当局はダルアー県の集団墓地に関する報道を「捏造である」として否定、米国務長官はシリアへの追加制裁実施の可能性を示唆(2011年5月17日)

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シリア政府の動き

アサド大統領は、マンスール・アッザーム大統領府担当大臣をナクバの日の犠牲者追悼担当に任命した。

SANA(5月17日付)が伝えた。

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SANA(5月16日付)は、内務省筋の話として、各地で投降した暴動参加者の数が8,881人に達したと報じた。

彼らは恩赦に基づき、投降後ただちに釈放されたという。

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SANA(5月16日付)によると、ヒムス市で、16日にダイル・バアルバ街道で武装テロ集団に射殺された警官2人の葬儀が行わた。

国内の暴力

シリア・アラブ・テレビ(5月17日付)は、シリア内務省高官の話として、16日に一部メディアが伝えたダルアー県での集団墓地に関する報道について、「煽動ねつ造キャンペーンの一環」だと否定した。

また、SANA(5月17日付)は、15日にダルアー市バハール地区で何者かに殺害された遺体5体(アバーズィード家の子息)が発見されていたと伝えた。

これに関して、シリア人権監視機構のアンマール・カルビー代表は、ダルアー市で発見された遺体が16日に発見された集団墓地とは無関係だとしたうえで、集団墓地が2カ所に及び、遺体24体が遺棄されていたと主張した。

また、アバーズィード家の子息5人の遺体に関しては、農夫が別の場所で発見した遺体7体のうちの身元が判明した5体であると付言した。

しかし、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、アバーズィード家の子息5人が遺棄されていた集団墓地以外に発見された集団墓地はないとカルビー代表の主張を否定した。

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ダルアー県では、『ハヤート』(5月18日付)によると、ハウラーン地方に軍の戦車が進軍した。

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タルトゥース県では、『ハヤート』(5月18日付)によると、治安当局がバーニヤース市の反体制デモの主導者たち逮捕に向けて追跡活動を続けた。

またシリア人権監視団は声明を出し、バーニヤース市で抗議行動を指導してきたアナス・シャグリー氏が当局によって12日に逮捕されたことを確認したと発表した。

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ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(5月18日付)によると、サクバー市で未明に夜間デモが行われ、数千人が参加、体制打倒を訴えた。

デモは4月にデモ参加中に死亡したアフマド・アティーヤ氏(26歳)の葬儀がエスカレートして発生したという。

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ヒムス県では、住民らによると、タッルカラフ市で軍が包囲を続け、活動家の逮捕摘発活動・弾圧を大なった。

一方、SANA(5月17日付)は、内務省高官筋によると、タッルカラフ市で治安部隊のパトロール隊が武装テロ集団の襲撃を受け、士官1人と兵士4人が死亡したと報じた。

また、タッルカラフ市、ダルアー県郊外での武装テロ集団の追撃で、軍・治安部隊の兵士8人が死亡したという。

レバノンの動き

『ナハール』(5月17日付)は、レバノン当局が、ヒムス県タッルカラフ市からレバノン領内に逃走したシリア軍兵士3人の身柄をシリア当局に引き渡した。

うち1人は、負傷し、既に死亡しているという。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、ワシントンでキャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表と会談した。

会談後、クリントン国務長官は「シリアでの抗議行動弾圧に対して近く追加措置がとられるだろう」と述べた。

またシリアが「同盟国であるイランのもっとも悪しき戦術を採用している」と非難、アサド大統領が「改革について言及したもの、野蛮な弾圧は彼の真意を示している」と述べた。

一方、ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は「シリア政府にとって、路線を変え、弾圧を停止し、シリア国民の要求を採用するための余地は限られている」と述べ、「追加措置」を科すことを示唆した。

他方、アシュトン上級代表は、国際社会が「あらゆる選択肢を検討している」としたうえで、「シリア政府の行動は急務である」と弾圧停止を求めた。「近々に追加措置をとる」と述べた。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、安保理においてシリア非難を支持する多数派が「形成されている」が、ロシアと中国の拒否権発動の恐れが依然としてある、と批判した。

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外交筋によると、EU加盟17カ国の大使がブリュッセルで会合を開き、アサド大統領本人などへの制裁の可能性などを検討した。

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イスラエル警察は声明を出し、15日の越境デモで領内(占領地内)に侵入していたパレスチナ人4人を逮捕したと発表した。

AFP, May 17, 2011、Akhbar al-Sharq, May 17, 2011、al-Hayat, May 18, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 17, 2011、Naharnet, May 17, 2011、Reuters, May 17, 2011、SANA, May 17, 2011などをもとに作成。

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