米軍がダイル・ザウル県のシリア軍基地を「誤爆」:米国側の主張に矛盾(2015年12月7日)

シリアの外務在外居住者省は、国連安保理および事務総長に宛てて書簡を送付し、そのなかで12月6日に米軍戦闘機がダイル・ザウル県内のシリア軍基地の一つを攻撃したと報告、「テロとの戦い」への取り組みを妨害する「敵対行為」であり、「有志連合がテロとの戦いにおける真剣さと誠実さ改めて示すもの」と非難した。

書簡によると、米軍戦闘機4機は6日晩、ダイル・ザウル県内のシリア軍の基地を9発のミサイルで攻撃、これにより兵士3人が死亡、13人が負傷、装甲車3輌と輸送車輌4輌、23ミリ機関砲1門、14.5ミリ機関砲1門、武器弾薬庫が破壊された。

SANA(12月7日付)が伝えた。

これに関して、シリア人権監視団は、有志連合と思われる戦闘機複数期がダイル・ザウル県アイヤーシュ村近郊にあるシリア軍のサーイカ軍事基地の哨所を空爆し、兵士3人が死亡、14人が負傷したと発表した。

ラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、有志連合の「誤爆」でシリア軍に死傷者が出たのはこれが初めてだという。

またクッルナー・シュラカー(12月7日付)は、複数の現地消息筋の話として、有志連合戦闘機がアイヤーシュ村郊外のシリア軍第137旅団基地拠点を空爆した、と伝えた。

Kull-na Shuraka', December 7, 2015

Kull-na Shuraka’, December 7, 2015

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米国防総省のスティーブ・ウォーレン報道官は、AFP(12月7日付)に対して、「我々はシリア側のレポートに着目したが、昨日(6日)にダイル・ザウル県での空爆は実施していない。それゆえ我々は(シリア側の主張に)根拠がないと見ている」と述べた。

しかし、ウォーレン報道官は「米軍が空爆した地点はシリアが空爆を受けたと主張している場所から55キロも離れている…。我々が空爆しているのはすべて油田だった」と付言した。

また、米中央軍(CENTCOM)は、有志連合が6日の空爆に関して、ダイル・ザウル県で4回実施し、ダーイシュ(イスラーム国)が掌握する油田坑口装置を破壊したと発表している。

なお米高官は、フォックス・ニュース(12月7日付)に対して、ロシア軍戦闘機が誤爆した「可能性が高い」(highly likely)と述べた。

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シリア軍施設への「誤爆」については、これまで反体制系のサイトが10月以降、たびたびロシア軍によるシリア軍基地への攻撃などについて伝えていたが、有志連合によるシリア軍施設に対する「誤爆」が報じられるのはこれが初めて。

AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、Fox News, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。

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