アサド大統領がBBCの独占インタビューに応じる(2015年2月10日)

BBCは、ジェレミー・ボウエン記者によるアサド大統領との単独インタビュー(https://www.youtube.com/watch?v=m_7GS40x1uA)を放映した。

SANA, February 10, 2015

SANA, February 10, 2015

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

(シリアは破綻国家になってしまったのか、との問いに対して)「政府と国家機関がシリア国民に対する義務を果たしている限りにおいて、破綻国家について語ることはできない」。

(2011年の反体制デモへの対応で間違いを犯したか、との問いに対して)「我々が間違った対応をしたと言ったことはない。誰でも間違いは犯すと言っているだけだ…。政策について話すことと、実践について話すことの間には…大きな違いがある。政策に立ち返ってみると、我々は最初にテロと戦うという決定を下し、国民レベルでの対話を行うという決定を下した。こうした政策は正しいと考えている。一方、実践面での間違えについて話すのであれば、一部の民間人に対していくつかの間違いが生じた。しばしばそうしたことが起き、こうした間違いに関して一部の人々が処罰を受けた…。誰でも間違いを犯すと言ったのだ。間違いを否定すれば、人間性を否定することになる」。

「当時(2011年前半)のことをあなた方は…「平和的デモが行われた時期」と言う…。だがあなたに言いたい。最初の数週間で、多くの警官が殺された。射殺されたのだ…。つまりそのようなことを話すことは幻想に過ぎないのだ。我々は事実について話さねばならない。最初からデモは平和的ではなかった。デモに参加した一部の人は民主主義を望んだ…。だがそれが一般的なものではなかった…。第2に、あなたはシリア全土で最大で1日に14万人もいた(デモに参加した)と言う…。100万人としてもいい。私が数を少なく見積もったと言うかもしれないが、そうではない…。100万人だとしても、シリアの人口2,400万人のうちの100万人は無に等しい」。

「いかなる戦争も悪しき戦争だ。いかなる戦争においても民間人の犠牲は出る…。しかしそれは政策ではない…。政治レベルで我々が何を決定したか? 既に述べたように、テロとの戦い、民間人保護を…決定したのだ…。我々が国民を殺している当事者だとしたら、なぜ我々は4年間も持ちこたえているのか?… 不可能なはずだ」。

「オバマ…は数ヶ月前に、彼らが言うところの「穏健な反体制派」に期待したり、依存することが幻想だと言った。そうしたことは夢想に過ぎない。これが現実だ…。西欧のメディアでさえ、ダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、アル=カーイダ系のメンバー、組織が拡大していると報じている。こうした状況は突然生じたのではない。穏健派が急進派に突然移行するなどというのは非論理的で、非現実的だ。彼らは同じ根を持っている…。なぜいわゆる穏健な反体制派は蒸発してなくなってしまったのか? 問題はそこにある」。

(親政府勢力が政権に反対する住民を選んで攻撃しているとのヒューマン・ライツ・ウォッチの報告に関して)「子供じみた話だ」。

(「樽爆弾」使用に関して)「私は軍を熟知している。彼らは銃弾、ミサイル、爆弾を使用する。軍が樽だの鍋だのを使うなどと聞いたことがない…。無差別兵器などない。発砲する場合には、標的があり、標的があるのなら、民間人を守るためテロリストに標準を合わせる。犠牲者について話すのなら、もう一度言おう、これは戦争だ。犠牲者のない戦争などあり得ない…彼ら(反体制武装集団)は迫撃砲でシリア人を攻撃している。これに対して報復し、国民を守らなければならない…。第2に、あなたは誰か、すなわち政府が国民を殺していると言うが、国民は政府を支持している…。あなたは現実について話さねばならない…。国民をテロリストから守るという義務を果たすことを止めろと我々に頼んでいるということか?」。

