アサド大統領がダルアー県やラタキア県の使節団と面会、ヒムス県内の治安作戦は継続(2011年5月8日)

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反体制勢力の動き

ダマスカス国民民主変革宣言事務局は声明を出し、国民のデモ継続を呼びかけた。

シリア政府の動き

SANA(5月8日付)によると、アサド大統領はダルアー県の青年らからなる青年使節団、ラタキア県使節団と個別に会談し、国内情勢やその対応策などについて意見を交換した。

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シリア・アラブ・テレビ(5月8日付)は、バーニヤース市で逮捕されたという「武装テロ集団」メンバーらの自供を放映した。

メンバーたちは、武器を購入するための資金を外国から得て、デモに乗じて、ダルアー市近郊のサイダー町の軍の住宅を攻撃したことを明らかにした。

またシリア・アラブ・テレビは、外国の衛星テレビ局からデモに関して偽の証人をするよう求められたと証言するヒムス市の青年の映像を放映した。

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内務省は声明を出し、各県で「暴動」に参加したとして投降した市民の数が915人に達したと発表、こうした行為を繰り返さないと誓約し、全員がただちに釈放されたと発表した。

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SANA(5月8日付)によると、ダマスカス県の米大使館前で米国の干渉に異議を唱えるデモが行われ、若者数百人が参加した。

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SANA(5月8日付)は、タルトゥース県の住民が、シリア国内の治安と安定を揺るがそうとするジャズィーラ、アラビーヤ、BBCなどの衛星テレビ局の告訴を求める請願書を準備していると伝えた。

国内の暴力

SANA, May 8, 2011

SANA, May 8, 2011

ヒムス県では、ロイター通信(5月8日付)によると、軍・治安部隊がヒムス市のカラム地区など住宅地区に突入し、市内各所では、機関銃や迫撃砲の発砲音が鳴り響いた。

活動家の一人によると、この突入で、カースィム・ズハイル・アフマドくん(12歳)を含む複数の市民が銃弾を受けて死亡した。

これに関して、シリア人権監視団は声明を出し、バーブ・スィバーア地区、バーブ・アムル地区、タッル・シュール地区に土曜日夜から日曜日にかけて戦車と兵士が突入し、少なくとも民間人1人が殺害されたと発表した。

同声明によると、ヒムス市内の各地区は完全に包囲され、死傷者数も増加、電話、電気も断続的に途絶えているという。

またアフバール・シャルク(5月8日付)によると、タッルカラフ市での軍・治安部隊による治安維持活動で負傷した市民2人がレバノンの北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方に搬送された。

これに関連して、『ワタン』(5月8日付)は、軍がレバノンに逃亡しようとする武装集団を追跡していると報じた。

一方、SANA(5月9日付)は、シリア人労働者らを乗せてイドリブ県、ハマー県に向かっていた旅客バスが「武装集団」の攻撃を受け、乗っていた10人が死亡、3人が負傷したと伝えた。

またヒムス市の軍病院で、「武装集団」によって殺害された警官3人(6日に死亡)の葬儀が行われた。

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ダルアー県では、ロイター通信(5月8日付)によると、軍・治安部隊が戦車8輌とともに日曜日早朝、タファス市、ダーイル町に突入し、若者らを逮捕し、また少なくとも男性1人を射殺した。

活動家によると、「彼ら(軍・治安機関部隊)は数百人の指名手配者の氏名が書かれたリストを持っており、村々を完全に包囲している」という。

同市では6日、周辺の村々の住民数千人が集まり、体制打倒を求めるシュプレヒコールを連呼していた。

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タルトゥース県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、バーニヤース市で「電話回線、電気、水道が遮断され」、同市は「外界から孤立し、抗議行動の中心地だった市の南側の地区は、屋上に狙撃兵が集中的に配置された」。

またアブドゥッラフマーン代表によると、「日曜日(8日)には、海岸地区に複数の戦車が展開し、市の南側の地区では、予め用意された容疑者リストに従って逮捕が行われた」という。

同監視団によると、バーニヤース市内各所での弾圧による犠牲者は、民間人6人にのぼり、少なくとも200人が逮捕され、そのなかには10代の子供や、街頭で負傷者の治療にあたっていた女医もいるという。

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ハサカ県では、シリア言論犯擁護機構によると、カーミシュリー市でアクラム・フサイン氏が逮捕された。

アラビーヤ・チャンネルにインターネットを通じて連絡し、同市でのデモに関するニュースに出演した出演したことが理由だという。

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ハマー県では、SANA(5月8日付)は、ミスヤーフ郡ラクバ村では、ヒムス市での任務中に殺害された同村出身の兵士の葬儀が行われた。

AFP, May 8, 2011、Akhbar al-Sharq, May 8, 2011, May 9, 2011、Elaph.com, May
8, 2011、al-Hayat, May 9, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 8, 2011、Reuters, May
8, 2011、SANA, May 8, 2011、al-Watan, May 8, 2011をもとに作成。

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