トルコ軍が地上部隊の約半分の兵力をシリア国境地帯に結集、「緩衝地帯」が目的か(2015年7月3日)

『ハヤート』(7月4日付)は、アレッポ県北部での戦闘激化を受け、トルコ軍が「困難な特殊任務以外に投入されることがないエリート部隊1個師団を含む地上部隊の約半分の兵力を対シリア国境地帯に派遣していると伝え、トルコ政府が国境地帯に「緩衝地帯」を設置しようとしているとの見方を示した。

この「緩衝地帯」は、ユーフラテス川西部のジャラーブルス市(トルコ側はカルカムシュ市)からアアザーズ市北部のバーブ・サラーマ国境通行所(トルコ側はキリス市)に至る全長約110キロ、幅30キロのアレッポ県北部一帯を想定しており、ダーイシュ(イスラーム国)とクルド人戦闘員の侵入を抑止することが目的だという。

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トルコのアフメト・ダウトオール首相は、「我々はトルコの安全保障を脅かす存在を国境地帯に望んでいない。しかし、我々はトルコとアレッポをつなぐ通路が閉鎖されることを望んでいない。なぜなら、閉鎖すれば、数十万の人々が飢えるか、トルコに難民として押し寄せるからだ」と述べた。

そのうえで、「トルコは国境防衛のため、対シリア国境において必要な治安対策を講じてきた…。トルコが安全保障上の脅威、ないしはトルコの治安を安全保障を脅かすような事態が生じたら、明日まで待つことはない」と強調した。

しかし、ダウトオール首相は「トルコが明日、ないしは近い将来にシリアに介入するなどと期待するのは無駄だ。こうした期待は予測以外の何ものでもない…一方的な軍事介入は提案されていない…。我々は冒険はしない。国民には安心してもらいたい」と述べた。

『ハヤート』(7月4日付、7月5日付)が伝えた。

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トルコのアフメト・ダウトオール首相は、「レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の子飼いで側近」(『ハヤート』(7月4日付)のヴェジュディ・キョニュル氏を国防大臣に任命した。

AFP, July 3, 2015、AP, July 3, 2015、ARA News, July 3, 2015、Champress, July 3, 2015、al-Hayat, July 4, 2015、July 5, 2015、Iraqi News, July 3, 2015、Kull-na Shuraka’, July 3, 2015、al-Mada Press, July 3, 2015、Naharnet, July 3, 2015、NNA, July 3, 2015、Reuters, July 3, 2015、SANA, July 3, 2015、UPI, July 3, 2015などをもとに作成。

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