デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表は、反体制派が籠城を続けるアレッポ市東部の自治を提案するも、シリア政府は「テロリストへの報償」と反論、これを全面拒否(2016年11月20日)

スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表はシリアの首都ダマスカスを訪問し、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣(兼副首相)と会談し、紛争の政治的解決に向けた対話(ジュネーブ会議)再開の是非について意見を交わした。

SANA(11月20日付)によると、会談で、ムアッリム外務在外居住者大臣は、シリア政府が前提条件と外国の干渉のないかたちで対話を再開することが肝要だとの見解を示した。

同時に、「テロとの戦い」、住民の保護、テロ組織が国民にもたらしている苦難を軽減するための人道支援に向けて、シリア政府が努力を継続していると表明、国連に対して「テロとの戦い」にかかる諸決議やとりきめに準じて、これを後押しするよう求めた。

会談には、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣、アフマド・アルヌース顧問が同席した。

SANA, November 20, 2016

SANA, November 20, 2016

ムアッリム外務在外居住者大臣は会談後に記者会見を開き、反体制武装集団が籠城を続けるアレッポ市東部の市民救済がシリア国家の義務だと位置づけた。

また、デミストゥラ氏が会談で、アレッポ市東部を反体制派の自治下に置くことを提案したことを明らかにしたうえで、この構想については、「我々はアレッポ市東部からのテロリストの退去に合意しているが…、27万5,000人もの死人が5~7,000人ほどの戦闘員の人質になっていることは尋常ではない…。そんなことを認める政府はどこもない」と主張、それが「テロリストへの報償」になりかねないとして全面拒否した。

なお、デミストゥラ氏は先週、『ガーディアン』紙とのインタビューのなかで、シリア政府が、シャーム・ファトフ戦線の退去を条件に、アレッポ市東部における反体制派の自治を承認する意向を示していると述べていた。

SANA, November 20, 2016

SANA, November 20, 2016

AFP, November 20, 2016、AP, November 20, 2016、ARA News, November 20, 2016、Champress, November 20, 2016、al-Hayat, November 21, 2016、Iraqi News, November 20, 2016、Kull-na Shuraka’, November 20, 2016、al-Mada Press, November 20, 2016、Naharnet, November 20, 2016、NNA, November 20, 2016、Reuters, November 20, 2016、SANA, November 20, 2016、UPI, November 20, 2016などをもとに作成。

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