介でアスタナ会議開幕:反体制派はアサド政権退陣と親イラン民兵の撤退を要求、シリア政府側は反体制派をテロ集団と非難(2017年1月23日)

カザフスタンの首都アスタナで、ロシア、トルコ、そしてイランの仲介によるシリア政府と反体制派の和平協議(アスタナ会議)が開幕した。

ARA News, January 23, 2017
ARA News, January 23, 2017

会議の主な参加者は以下の通り:

シリア政府代表団:バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表を団長とする10人。
反体制派代表団:ムハンマド・アッルーシュ氏(イスラーム軍)が団長を務め、ファーリス・バイユーシュ氏(イドリブ自由軍)、ハサン・イブラーヒーム少佐(南部戦線、通称アブー・ウサーマ・ジャウラーニー、シリア革命家戦線元司令官)、マアムーン・ハッジ・ムーサー氏(シャームの鷹)、ヤフヤー・アリーディー氏(反体制派代表団報道官)ら14人が会議に参加、これに加えて21人の顧問がアスタナに参集。

ロシア政府:アレクサンドル・ラヴレンチエフ・シリア問題担当大統領特使が団長。
トルコ政府:セダト・オナル外務大臣特別顧問を団長とする外務省関係者。
イラン政府:ホセイン・ジャーベリー・アンサーリー外務副大臣が団長。
米国政府:ジョージ・クロール在カザフスタン大使。
カザフスタン政府:カイラット・アブドラフマノフ外務大臣(ヌルスルターン・ナザルバエフ大統領の代理)。
国連:スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表。

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『ハヤート』(1月24日付)は、会議開催直前からロシア、トルコ、イランが作成にとりかかっていた閉幕声明案に反体制派側が、一部文言に異議を唱えていると伝えた。

同紙によると、閉幕声明案には「現地での和解」、「武装集団の地位回復」といった文言があることついて、反体制派側は、反体制武装集団の支配にとどまる町・村に対するシリア軍の包囲や圧力を是認することにつながると反発しているという。

また、反体制派は、開幕式でイラン政府代表団が主催者として発言を行うことに異議を唱えていたという。

これに対して、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表が反体制派を説得し、事なきを得たという。

一方、シリア政府は、トルコ政府代表団が和平協議ではなく「反体制武装集団の保証人」として立ち居振る舞うことに警戒していたという。

なお、これに関して、これに関して『ハヤート』(1月23日付)は、反体制派筋の話として、トルコは軍幹部を代表団に加えようとしていたが、シリア政府がこれに異議を唱えたため、見送ったと伝えた。

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開会式では、アブドラフマノフ外務大臣がナザルバエフ大統領のメッセージを読み上げ、各代表団が基調演説を行った。

このうち、シリア政府代表団の団長を務めるジャアファリー国連シリア代表は、この和平協議が、ダーイシュ(イスラーム国)、シャーム・ファトフ戦線、そしてロシア・トルコ仲介による全土停戦に応じない「テロ組織」を排除したかたちでの停戦合意の定着をめざすものだと協調する一方、現下のシリアの混乱に関して、近隣諸国からの「テロリストの群れの流入、教練、武器資金供与」の結果だと改めて非難した。

SANA, January 23, 2017
SANA, January 23, 2017

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反体制派代表団の団長を務めるイスラーム軍のアッルーシュ氏は、シリア全土における停戦と、国連安保理決議第2254号の諸規定の実施を強調するとともに「政治プロセスは、バッシャール・アサドと軍政の退陣、イランに服する民兵や外外国人勢力の排除がなければ始められない…。ヒズブッラー、クルド人の民主統一党など、イランが引き込み、政権が作り出した外国人民兵がいることで、流血が続く。これらの組織は国連がテロ組織と位置づけるダーイシュ(イスラーム国)と変わらない」と主張した。

そのうえで、アッルーシュ氏は「反体制派が権力を分有するためにアスタナに来たのではなく、シリアの治安を回復し、逮捕された男女を釈放させるためにやって来た」と述べた。

al-Hayat, January 24, 2017
al-Hayat, January 24, 2017



デミストゥラ特使は、2月8日にスイスで開催が予定しているジュネーブ4会議を踏まえ、「来月のジュネーブでの反体制派とシリア政府双方の代表団による直接交渉への道を拓くべきだ」と強調した。

