アサド大統領はフランスのTF1テレビとEurope 1ラジオの合同インタビューに応じる「テロと戦わなければ、私は殺人者になる。なぜならテロリストにシリア人を殺すのを許すことになるからだ」(2017年2月16日)

アサド大統領は首都ダマスカスでフランスのTF1テレビとEurope 1ラジオの合同インタビューに応じた。

インタビューは英語で行われ、その映像(https://www.youtube.com/watch?v=IZNbw52fYsE&feature=youtu.be)、全文(http://sana.sy/en/?p=100367)、アラビア語訳(http://www.sana.sy/?p=510645)はSANAが配信した。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, February 16, 2017

SANA, February 16, 2017

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「我々はシリア全土でテロリストを打ち負かなければ、戦争に勝ったとは言えないと考えている。(アレッポ解放は)テロ撲滅への道のりの…重要な一歩ではあるが、たった一つの理由ゆえに長い道のりになると考えている。なぜなら、フランス、英国といった西側諸国、トルコ、サウジアラビア、カタールといった地域諸国からテロリストが今も支援を受けているからだ」。

「我が国で機関銃を手にして、人々を殺し、財産を破壊する人間は誰であれテロリストだ。これは国際法における理解であって、我々の理解ではない。一方、武器を棄てたいと考える者は、法律に従えば、テロリストではない。フランス国民、ないしは欧州の人々がダーイシュ(イスラーム国)について懸念するとき、私は事態に対する誤解があると考えている。ダーイシュは問題そのものではなく、産物だということだ。問題なのは、ダーイシュのイデオロギーであり、それはシャームの民のヌスラ戦線、そしてそのほかの組織のものと同じだ…。だから、ダーイシュやヌスラだけでなく、これらのテロリストについて懸念すべきだ。彼らは、彼らのイデオロギーがすべきたということ、おもにテロ行為を実行するのだ…。ダーイシュとそれ以外の組織は違わない…。法律に従えば、これらすべてのテロリストが敵だ」。

「(ダーイシュと「あなたの体制」の双方を悪だと見る西側の人々に関して)まず、我々は体制ではなく、国家、機関だ。第2に、西側の大手メディアや政界がシリア政府、シリア軍を悪とみなしているだけだ。なぜなら、彼らは、「穏健派」がアル=カーイダやダーイシュと同根であることを認めようとせずに、「穏健派」を支持してきたからだ…。そもそも、西側は私とダーイシュのどちらかを選ぶ必要などない。シリア国民が選ぶからだ。なぜなら、それはシリア国民の問題だ」。

「戦争に勝つために何でもしてよいという訳ではなく、合法的ことをしてよいだけだ…。アムネスティ・インターナショナルの(サイドナーヤー刑務所での虐待についての)報告は疑惑に基づいていて、何の証拠もない。そもそも彼らは1万3,000人とは言っていない。5,000人から1万3,000人と言っていて、その数の半分が疑わしく、不正確だ…。犠牲者とされる人物の36人しか氏名が示されていない…。我々は(シリア国内の刑務所の調査をするのではなく)疑惑に基づくレポートを出したアムネスティ・インターナショナルそのものを調査する必要があると考えている。それは恥ずべき行為だ。まったく不公平で偏ったこうした組織にとっての恥だ」。

「独立以来、我々は処刑を行っているが、それはシリアの法の一部だ」。

「フランスの政策は、(危機発生の)初日からシリアのテロリストを支援するというもので、我が国における殺戮に対して直接の責任を負っている」。

「現在までのところ、テロリストは戦争に勝利してはいない。だが、彼らはシリアを破壊し、数十万のシリア人を殺害した。だから、私は自分が戦争に勝ったなどとは言えない」。

「我々は場合によって、(フランスの治安当局)と間接的に接触してきた…。シリアに(フランスの)議員が訪れたとき、使節団のなかに治安関係者がいた」。

「(ドナルド・トランプ大統領によるシリアなど7カ国からの入国規制に関して)何よりもまず、それはシリア国民に対するものではなく、西側への移民のなかに入り込んだテロリストに対するものだ…。だから、私はトランプ大統領にはこうしたテロリストの入国を阻止しようとする意図があるのだと考えている」。

「私はシリア人が外国に向かうことを嬉しくは思わない。シリアに戻ってきたときに嬉しいと感じるだろう。なぜなら彼らはシリアへの帰国を望んでいるからだ。大多数のシリア人はテロや西側の制裁が理由で去った。だから…、私はトランプ大統領や西側諸国に制裁を解除し、テロ支援を止めるよう求めたい…。そうすれば彼らは問題を抱えることなどないだろう。彼らは移民に混じったテロリストに対処する必要もないだろう…。もう一つの重要なポイントは、トランプ大統領の決定に関するすべての騒動は、彼らがシリア人のことを心配しているからではなく…、彼らは、我々の問題や紛争を利用して、トランプ大統領に対する戦いの火に油を注ごうとしているだけだ」。

「西側諸国は世界により深く関与したほうがよい。これは我々だけの考えではなく、ロシアもそう考えている。ロシアは諸外国にテロとの戦いや政治プロセスを支援するよう呼びかけている。だが、西側諸国は自らを隔離している。西側諸国はアスタナ会議をはじめとするあらゆるイニシアチブに対して消極的過ぎる」。

「我々は国民を守るためにテロリストと戦っている。これは私個人の意見ではなく、憲法と法律に基づく義務だ。テロと戦わなければ、私は殺人者になるだろう、なぜなら、そうすることで、テロリストがシリアでより多くのシリア人を殺すのを許すことになるからだ」。


AFP, February 16, 2017、AP, February 16, 2017、ARA News, February 16, 2017、Champress, February 16, 2017、al-Hayat, February 17, 2017、Iraqi News, February 16, 2017、Kull-na Shuraka’, February 16, 2017、al-Mada Press, February 16, 2017、Naharnet, February 16, 2017、NNA, February 16, 2017、Reuters, February 16, 2017、SANA, February 16, 2017、UPI, February 16, 2017などをもとに作成。

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