ノース・プレス:バイデン米政権はシリア政府の支配を脱している地域へのシーザー法に基づく経済制裁の解除を検討(2022年2月25日)

クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いノース・プレス(2月25日付)は、複数の米国筋の話として、米国のジョー・バイデン政権がシーザー・シリア市民保護法(通称シーザー法)の枠組みのもとでシリアに科している制裁を部分解除することを決心しようとしていると伝えた。

制裁が解除される地域は、北・東シリア自治局の実効支配下にあるシリア北・東部、トルコの占領下にあるシリア北部、北西部。

シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握り、「シリア革命」最後の牙城と目されている北西部のいわゆる「解放区」、そしてシリア政府の支配地域は解除地域から除外されるという。

同米国筋は「シーザー法の制裁は、シリア政府の支配地域に対して継続される。この法律は外国の組織がアサドと取引することをシリア領内のこの地域での建設や復興事業に参加することを禁じている」と述べているという。

シーザー法の制裁が部分解除されれば、北・東シリア自治局の支配地やトルコ占領地は、外国の企業などとの取引が可能となる。

同米国筋はまた「2019年に発動された制裁の目的は、アサドがシリアでの紛争を長引かせることを可能とした資源を利用するの阻止することにある。だから、米国の外交は、アサドと協力関係にない地域をこの制裁から解放する必要があると見ている」と述べている。

そのうえで「アサドの支配を脱している地域でのあらゆる金融取引に対する制裁が解除され、それによって、外国の企業はこの地域で活動できるようになる。その一方、シリア産の石油は、シリア北・東部産も含めて制裁対象となり続ける」と付言した。

AFP, March 3, 2022、ANHA, March 3, 2022、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2022、Reuters, March 3, 2022、SANA, March 3, 2022、SOHR, March 3, 2022などをもとに作成。

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シリアで活動するイスラーム過激派はシャーム解放機構にロシア軍、シリア軍に対する戦端を開くよう迫る(2022年2月25日)

レバノンのインターネット・サイトのムドゥン(2月25日付)は、シリア国内で活動を続けるサラフィー主義者(イスラーム過激派)らが、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構に対して、ウクライナ侵攻をめぐるロシアへの欧米諸国の批判や制裁を利するかたちで、シリア国内でもロシア軍やシリア軍に対する戦端を開くよう圧力をかけていると伝えた。

2020年3月のロシアとトルコの停戦合意以降、ロシア軍やシリア軍との全面衝突を回避するようになっているシャーム解放機構の姿勢に反対し、シリアでの活動を続けているエジプト人サラフィー主義者のアブー・シュアイブ・ミスリー(タルハト・マスィール)氏はテレグラムのアカウント(https://t.me/s/abosheab?before=618)などを通じて次のように述べて、決起を求めた。

アッラーよ、ジハードを混乱させ、民と戦った…すべての人を滅ぼしてください。ウクライナでの戦争においてもっとも重要な教訓の一つは、我々のウンマにおける最大の問題が、敵の強さや弱さ、敵が忙殺されているか否かではないということだ。最大の問題は、ウンマとジハードを隔てようとする我らが民の偽善者にある。

https://twitter.com/talha13523/status/1496842207197810689

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また、シャーム解放機構を離反したアブー・ヤフヤー・シャーミー氏はツイッターのアカウント(https://twitter.com/borwjj)を通じて次のように述べている。

ウクライナに対するロシアの戦争が始まった。それは全面戦争へと発展する可能性があり、シリア革命に復活の機会を与えるだろう。アッラーは自由な者たちに糸口を御与えくださっている。だが、追随者たちはその機会を利することができない…。

ウクライナでのロシアの勝利を楽観し、その見返りとして、ロシアがシャームを放棄すると期待する者もいれば、ロシアの敗北を楽観し、より多くを期待している者もいる。だが、いずれにおいても悪影響があるというのが真理だ。ロシアがウクライナに関与したことこそが好影響だ。重要な問題とは、ロシアが忙殺されていることを利することができるか、我々以外の誰かがこの状態、さらには我々を利するかということになる。
抑制、封じ込め、独占の連鎖が増し、多くの危害が過去と現在において失われている。反抗するシリア国民がこうした機会を利することができるのは、こうした枷から解放され、狭量な利益を囚われた指導者や戦争商人を転覆することによってのみだ。