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ジャアファリー国連代表は開幕式後の記者会見で、この和平協議が、シリア紛争の政治的解決に向けた重要な出来事と位置づけ、デミストゥラ特使に同調する一方、「テロ組織の代表団は、彼らを雇っているトルコなどの指示を受け、交渉を破壊しようとしている」と反論した。

ジャアファリー氏は「テロ集団の代表団による挑発的な発言は、皆にとっては驚きだった。またこの代表団は停戦合意を理解していないことを露呈した…。アッルーシュ氏の発言は外交儀礼に反しており、会議の主題とは無関係で、この会議の重要性や会議の保証国による取り組みのすべてに対する侮辱だ」と付言した。

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なお、『ハヤート』(1月24日付)によると、シリア国内での停戦監視の仕組みの構築とその完全実施、軍事的解決の拒否などが盛り込まれているが、イランは「移行期間」という文言を入れることに反対し、ロシア、トルコと対立しているという。

一方、アッルーシュ氏は、ツイッター(1月23日付)で、アスタナ会議では「いかなる閉幕声明を採択為れないだろう。リークされた文言は正しくない。我々はそうしたテキストは目にしていない」と綴った。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 23, 2017、January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 22, 2017、January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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ロシアのラヴロフ外務大臣は2月8日開幕予定のジュネーブ4会議への反体制武装集団の出席を支持(2017年1月23日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はモスクワでの記者会見で、カザフスタンで開幕中のシリア政府と反体制武装集団を中心とする反体制派の和平協議(アスタナ会議)と2月8日にスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表のもとで開幕予定のジュネーブ4会議について言及し、和平協議における反体制派の代表団を、停戦に応じた反体制武装集団から、在外シリア人による反体制政治組織に置き換えようとする動きがあると警鐘を鳴らしたうえで、ジュネーブ4会議には、反体制武装集団、ジュネーブ3会議に参加したすべての反体制派を例外なく参加させるべきだと述べた。

『ハヤート』(1月24日付)が伝えた。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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イドリブ県でシャーム自由人イスラーム運動とジュンド・アクサー機構が停戦に合意するも、シャーム・ファトフ戦線はジュンド・アクサー機構を破門(2017年1月23日)

シャーム自由人イスラーム運動とシャーム・ファトフ戦線に忠誠を近く元ジュンド・アクサー機構のメンバーは、イドリブ県ザーウィヤ山一帯での停戦と捕虜交換に関する合意を交わした。

合意では、元ジュンド・アクサー機構メンバーが制圧したイブリーン村、クマイナース村からの退去も取り決められた。

ARA News, January 23, 2017
ARA News, January 23, 2017

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アル=カーイダ系組織のシャーム・ファトフ戦線は声明を出し、イドリブ県ヒルバト・ガザーラ村一帯でのシャーム自由人イスラーム運動と旧ジュンド・アクサー機構メンバーとの衝突を受け、ARA
News(1月23日付)によると、旧ジュンド・アクサー機構メンバーの忠誠を却下したと発表した。

ジュンド・アクサー機構は、2016年10月にシャーム自由人イスラーム運動との対立収拾の動きのなかで、シャーム・ファトフ戦線に忠誠を誓い、同戦線に完全統合されていた。

ARA News, January 23, 2017
ARA News, January 23, 2017

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ARA News(1月23日付)によると、シャーム自由人イスラーム運動を離反した自由軍のアブー・ジャービル・シャイフ司令官は声明を出し、組織を解体し、シャーム自由人イスラーム運動に復帰すると発表した。

これを受け、シャーム自由人イスラーム運動のエジプト人幹部アブー・ファトフ・ファルガリー氏はツイッターを通じて離反を宣言した。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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トルコ軍の支援を受ける反体制武装集団がバーブ市東部郊外の1カ村を制圧(2017年1月23日)

