『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月22日付)は、7月半ばに報じられたロシア軍によるシリア南東部の「新シリア軍」の拠点や避難民キャンプへでの空爆に関して、米国と英国の特殊部隊が使用していた施設を標的としたものだったと伝えた。
複数の米高官によると、ロシアは、米国に対してシリア領空でのさらなる協力を求めるための圧力をかけるかたちで、6月16日と7月12日に米英の特殊部隊の拠点に対して攻撃を行ったという。
また同消息筋によると、ロシア空軍による6月16日の空爆が行われる前日、ヨルダン国境から16キロの地点に位置する拠点から英国の特殊部隊が撤退し、その後、同地はクラスター爆弾の空爆を受けたという。
また7月12日の空爆は、CIAの支援を受けた反体制武装集団が使用していたタンフ国境通行所近くのキャンプが標的となったという。
こうしたロシア空軍の空爆に対して、米大統領府および国務省は、ことを荒立てることを回避することを決し、これを受け、ジョン・ケリー米国務長官は、ロシア側とシャームの民のヌスラ戦線の拠点を空爆することで合意したという。
この合意は、ロシア軍が米国の支援を受ける反体制武装集団の空爆やシリア軍による空爆を停止することの見返りとして、米国がロシアの国際的孤立を回避することを骨子としていたという。
なお、6月16日の空爆に関して、米国防総省高官は6月17日、ロシア軍戦闘機がヒムス県東部とイラクの国境地帯のタンフ国境通行所近郊で、米国をはじめとする欧米諸国が教練・武器兵站支援を行っている「反体制派」に対して複数回にわたって空爆を実施し、犠牲者が出たと発表していた。
また7月12日(ないしは13日)の空爆は、各紙によると、ダルアー県内のヨルダン国境に近い避難民キャンプが標的となり、少なくとも12人が死亡、数十人が負傷した。
AFP, July 22, 2016、AP, July 22, 2016、ARA News, July 22, 2016、Champress, July 22, 2016、al-Hayat, July 23, 2016、Iraqi News, July 22, 2016、Kull-na Shuraka’, July 22, 2016、al-Mada Press, July 22, 2016、Naharnet, July 22, 2016、NNA, July 22, 2016、Reuters, July 22, 2016、SANA, July 22, 2016、UPI, July 22, 2016、The Wall Street Journal, July 22, 2016などをもとに作成。
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