ダマスカス県のバーブ・サギール地区で2回の爆弾テロが連続して発生し、40人が死亡、約120人が負傷した(死者はその後74人に増加)。
バーブ・サギール地区には、第4代正統カリフの娘のウンム・クルスーム、サハーバの一人でムアッズィンのビラール・ハバシーらの墓があり、シーア派(12イマーム派)の巡礼地として知られている。
事件に関して、シリア人権監視団は、2回の爆発のうちの1回は、イラク人巡礼者(シーア派)を狙った自爆テロで、もう1回は即席爆弾か自爆テロかは不明だと発表した。
しかし、犯行現場を視察したムハンマド・シャッアール内務大臣は報道声明で、調査の結果、爆発が、観光バス2台に仕掛けられた爆発物によるもので、アラブ人訪問者(巡礼者)や通行人を狙ったものだったことが明らかになったと述べる一方、引き続き真相究明を続けると付言した。
また、SANA(3月11日付)によると、2件の爆弾テロのほか、関係当局はバーブ・サギール地区の現場近くに駐輪されているバイクに仕掛けれていた爆発物を発見し、撤去したという。
なお、マナール・チャンネル(3月11日付)によると、犠牲になった巡礼者は、墓地群を巡礼後、旧市街のサイイダ・ザイナブ・モスクでの礼拝を予定していたという。
また、2回の爆発は約10分の間隔を置いて起こるいわゆる「ダブル・タップ」で、2度目の爆発は、事件現場で救出作業を行う多数の消防隊員が犠牲になったという。
犯行声明は11日現在出ていない。
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シリア外務在外居住者省は、国連事務総長および安保理議長に書簡を送り、事件の詳細を報告、事件を含むテロ攻撃と残虐な犯罪、アル=カーイダやダーイシュ(イスラーム国)とつながりのある諸外国の政府や組織によるテロ支援を非難した。
また、国連に対して、トルコ、サウジアラビア、カタール、一部西側諸国などによるテロ支援の停止を求めた。
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フランス外務省は声明を出し、11日に首都ダマスカス県バーブ・サギール地区で発生した巡礼者を狙った連続爆破テロに関して、「これまで以上にシリア国内で停戦合意を尊重する火急の必要が生じている」と発表した。
ロイター通信(3月12日付)が伝えた。
AFP, March 11, 2017、AP, March 11, 2017、ARA News, March 11, 2017、Champress, March 11, 2017、al-Hayat, March 12, 2017、Iraqi News, March 11, 2017、Kull-na Shuraka’, March 11, 2017、al-Mada Press, March 11, 2017、Qanat al-Manar, March 11, 2017、Naharnet, March 11, 2017、NNA, March 11, 2017、Reuters, March 11, 2017、March 12, 2017、SANA, March 11, 2017、UPI, March 11, 2017などをもとに作成。
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