ロシア・シリア両軍が激しい攻撃を続けるなか、反体制武装集団がハマー県北部のハマーミーヤート村、ジャビーン村、カルナーズ町一帯から撤退し、同地の戦闘が収束(2019年5月13日)

英国で活動する反体制派系NGOのシリア人権監視団によると、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北東部、アレッポ県西部の反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)に対するロシア・シリア両軍の爆撃・砲撃、シリア軍と反体制派の戦闘は続き、ロシア軍が12回の爆撃、シリア軍が36回の爆撃を実施した。

シリア軍はまた「樽爆弾」108発を投下、迫撃砲・ロケット弾850発を発射した。

一連の攻撃と戦闘で、イドリブ県のフバイト村、カフル・アイン村、カフルナブル市、ハマー県のラターミナ町、スカイラビーヤ市で民間人5人が死亡した。

うち4人がシリア軍による爆撃・砲撃、1人が反体制武装集団の砲撃による犠牲者だという。

また、4月30日以降の死者数は365人を記録、そのうちの122人が民間人(女性30人、子供22人を含む)だという。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマーミーヤート村とジャビーン村を結ぶ一帯、カルナーズ町で戦闘が収束した。

戦闘収束は、反体制武装集団の撤退を受けたもの。

同地での戦闘では、反体制武装集団戦闘員6人とシリア軍兵士4人死亡した。

戦闘では、シリア軍ヘリコプターがハマー県のハマーミーヤート村からジャビーン村にいたる地域に「樽爆弾」8発、カフルズィーター市、シャフルナーズ村にそれぞれ2発を投下、地上部隊がハマー県のラターミナ町、カフルズィーター市、フワイズ村、ハスラーヤー村、ザカート村を激しく砲撃した。

またシリア軍戦闘機がラターミナ町、カフルズィーター市を機銃掃射した。

一方、SANA(5月13日付)によると、反体制武装集団がシリア政府支配下のスカイラビーヤ市を砲撃し、住民1人が死亡、5人が負傷した。

これに対して、シリア軍は、ハマーミーヤート村からジャビーン村にいたる地域、タッル・フワーシュ村でシャーム解放機構やイッザ大隊(イッザ軍)と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

シリア軍はまた、マサースィナ村一帯にあるシャーム解放機構などの拠点、ラターミナ町一帯にあるイッザ大隊の拠点を砲撃した。

他方、ドゥラル・シャーミーヤ(5月13日付)によると、シリア軍がシャイフ・イドリース村に進軍を試みたが、反体制武装集団が撃退した。

またトルコの支援を受ける国民解放戦線がシャイフ・イドリース村に進入したシリア軍の車輌を撃破したと発表した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がカッバーナ村を爆撃、ヘリコプターがカッバーナ村一帯に「樽爆弾」」47発を投下した。

また地上部隊もカッバーナ村を砲撃した。

一方、ドゥラル・シャーミーヤ(5月13日付)によると、新興のアル=カーイダ系組織フッラース・ディーン機構、アンサール・ディーン戦線、アンサール・タウヒード、アンサール・イスラーム集団からなる「信者を煽れ」作戦司令室もラシュー丘にあるシリア軍拠点に対して特攻(インギマースィー)攻撃を敢行し、兵士10人を殺害したと発表した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がカルサア村およびその一帯を4回、カフルナブル市一帯を2回にわたり爆撃した。

シリア軍も戦闘機がヒーシュ村、ハーン・シャイフーン市、ハマー県のカフルズィーター市、ハスラーヤー村を爆撃、ヘリコプターがフバイト村に「樽爆弾」32発、バアルブー村に2発、タッルアース村に3発を投下した。

また地上部隊がフバイト村を砲撃した。

ANHA(5月13日付)によると、ロシア・シリア両軍の爆撃は、M5高速道路を移動中のシャーム自由人イスラーム運動(トルコの支援を受ける国民解放戦線に所属)の車列に対しても行われ、車輌などに被害が出た。

ロシア軍戦闘機はまた、フバイト村を爆撃したという。

また、ドゥラル・シャーミーヤ(5月13日付)は、ロシア軍によるカフルナブル市への爆撃でホワイト・ヘルメットのセンターが被弾したと伝え、その瞬間を捉えた映像を公開した。

このほか、ドゥラル・シャーミーヤ(5月13日付)によると、シリア軍第5軍団がロシア軍の航空支援を受けてカルカート村灌木地帯で進軍を試みたが、反体制武装集団の迎撃に遭い、これを阻止された。

また、共和国護衛隊第800大隊のニザール・マフムード大佐がアブー・ズフール町一帯での戦闘で戦死した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を11件(ラタキア県7件、ハマー県3件、イドリブ県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を18件(ハマー県10件、イドリブ県4件、ラタキア県4件)確認した。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 13, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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最高交渉委員会のメンバーの1人「ロシアとトルコの間にイドリブ県とタッル・リフアト市一帯の支配地域交換の取引はない」(2019年5月13日)