なお、複数の軍事筋がムドンに対して明らかにしたところによると、こうした言説に、強大な軍事力と欧米諸国の弱腰ゆえにロシアがウクライナで勝利を収めると考えてているシャーム解放機構の幹部らは苛立ちを感じているという。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、al-Mudun, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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「スハイル・アブー・タウ」の名で呼ばれる反体制派戦闘員がウクライナでロシア軍と戦う意思を表明(2022年2月25日)

シリアの反体制武装集団の戦闘員の1人で、米国製のTOW対戦車ミサイルによる攻撃の名手であることからスハイル・アブー・トウ(TOW)の名で呼ばれるスハイル・ムハンマド・ハンムード氏はツイッターの自身のアカウント(https://twitter.com/suheilhammoud/)を通じて、ウクライナでロシア軍との戦闘に参加する意思を示した。

ハンムード氏のツイッターでの書き込み内容は以下の通り。

いかにしてウクライナに行き、ウクライナ軍とともに戦うことができるか。方法はあるのか。私には用意ができている。

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ハンムード氏は、もともとはシリア軍に従軍していたが、シリアに「アラブの春」が波及した2011年に離反し、2012年6月から2013年4月頃までイドリブ県ザーウィヤ山地方でシリア軍との戦闘に参加した。

ハンムード氏は、第21部隊連合、第1沿岸師団、第13師団、ハズム運動など、自由シリア軍諸派として知られる武装集団に所属、シリア軍との戦闘に従事、その後、シリア・ムスリム同胞団の系譜を汲み、トルコが全面支援するシャーム軍団に参加した。

ハンムード氏はまた、大のシャームの民のヌスラ戦線(現在のシャーム解放機構)嫌いで知られ、2014年から2015年にはヌスラ戦線とも戦ったこともあった。だが、2017年4月にシャーム解放機構に拘束され、「宗教を揶揄した」として1カ月の禁固刑に処された。

釈放後は長らく公の場から姿を消していたが、2020年2月10日に戦線に復帰し、「決戦」作戦司令室に参加し、トルコ軍とともに、シリア軍、ロシア軍と戦った。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

AFP, February 27, 2022、ANHA, February 27, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 27, 2022、Reuters, February 27, 2022、SANA, February 27, 2022、SOHR, February 27, 2022などをもとに作成。

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アサド大統領はロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、「西側諸国のヒステリー」を非難(2022年2月25日)

アサド大統領はロシアのヴラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナ情勢とドンバス地方の民間人の保護を目的としたロシア軍の特殊軍事作戦について意見を交わした。

会談のなかでアサド大統領は、現在起きているのは、世界における歴史の修正とソビエト連邦崩壊後に失われた均衡の是正であるとしたうえで、西側諸国のヒステリーは、歴史を誤ったままにとどめ、法律に違反する者以外の誰も望んでいない混乱をもたらそうとするものだと述べた。

また、ロシアは今日、自国のみならず世界、正義や人道といった原理を防衛していると評価した。

アサド大統領は、西側諸国に混乱と流血の責任があり、それは諸国民を支配しようとする西側諸国の政策の結果だと非難、これらの国はシリアのテロリスト、ウクライナなど世界のさまざまな場所のナチスを支援するための汚い戦術をとっていると述べた。

そのうえで、シリアは、正しい姿勢をとるとの信念に基づいて、ロシアに寄り添うと強調、世界的な脅威となり、世界の安定に打撃を与えようとする西側諸国の無責任な政策を実現するための道具となったNATOの拡大に対抗することは、ロシアの権利であると断じた。

アサド大統領はさらに、シリア、ロシア両軍が対峙している敵は一つで、シリアにおいてそれは過激派、ウクライナにおいてはナチスだとの見方を示すとともに、大国は軍事力だけでなく、法律、崇高なる道徳、そして人道主義の原則を尊重することで初めて大国たり得るという教訓をロシアが世界に示すことになるだろうと述べた。

これに対して、プーチン大統領は、ドンバス地方での特殊軍事作戦が安定回復と、この8年間にわたって現地住民が苛まれてきた苦しみを止めることを目的とていると明言、ロシアが過去数年にわたって対話と外交に依拠し、武力行使の決定は、西側の主人の支援を受けるウクライナ当局がロシア、ウクライナ両国の議会で承認された一連の合意を遵守せず、ドネツク、ルガンスク両共和国が軍事支援を要請したことを受けてなされたと述べた。

