SANAによると、人民議会選挙高等委員会のムハンマド・ターハー・アフマド委員長は人民議会議事堂で記者会見を開き、60〜90日以内に人民議会を発足させることを目標にしていると発表、旧体制による長年の選挙不正と国民の排除を克服し、すべてのシリア国民の真の代表となる初の人民議会を設立するための環境を整えることが自らの使命だと強調した。

アフマド委員長は以下の通り述べた。
本日、我々はシリアの歴史における重大な転換点に立っている。国家はその魂と制度を取り戻し、シリア国民が意思決定の主権者としての地位を回復する瞬間だ。人民議会選挙高等委員会は、2025年大統領令第66号に基づいて設立され、新国家建設の最初の礎のひとつとなるべく創設された。(国民を)指図する国家ではなく、法の支配に基づく国家を、特権の国家ではなく、参加と市民権に基づく国家を築くためのものだ。
我々の任務は、すべてのシリア人を正当に代表する人民議会を設立するための環境を整えることだ。これは、長年の不正と排除の歴史の上に築かれる議会であり、立法権を持ち、国家再建のための新たな法的基盤となる。しかし、現実は理想とは異なる。数百万人が国内外で避難しており、公式文書は不足し、法的基盤は脆弱で、旧体制の手先が新たな名のもとに復帰しようとすることへの懸念もある。
我々は伝統的な選挙を実施しようとしているわけではなく、移行期の現実と国家的責任が我々に課した道を進んでいる。
それゆえ、委員会は現在、誰も排除せず、専門性と地域社会の代表性のバランスを取るための暫定選挙制度草案の策定に取り組んでいる。
人民議会の議員を選出する選挙人団は、二つのカテゴリーからなる。第1は専門人材層で、全体の70%を占める。第2は名士・名望家層で30%を占める。委員会設置の大統領令では、県ごとの議席数が定められており、各県内の地域に対する配分は人口比に応じて調整されることになっています。
委員会は、暫定選挙制度・実施スケジュール・選挙人団の資格要件を明記した制度を策定したうえで、全国各地への現地視察を開始する予定である。これにより、地方行政当局、地域社会の代表、地域の著名人や有力者との意見交換を行う。この視察の目的は、各地での暫定選挙制度案、スケジュール、選挙人団の基準、議席配分についてのこうした社会階層の意見を聞くことにある。
これらの視察と協議の終了後、委員会は暫定選挙制度とスケジュールの最終案を発表し、各県に支部委員会を設置する。各委員会には県内の複数地域からの代表が含まれ、それぞれの選挙区ごとに30~50名の選挙人を選出する役割を担う。
選挙人団の確定後には、異議申し立て・審査手続きが設けられ、最終的な選挙人名簿は高等委員会が正式に認定する。
その後、議員候補者の立候補受付が開始され、選挙運動期間が設けられ、選挙日程が発表される。選挙後には暫定結果が公表され、3日間の不服申し立て期間が設定される。その間に不正や違反行為があれば、委員会が審査し、最終的な当選者リストを発表する。
最終段階では、新人民議会の初会期が招集され、冒頭は選挙委員会委員長が議長を務め、次に最年長議員が暫定議長となる。続いて議長、副議長、書記を選出する投票が行われ、議会の正式な活動が開始される。
我々は、ダイル・ザウル県、ラッカ県、ハサカ県を含むすべての県での選挙実施を目指している。もし委員会の直接訪問が困難な場合には、地域の有力者や代表者と会合を持ち、手続きについて意見交換を行い、投票所の設定や地方選挙委員会の構成などを協議する。
また、委員会は、国内避難民(IDPs)を含むあらゆる社会層の参加を確保しようとしており、避難民の早期帰還を願っている。
我々のスローガンは、宗派的・宗教的分断を越えた、すべてのシリア人を代表する人民議会を実現する、というものだ。クルド人市民も当然この社会の一部であり、社会層の多様性と専門性を反映した議会を構築することで、次代の国家形成を担う高い技術的・制度的水準を備えた議会を目指している。
一方、ナウワール・ナジュマ報道官は以下の通り述べた。
これは単なる選挙ではなく、新たな立法権力の創設であり、人民議会の設立は大統領令により明確に定められた国家的任務だ。メディアの建設的支援はこの取り組みの成功に不可欠だ。
アフマド・シャルア暫定大統領は(高等委員会との)会合で、最高水準の透明性、誠実さ、能力が求められると強調した。これを受けて、委員会は制度策定のため複数回の会合を開催し、各県への視察もダマスカス県を皮切りとして実施している。
この視察では、直接投票が実施されないなかでも、国民が議会設立過程に参加していることを実感できるよう配慮し、提示される意見を我々の制度設計に反映させる。
最も重要なのは、選挙人団と支部委員会のメンバー選定の質です。この基準策定には長時間の議論を要した。基本的な条件として、良好な評判、重大犯罪歴がないことが求められる。専門人材には学歴、年齢、職業なども要件として含まれている。
選挙人団には、専門家と有力者の二つのカテゴリーがあり、特に有力者層は、社会的影響力や地域での信頼を背景に選出される。委員会は、二重のアイデンティティという考え方に基づき、学歴のある専門家と、社会貢献の大きい有力者の両方を包含した議会構成を目指している。
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SANAによると、人民議会選挙高等委員会(ムハンマド・ターハー・アフマド委員長)は、ダマスカス県(ダマスカス選挙区)で最初となる現地視察を行うとともに、マーヘル・マルワーン知事と会合を行った。
会合には、各自治体議会の議員、人民委員会の委員らも同席した。

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