シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構の「タカ派」が指導部との対立の末に辞任、「穏健な反体制派」への転身の布石か?(2019年2月2日)

ドゥラル・シャーミーヤ(2月2日付)は、シリアのアル=カーイダと目されているシャーム解放機構の幹部の一人でシューラー評議会メンバーのアブー・ヤクザーン・ミスリー氏(シャリーア学者)が辞任したと伝えた。

同サイトによると、辞任は指導部との意見対立が原因で、指導部はミスリー氏に対して命令に従うよう最期通告、これを受けてミスリー氏は辞表を提出、指導部はこれを受理したという。

シャーム解放機構は最近になって、司令部がメディアを通じて発出した規則に従うようメンバーに通達していたが、ミスリー氏はこれに従わなかったという。

一方、『ハヤート』(2月3日付)は、「自由シリア軍」消息筋の話として、ミスリー氏を組織内の「タカ派」だったとしたうえで、シャーム解放機構が「穏健な反体制派」への再編を画策するなかでの出来事だと伝えた。

同消息筋(匿名)によると「ミスリー氏の解任は望ましくない過激派を排除する同様の動きを伴い、シリア政府の支配が及ばないイドリブ県やシリア北西部の地域におけるシャーム解放機構の支配拡大が促進されるだろう」という。

なお、『ハヤート』によると、ミスリー氏は、トルコの傘下に入ったアル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動のメンバーへの攻撃、トルコが計画しているシリア北東部ユーフラテス川以東地域への侵攻作戦への「自由シリア軍」参加禁止など、「物議を醸し出すファトワー」を発していた。

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また、ドゥラル・シャーミーヤによると、同じくシャーム解放機構の幹部の一人でシューラー評議会メンバーのアブー・マーリク・タッリー氏も辞任したと伝えられた。

しかし、シャーム解放機構のシューラー評議会のメンバーのアブー・ファトフ・ファルガリー氏、アブー・マーリヤ・カフターニー氏は、テレグラムのアカウントを通じて、タッリー氏の辞任報道を否定した。

AFP, February 2, 2019、ANHA, February 2, 2019、AP, February 2, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 2, 2019、al-Hayat, February 3, 2019、Reuters, February 2, 2019、SANA, February 2, 2019、UPI, February 2, 2019などをもとに作成。

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