アムネスティ・インターナショナルは84人の証言とHRDAGのデータをもとに、シリア政府側の刑務所で過去5年弱の間に1万7,000人が処刑されたと指摘(2017年2月7日)

アムネスティ・インターナショナルは、ダマスカス郊外県にあるダマスカス中央刑務所(サイドナーヤー(軍事)刑務所)での市民に対する殺戮、拷問などについての実態をまとめた報告書「Human Slaughterhouse: Mass Hangings and Extermination at Saydnaya Prison, Syria」(https://www.amnesty.org/download/Documents/MDE2454152017ENGLISH.PDF)を発表した。

48ページからなる報告書は、2015年12月から2016年12月にかけて、アムネスティ・インターナショナルが行った、サイドナーヤー刑務所での虐待行為のパターン、方法、規模に関する調査に基づくもの。

Amnesty International, February 7, 2017

Amnesty International, February 7, 2017

同刑務所で拘置されていたという31人、刑務所に勤務していたという職員・守衛4人、元判事3人、ティシュリーン軍事病院に勤務していたという医師3人、シリアでの拘置に詳しいシリア国内外の専門家17人、刑務所に収監中だとされる拘置者の家族22人、合計84人の証言をもとに作成された。

アムネスティ・インターナショナルはシリア国内のシリア政府支配地域への立ち入りを禁止されているため、上記の証言聴取は主にトルコ南部で行われるとともに、その一部はレバノン、ヨルダン、欧州諸国、米国で行われた。

アムネスティ・インターナショナルは、独自の調査結果ではなく、HRDAG(Human Rights Data Analysis Group、https://hrdag.org/)のデータを引用するかたちで、「アラブの春」がシリアに波及した2011年3月から2015年12月までの期間に、少なくとも1万7,723人が、サイドナーヤー刑務所をはじめとするシリア政府管理下の刑務所・拘置所で殺害されたと指摘した。

殺害されたのは、シリア社会のさまざまなセクターに属す人々で、その多くがデモ参加者、政治犯、人権活動家、ジャーナリスト、人道支援活動家、学生だったという。

AFP, February 7, 2017、AP, February 7, 2017、ARA News, February 7, 2017、Champress, February 7, 2017、al-Hayat, February 8, 2017、Iraqi News, February 7, 2017、Kull-na Shuraka’, February 7, 2017、al-Mada Press, February 7, 2017、Naharnet, February 7, 2017、NNA, February 7, 2017、Reuters, February 7, 2017、SANA, February 7, 2017、UPI, February 7, 2017などをもとに作成。

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