また、ロシア軍は雄々しく勇敢に戦い、眼前の目標すべてを実現するだろうと強調した。

https://www.facebook.com/SyrianPresidency/posts/321674126665574

SANA(2月25日付)が伝えた。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県ハジーン市近郊で「人民諸派」がシリア民主軍の車を機関銃で攻撃し、兵士2人を殺害(2022年2月25日)

ダイル・ザウル県では、SANA(2月25日付)が複数の地元筋の話として伝えたところによると、ダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の支配下にあるハジーン市近郊で「人民諸派」が走行中の人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の車を機関銃で攻撃し、乗っていた兵士2人が死亡、複数が負傷した。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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スワイダー市のアイン・ザマーン寺院前に住民らが集まり、生活状況の改善を訴えて抗議デモ(2022年2月25日)

スワイダー県では、シリア人権監視団によると、スワイダー市のアイン・ザマーン寺院(ドゥルーズ派の寺院)本部前に住民らが集まり、生活状況の改善を訴えて抗議デモを行った。

スワイダー県ではスワイダー市などで2月6日から、政府がスマートカードを使用して食料品を入手している約50万世帯への支援を打ち切ったことに抗議するデモが断続的に行われている。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアレッポ県北部、ラッカ県北部を砲撃(2022年2月25日)

アレッポ県では、ANHA(2月25日付)によると、トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・リフアト市近郊のシャワーリガ村、シャワーリガ砦、アルカミーヤ村、マンナグ村、バイルーニーヤ村を砲撃した。

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ラッカ県では、ANHA(2月25日付)によると、トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアイン・イーサー市近郊のM4高速道路沿線、フーシャーン村を砲撃した。

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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シリア軍と「決戦」作戦司令室がラタキア県北部のクルド山地方のカッバーナ村一帯で砲撃戦(2022年2月25日)

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍と「決戦」作戦司令室が県北部のクルド山地方のカッバーナ村一帯で砲撃戦を行った。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のファッティーラ村、フライフィル村、スフーフン村、バイニーン村、カンスフラ村一帯、バーラ村を砲撃した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ヤードゥーダ村でシリア政府との和解に応じた反体制武装集団の元メンバーが何者かによって銃で撃たれて即死した。

 

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反3件(イドリブ県2件、ラタキア県0件、アレッポ県1件、ハマー県0件)確認したと発表した。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反3件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3167795246796543

AFP, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Ministry of Defence of the Russian Federation, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で115人、北・東シリア自治局支配地域で22人(2022年2月25日)

保健省は政府支配地域で新たに115人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者215人が完治し、3人が死亡したと発表した。

これにより、2月25日現在のシリア国内での感染者数は計54,275人、うち死亡したのは3,065人、回復したのは46,518人となった。

https://www.facebook.com/MinistryOfHealthSYR/posts/255934090047908

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北・東シリア自治局の保健委員会(保健省に相当)は、支配地域で新たに22人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、1人が死亡したと発表した。

これにより、2月25日現在のシリア国内での感染者数は計38,375人、うち死亡したのは1,552人、回復したのは2,555人となった。

新規感染者の性別の内訳は、男性14人、女性8人。

また地域の内訳は、ハサカ県のハサカ市6人、カーミシュリー市6人、マアバダ(カルキールキー)町5人、アームーダー市1人、アレッポ県のマンビジュ市1人、アイン・アラブ(コバネ)市3人。

https://www.facebook.com/smensyria/posts/1797023793820883

AFP, February 25, 2022、ACU, February 25, 2022、ANHA, February 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, February 25, 2022、Reuters, February 25, 2022、SANA, February 25, 2022、SOHR, February 25, 2022などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民393人と国内避難民(IDPs)2人が新たに政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は755,151人、2019年以降帰還したIDPsは105,883人に(2022年2月25日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報を公開し、2月24日に難民393人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民384人(うち女性115人、子供196人)、ヨルダンから帰国したのは9人(うち女性3人、子供5人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は755,151人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者357,474人(うち女性107,424人、子ども181,013人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者397,677人(うち女性119,356人、子ども202,830人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,829,838人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は984,431人(うち女性295,438人、子供501,765人)となった。

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一方、国内避難民2人が新たに帰宅した。

ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由して帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは2人、イドリブ県の「緊張緩和地帯」から帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所経由の帰還者のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は2人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は105,883人(うち女性41,477人、子供34,133人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,374,479人(うち女性424,036人、子供677,899人)となった。

https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3167794963463238

Ministry of Defence of the Russian Federation, February 25, 2022をもとに作成。

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