ロシアとトルコがアスタナ会議(和平協議)に向け、シリア政府とシャーム自由人イスラーム運動、イスラーム軍といったイスラーム過激派との停戦合意に向けた折衝を続ける(2016年12月28日)

トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣が首都アンカラで記者団に対して、トルコとロシアがシリア国内での停戦合意を策定したと述べた。

ロイター(12月28日付)などが伝えた。

チャヴシュオール外務大臣は「シリアでの問題解決に関して二つの文書が用意されている。一つは政治的解決に関する文書、もう一つは停戦に関する文書だ。両文書はいつでも履行可能だ」と述べたうえで、「全世界は、アサドがいるなかで政治的移行は行い得ないということを承知している」と付言した。

アナトリア通信(12月28日付)はこれに関連して、ロシアとトルコがシリア全土における停戦案で合意に達したと伝えた。

しかし、ロシア政府、シリア政府、そしてイラン政府はこれに関して何のコメントも出さなかった。

『ハヤート』(12月29日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)によると、アレッポ市東部からの反体制武装集団戦闘員とその家族の退去について協議するかたちで、12月初めにトルコとロシアの仲介によりって開始されたシリア政府と反体制武装集団の間接交渉では、4ページ11項目からなる停戦合意文書がロシア側から提示されていたという。

主な内容は以下の通り:

1. 国連安保理決議第2254号に基づくシリア危機の包括的解決と政治プロセス開始。
2. シリアの主権尊重、国土統一、流血停止。
3. 12月27日深夜(28日未明)にシリア政府および反体制派は攻撃を停止し、そのうえで停戦の基準、仕組みの詳細を確定する。なお、ダーイシュ(イスラーム国)とシャーム・ファトフ戦線は停戦対象から除外する。
4. シリア軍および親政権武装勢力と、反体制派の展開地域を示した地図を交換し、展開地域を画定する。
5. 上記地図に基づき、シャーム・ファトフ戦線の支配地域とされた地域から停戦合意に応じた反体制派が退去、その見返りとしてロシア、シリア両軍は反体制派支配地域への空爆を停止する。
6. 停戦違反特定、停戦監視、停戦違反への処罰の仕組みを確定する。
7. 停戦徹底のための猶予期間後に、シリア政府と反体制派信頼醸成措置を実施、反体制派支配地域からの負傷者搬出、同地域への人道支援物資搬入、物資の移送の自由を保障する「合同人道経済特区」の設置などを実施する。
8. 停戦合意を締結したロシアとトルコの保障のもと、反体制派支配地域の自治を担う地元評議会メンバーを住民のなかから選出する。

この原案に対して、シリア、イラン両政府は、以下の修正を提案したという。

1. 反体制派に「正統性」を付与しないため、「選出」という用語を削除する。
2. 物資移送の自由を認めず、反体制派支配地域に移送される物資を人道支援物資に限定する。
3. 「反体制諸派」という文言を「武装集団」に変更する。
4. シャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍を「テロ組織」とみなし、停戦から除外する。

これに対して、ロシアは、現下の交渉に参加しているシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍の排除には応じなかったという。

また反体制派は、以下の変更を求めたという。

1. 「反体制諸派」という文言の「レジスタンス」への変更
2. 「ダーイシュとシャーム・ファトフ戦線を停戦対象から除外する」との文言からの「シャーム・ファトフ戦線」の削除。
3. シャーム・ファトフ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなる反体制武装集団とシリア軍との間で激化しているダマスカス郊外県アイン・フィージャ町、イスラーム軍の本拠地ドゥーマー市を擁する東グータ地方などでの停戦の保障。
4. シリア軍による支配地域拡大禁止。

なお、トルコの首都アンカラで行われている間接交渉に参加する反体制武装集団は、シャーム自由人イスラーム運動、イスラーム軍、ヌールッディーン・ザンキー運動、ムジャーヒディーン軍などから構成されているという。

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イランのホセイン・ホセイン・ダフカーン国防大臣は、RT(12月28日付)のインタビューに応じ、2016年1月にカザフスタンの首都アスタナで開催予定のシリア政府と反体制派の和平協議(アスタナ会議)に向けて、ロシアとトルコが発効をめざしている停戦に関して「真の保障」が必要としたうえで、①「穏健な反体制派」と「テロ組織」を峻別し、②ダーイシュ(イスラーム国)、シャーム・ファトフ戦線、およびそれに類するテロ組織に対する戦いを継続すること、③すべての当時者がテロリストへの政治面、資金面、軍事面での支援停止を誓約することを主唱した。

また、『ハヤート』(12月29日付)は、イランのモハンマド・ジャワード・ザリーフ外務大臣がトルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣と電話会談を行い、シリア情勢への対応について意見を交わした。

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シャーム自由人イスラーム運動の政治部門を統括するミニール・サイヤール氏はロイター(12月28日付)の取材に対して、停戦合意が成立するかを断定するには時期尚早だとしたうえで、ロシアが停戦対象地域からダマスカス郊外県グータ地方東部を除外しようとしていると非難した。

同地は、イスラーム軍などの反体制武装集団が本拠地とするドゥーマー市を含んでいる。

AFP, December 28, 2016、Anadolu Ajansı, December 28, 2016、AP, December 28, 2016、ARA News, December 28, 2016、Champress, December 28, 2016、al-Hayat, December 29, 2016、Iraqi News, December 28, 2016、Kull-na Shuraka’, December 28, 2016、al-Mada Press, December 28, 2016、Naharnet, December 28, 2016、NNA, December 28, 2016、Reuters, December 28, 2016、SANA, December 28, 2016、UPI, December 28, 2016などをもとに作成。

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