シリア・ロシア軍はイドリブ県などに対して286回の爆撃を実施、「樽爆弾」175発を投下、砲弾1,285発を撃ち込み、ハマー県北部のカフルヌブーダ町を再制圧(2019年5月26日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンでは、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから27日目となる5月26日も、シリア・ロシア軍が爆撃を実施、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が激しく交戦した。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より94人(民間人12人、シリア軍兵士37人、反体制武装集団戦闘員45人)増えて814人となった。

うち、236人が民間人(女性46人、子供47人を含む)、578人がシリア軍兵士(269人)および反体制武装集団戦闘員(309人)。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は220回、投下した「樽爆弾」の数は175発を記録、ロシア軍も46回の爆撃を実施した。

また、シリア軍地上部隊が発射した砲弾は1,285発以上にのぼった。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でフバイト村に42回、ハーン・シャイフーン市およびその一帯に28回、アービディーン村に10回、ナキール村に7回、ヒーシュ村に7回、カッサービーヤ村に5回、スフーフン村に5回、カフルサジュナ村、シャイフ・ムスタファー村、ウンム・ザイトゥーナ村、マアッラト・ヌウマーン市、フライフィル村、タッルアース村にそれぞれ3回の爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでフバイト村に「樽爆弾」42発を、ハーン・シャイフーン市およびその一帯に10発、ファッティーラ村に8発、カッサービーヤに8発、シャイフ・ムスタファー村に7発、ナキール村に3発、マルダム村、マアッラト・スィーンにそれぞれ2発投下した。

シリア軍地上部隊も県南部、シャフシャブー山一帯を砲撃した。

ロシア軍戦闘機もフバイト村、ハーン・シャイフーン市およびその一帯、マルダム村、ファッティーラ村、ミラージャ村、カフルムース村、バアルブー村、アルマナーヤー村、トゥラムラー村、カフルサジュナ村、シャイフ・ダーミス村に爆撃を実施した。

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ドゥラル・シャーミーヤ(5月26日付)によると、シリア軍はハーン・シャイフーン市、アービディーン村に対する爆撃で白リン弾を使用したという。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカフルヌブーダ町に79回、カフルズィーター市に3回の爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでカフルヌブーダ町に「樽爆弾」91発、カフルズィーター市に2発を投下した。

シリア軍地上部隊も県北部のガーブ平原などを砲撃、カフルヌブーダ町だけで710発以上の砲弾を撃ち込んだ。

ロシア軍戦闘機もカフルズィーター市に爆撃を実施した。

この攻撃により、SANA(5月26日付)、ANHA(5月26日付)などによると、シリア軍はカフルヌブーダ町を完全制圧し、同地から反体制武装集団を一掃した。

シリア軍は5月8日にカフルヌブーダ町を制圧していたが、その後、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構、トルキスタン・イスラーム党、イッザ軍、そしてトルコの支援を受ける国民解放戦線による反撃を受け、10日に同地の70%を喪失し、一進一退の攻防を続けていた。

一方、ドゥラル・シャーミーヤ(5月26日付)、反体制武装集団はカフルヌブーダ町などでシリア軍の戦車、装甲車輌などを破壊、SANAによると、シリア政府支配下のスカイラビーヤ市、ムハルダ市を砲撃し、住民2人が負傷した。

このほか、SANAによると、カルアト・マディーク町で爆発物などの撤去を続けるシリア軍が、地下20メートル、全長50メートルの地下トンネルを発見した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカッバーナ村一帯に16回の爆撃を実施した。

また地上部隊が同地一帯を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を14件(ハマー県3件、ラタキア県11件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を10件(ハマー県8件、アレッポ県1件、ラタキア県1件)確認した。

AFP, May 26, 2019、ANHA, May 26, 2019、AP, May 26, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 26, 2019、al-Hayat, May 27, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 26, 2019、Reuters, May 26, 2019、SANA, May 26, 2019、SOHR, May 26, 2019、UPI, May 26, 2019などをもとに作成。

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