アレッポ県では、ARA News(1月23日付)によると、トルコ軍の全面支援を受けるハワール・キリス作戦司令室が、バーブ市東部郊外にあるカブル・ムクリー村をダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末に制圧した。

またトルコ軍戦闘機がダーイシュ支配下のバーブ市内の住宅地を空爆した。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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ロシア軍長距離戦略爆撃機の航空支援を受け、シリア軍はダイル・ザウル市南部の墓地地区をダーイシュから奪還(2017年1月23日)

ダイル・ザウル県では、SANA(1月23日付)によると、シリア軍および予備部隊が、ダイル・ザウル市南部の墓地地区に展開するダーイシュ(イスラーム国)に対して特殊作戦を敢行、同地を奪還した。

また、シリア軍航空部隊はムーハサン市にあるダーイシュ拠点を空爆した。

一方、RT(1月23日付)によると、21日に引き続き、ロシア軍のTu-22M3長距離戦略爆撃機6機がイラン、イラク領空を経由してシリア領空に入り、ダイル・ザウル市一帯のダーイシュ(イスラーム国)拠点に対して激しい空爆を実施した。

このほか、クッルナー・シュラカー(1月24日付)によると、共和国護衛隊はダマスカス県に展開する部隊をダイル・ザウル市方面に派遣した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(1月23日付)によると、東カラムーン地方のカサーラト・バフル地区一帯でシリア軍がダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆した。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、January 24, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、RT, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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ダマスカス郊外県、首都ダマスカス県でシリア軍はシャーム・ファトフ戦線などからなる反体制武装集団との戦闘を続ける(2017年1月23日)

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、シャーム・ファトフ戦線などからなる反体制武装集団が占拠を続けるアイン・フィージャ町一帯のバラダー渓谷に対して、シリア軍が空爆を実施した。

シリア軍はまた、ザバダーニー市近郊のマダーヤー町に対しても攻撃を加えた。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区で、ジハード主義武装集団(シャーム・ファトフ戦線などからなる反体制武装集団)がシリア軍、国防隊と交戦した。

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イドリブ県では、SANA(1月23日付)によると、ファトフ軍がフーア市を砲撃し、女児1人が死亡、5人が負傷した。

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ダルアー県では、ARA News(1月23日付)によると、シリア軍がダルアー市内の反体制武装集団支配地域各所を空爆・砲撃した。

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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トランプ新政権発足早々、米主導の有志連合はシリア軍が苦戦するダイル・ザウル市近郊などに過去最大規模の爆撃(2017年1月23日)

米中央軍(CENTCOM)は、1月20~22日の3日間のシリア、イラク両国における有志連合の空爆の戦果をHPで発表した。

1月20日はシリア、イラク領内のダーイシュ(ダーイシュ)拠点などに対して32回の空爆を実施、このうちシリア領内での空爆は17回で、ブーカマール市近郊(1回)、ラッカ市近郊(11回)、アイン・イーサー市近郊(1回)、ダイル・ザウル市近郊(2回)、マンビジュ市近郊(2回)に対して攻撃が行われた。

1月21日はシリア、イラク領内のダーイシュ拠点などに対して31回の空爆を実施、このうちシリア領内での空爆は25回で、バーブ市近郊(2回)、ラッカ市近郊(22回)、ダイル・ザウル市一帯(1回)に対して攻撃が行われた。

1月22日はシリア、イラク領内のダーイシュ拠点などに対して42回の空爆を実施、このうちシリア領内での空爆は34回で、ブーカマール市近郊(1回)、バーブ市近郊(5回)、ラッカ市近郊(14回)、ダイル・ザウル市近郊(14回)に対して攻撃が行われた.

AFP, January 23, 2017、AP, January 23, 2017、ARA News, January 23, 2017、Champress, January 23, 2017、al-Hayat, January 24, 2017、Iraqi News, January 23, 2017、Kull-na Shuraka’, January 23, 2017、al-Mada Press, January 23, 2017、Naharnet, January 23, 2017、NNA, January 23, 2017、Reuters, January 23, 2017、SANA, January 23, 2017、UPI, January 23, 2017などをもとに作成。

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