『アフバール』(3月25日付)は、アサド大統領が「ロジャヴァ・北シリア民主連邦」樹立宣言に関して「幻想で何の価値もない」と述べた、と伝えた。
同紙によると、3月19日と20日にシリアの首都ダマスカスで開催された国際会議「抵抗(レジスタンス)選択支援アラブ・イスラーム会合:米シオニスト・タクフィールの攻撃に対抗する民族(ウンマ)」の出席者との懇談のなかで、アサド大統領は以下のように述べたという。
「テロの前には、テロとの戦いと勝利以外にはない。真の賭けとは、テロ組織との戦いで軍事的な決着をつけること、和解の論理を強化することだ。政体、その仕組みや形態、そしてその未来はシリア人だけが決める問題だ…。テロに対する勝利が、政治的解決への道を切り開く」。
「我々は政治的解決を信じている。しかし、この解決には、政策決定能力のある人々との対話が必要だ。カタール、トルコ、サウジアラビアによって牛耳られている反体制派には政策案がない。彼らはあらゆることで互いの意見が異なっている。だからこれらの反体制派との対話は無駄だ。彼らとの解決に賭けることはしない。我々は現在、こうした反体制派の「主人」との調整を行っているスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表と協議している。実質的な交渉はデミストゥラ氏と行っている」。
「真の解決策とは、テロ組織との戦いにおける取り組みを統合し、和解の論理を強化することのなかにある。テロとの対話はあり得ない。テロを軍事的に根絶することなくして解決策はない。その証拠に、これらのテロリストとの戦いは依然として続いている」。
「ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は歴史的な指導者であり、真の同盟者だ。我々は彼を大いに信頼している…。彼は軍事、政治において巧みに事態に対処してきた…。ロシア軍の撤退…、より正確に言うのであれば削減は、以前から調整されていた…。我が軍への軍事支援は最高レベルのものであり、空爆にかかる調整は依然として継続中だ」。
「我々が守っているシリアの砂粒一つをとってみても、それはシリア国民の財産なのだ。シリア分割を検討することはないし、その可能性、そしてその機会もない。(「ロジャヴァ・北シリア民主連邦」樹立宣言は)幻想であり、何の価値もない。一部のクルド人幹部の願望に関して言うと、彼らは幻想を抱いているだけか、シリアのクルド人の歴史的ありようの実態を知らないのだ…。シリアに対する外国の陰謀が頓挫したことを受け、米国とその同盟国はクルド問題に投資を試みたが、成功しないだろう…。連邦制が樹立宣言された地域においてさえ、クルド人は全体の23%しかいない。それゆえ連邦制は幻想なのだ」。
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しかし、大統領府は25日に声明を出し、『アフバール』(3月25日付)が報じた発言内容を否定した。
『アフバール』紙は親シリア政府系の新聞として知られている。
al-Akhbar, March 25, 2016、SANA, March 25, 2016をもとに作成。
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