国民解放運動の司令官で最高交渉委員会のメンバーの1人であるファーティフ・ハッスーン准将は、サイト24(5月13日付)で、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構の支配下にあるイドリブ県を中心とする反体制派支配地域に対するロシア・シリア両軍の攻撃に関して、「トルコとロシアの間に、ハマー県やイドリブ県とタッル・リフアト市一帯の支配地域を交換するという取引がある」との一部報道を否定した。

ハッスーン准将は「トルコの政治指導者と軍司令官は、イドリブ県がトルコの安全保障上の拠点であると見ており、それはトルコの大統領も明言している」と付言した。

タッル・リフアト市一帯は、北・東シリア自治局とシリア政府が共同統治している。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Mawqi’ 24, May 13, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が電話会談でイドリブ県情勢への対応を協議するなか、トルコ軍増援部隊が反体制派支配地域内の監視所に向かう(2019年5月13日)

ロシア大統領府は、ヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が電話会談を行い、シリア情勢、とりわけイドリブ県を中心とする緊張緩和地帯第1ゾーンでの戦闘激化への対応について意見を交わしたと発表した。

声明によると、会談では、緊張緩和地帯第1ゾーンで続く停戦違反を踏まえて、同地情勢など危機の主要な問題に関して意見交換を続けること、シリアでの問題解決に向けて両国が引き続き連携を続けることが確認されたという。

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ドゥラル・シャーミーヤ(5月13日付)は、12日にシリア軍がハマー県北部のシール・マガール村に設置されているトルコ軍の監視所一帯に対する攻撃を強めたことを受けて、トルコ南部(ハタイ県)のトルコ軍部隊の車列がシリア国境地帯に向かったと伝えた。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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英仏独の外務省が共同声明を出し、ロシア・シリア両軍のシリア北西部に対する爆撃を非難(2019年5月13日)

英国、フランス、ドイツの外務省は共同声明を出し、5月に入って激化しているロシア・シリア両軍のシリア北西部に対する爆撃を非難した。

声明では、「住宅地への爆撃、無差別砲撃、「樽爆弾」の使用、学校や医療センターといった市民人道基礎インフラへの攻撃は国際人道法へのあからさまな違反」と非難している。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団が、北・東シリア自治局とシリア政府の共同統治下にあるタッル・リフアト市近郊を砲撃(2019年5月13日)

アレッポ県では、ANHA(5月13日付)によると、トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団が、北・東シリア自治局とシリア政府の共同統治下にあるタッル・リフアト市近郊のシャワーリガ村(アフリーン郡シャッラー近郊)を砲撃した。

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ラッカ県では、ANHA(5月13日付)によると、北・東シリア自治局の支配下にあるラッカ市で車に仕掛けられた爆弾が爆発した。

死傷者はなかった。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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シリア外務省は米国の支援を受けるYPG主体のシリア民主軍によるダイル・ザウル県での住民虐殺に抗議する書簡を国連に提出(2019年5月13日)

シリアの外務在外居住者省は国連事務総長と国連安保理議長宛に書簡を送り、ダイル・ザウル県のシュハイル村で5月9日に発生した人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍による住民「虐殺」について報告、米主導の有志連合の支援を受けたシリア民主軍が、国家への復帰を望むダイル・ザウル県の住民を従わせようと、数々の虐殺を繰り返していると非難した。

そのうえで、国連安保理に対して、米国をはじめとする一部西側諸国の支援を受けるこの民兵の敵対行為と裏切りを停止させるため、自らの責任を果たすよう呼びかけた。

北・東シリア自治局の支配下にあるダイル・ザウル県では、最近になって、シリア民主軍と米軍の退去や生活状況改善を求める抗議デモが頻発している。

デモでは、シリア政府への批判が行われることもあれば、国家への復帰が主唱される場合もある。

シリア民主軍はこうしたデモを強制排除している。

AFP, May 13, 2019、ANHA, May 13, 2019、AP, May 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 13, 2019、al-Hayat, May 14, 2019、Reuters, May 13, 2019、SANA, May 13, 2019、SOHR, May 14, 2019、UPI, May 13, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから314人、ヨルダンから670人の難民が帰国、避難民722人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者722人)が帰宅(2019年5月13日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(5月13日付)を公開し、5月12日に難民984人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは314人(うち女性80人、子供137人)、ヨルダンから帰国したのは670人(うち女性182人、子供310人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は222,038人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者77,524人(うち女性23,405人、子ども39,456人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者144,514人(うち女性43,383人、子ども73,691人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 451,318人(うち女性135,446人、子供230,069人)となった。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は6,659,752人(うち女性1,997,926人、子供3,396,474人)。

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一方、国内避難民722人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは6人(うち女性2人、子供3人)、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山の通行所を経由して帰還したのは716人(うち女性224人、子供300人)、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は28,997人(うち女性9,113人、子供13,359人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,297,593人(うち女性385,249人、子供647,245人)となった。

なお、グラーブ山通行所を経由して帰還した716人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は716人(うち女性224人、子供300人)だった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, May 13, 2019をもとに作成。

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