(化学兵器使用疑惑、塩素ガス使用疑惑に関して)「塩素ガスはシリアのどの工場、どの家にもあるし、世界のどこにでもある。それは軍事物資ではない…。(しかし)どんなものでも軍事転用できる…。第2に、もし我々が大量破壊兵器としてガスを使用したいと考えているのなら、あなたは数時間で数万人の犠牲者が出たといったことを話さねばならない。第3に、我々は通常兵器でそうしたことができたによって可能だった…。誰が誰に対してガスを使ったと誰が立証するのか?… 我々が決して化学兵器による攻撃はしていない。第2に、犠牲者の数はメディアが誇張したほどではなかった。大量破壊兵器でもなかった…。我々には分からない何かが使われた。なぜ分からないかというと、その場所にいなかったからだ」。

(米国が主導する有志連合との協力・同盟の是非に関して)「我々にはできないし、そうした意思もないし、望んでもいない。その理由はたった一つだ。我々はテロを支援する国と同盟を結ぶことはできないからだ…・有志連合を構成する国のほとんどが、テロを支援している…。第1に、ダーイシュやアル=カーイダ系組織のイデオロギーのルーツはワッハーブ主義で、それはサウジアラビア王家に支えられている。(サウジアラビアに責任があることは)当然で、疑問の余地はない」。

「彼ら(米国)が何を言おうと、我々が操り人形になることを意味しない…。我々は我々の国益に背き、彼らの国益のために活動するような操り人形にはならない…。(しかし)我々はいかなる国との協力にも反対はしない。なぜならこの紛争は我々が始めたのではなく…彼らが始めたからだ。彼らがテロリストを支援したのだ…。シリア国民に制裁が科されており…、それはシリアが孤立していることとはまったく異なっている」。

(米国など有志連合によるシリア空爆に関して)「(米国との)直接の協力はない…。第三者、イラクや他の国といった複数の当事者を通じて、メッセージ、すなわち全般的なメッセージが伝えられている。しかし戦術的なメッセージはない…。我々はそれ(有志連合による空爆)が始まる前からそのことを承知していた。しかし詳細については知らなかった…。しかし(米国との)対話はない。情報があるだけで、対話はない」。

(ダーイシュへの有志連合の空爆がシリア政府に資しているとではとの問いに関して)「この質問は、穏健派を排除するために我々がダーイシュを支援しているというあなたの前言と矛盾している。もし我々がダーイシュと対立しているのなら、我々はダーイシュを支援していない」。

(シリア政府が反体制派制圧地域への医薬品の供給などを制限しているとの主張に関して)「ヌスラ戦線に制圧された後に、ダーイシュに制圧されたラッカについて知っているか?… 現時点でも、我々は彼らに食糧、医薬品などすべてを送っている…。(人道支援が制限されているとバレリー・アモス人道問題担当事務次長が指摘するダマスカス郊外県東グータ地方に関して)まさにこの地域から毎日ダマスカスに砲撃がなされている…。彼らが武器を得ることを阻止できないのに、我々が彼らに食糧が手にすることを阻止できないというのか?… これはシリアに対して過去4年間行われてきたプロパガンダの一部だ…。彼らが言うことを検証すべきだ」。

(自身の進退に関して)「憲法、そして職業倫理に従うと、攻撃を受けた場合、逃げるのではなく、国を防衛するのが義務だ…。(夜眠れるかとの問いに対して)夜眠れなくする理由にどんなのものがあるだろう?… 個人的なものもあるし、仕事の場合もある…。私は人間だ。人間はいろんなことの影響を受ける…。我々は人間で、犠牲者とともに暮らし、毎日死という問題に直面している。もっとも愛する人を失った家族もいる。私も家族を失った。友人を失った。同僚を失った」。

なお英語全文はhttp://www.sana.sy/en/?p=28047を、またアラビア語訳文はhttp://www.sana.sy/%d8%a7%d9%84%d8%b1%d8%a6%d9%8a%d8%b3-%d8%a7%d9%84%d8%a3%d8%b3%d8%af-%d9%84%d9%80-%d8%a8%d9%8a-%d8%a8%d9%8a-%d8%b3%d9%8a-%d9%86%d9%8a%d9%88%d8%b2-%d8%b3%d9%88%d8%b1%d9%8a%d8%a9-%d9%84%d8%a7-%d8%aa.htmlを参照のこと。

BBC, February 10, 2015、SANA, February 11, 2015をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.