2012年6月4日のシリア情勢

国内の主な動き

UPI(6月4日付)によると、変革解放人民戦線に所属する人民議会議員5人が、第10期人民議会の議事が憲法に則っていないと抗議して議場を退席し、審議に参加せずに議事堂内に留まった。

SANA, June 4, 2012

SANA, June 4, 2012

4日の審議は、電力大臣に対する質疑応答のみが議事として準備されていたが、変革解放人民戦線は、憲法が認める多元主義の原則に従って、議事が各派の合意のもとに決せられねばならない、と主張した。

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SANA(6月4日付)によると、政党問題委員会(ムハンマド・シャッアール内務大臣が委員長)は、人民意思党と国民ブロック党の認可申請を検討し、前者を認可した。後者は書類不備につき再申請となった。

人民意思党は変革解放人民戦線に参加する組織で、カドリー・ジャミール人民議会議員が代表を務めている。

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SANA(6月4日付)によると、シリアのジャーナリストや報道関係者がダマスカス県アブー・ルンマーナ地区の記者連合前に集まり、アラブサットとエジプトのナイルサットに対して、シリアの国営、非国営の衛星テレビチャンネルの放送を停止するよう要請したアラブ連盟外相会議の決定に抗議した。

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シリアの著名な詩人アドニースは、『アフリーク・アズィ』(Afrique-Asie)で「フランスはアラブ世界のあらゆる退行的原理主義運動に支援を行うことでフランス革命の精神を裏切った」と非難した。

国内の暴力

自由シリア軍国内合同司令部による停戦破棄を受けるかたちで、各地で反体制武装集団が「国民を防衛するため」と称して、戦闘を激化させ、ロイター通信(6月4日付)によると、過去48時間で軍・治安部隊兵士約80人を殺害、アサド政権によるさらなる弾圧の口実を与えた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のラーミー村で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

またカフルナブル市では未明、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団メンバー2人が死亡した。

さらにアリーハー市では民間人2人が治安部隊に射殺された。

一方、SANA(6月4日付)によると、ラーミー村で治安当局が「自爆テロ」を試みた「テロリスト」を逮捕し、爆弾が積まれた車を押収した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で治安部隊の発砲により青年1人が死亡した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市マルアブ地区南で男性1人が射殺された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市クスール地区で市民1人が撃たれて死亡した。

一方、SANA(6月4日付)によると、クサイル地方ジュースィーヤ村近くのシリア・レバノン国境で、レバノンから武器を密輸しようとした車4台を関係当局が取り押さえた。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、スバイハーン市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。

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複数の武装集団が、ダマスカスからイドリブ県にいたる各地で100人以上の兵士を殺害したと発表した。シリア人権監視団によると、うち80人の身元は確認できた、という。

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シリア国民評議会によると、イドリブ県各地(マアッラト・ヌウマーン市、アリーハー市、ラーミヤ村、カフルルーマー村、カフルナブル市、ハーッス市などに軍・治安部隊が砲撃を加えている、という。

反体制勢力の動き

在外の自由シリア軍事評議会の報道官、サーミー・クルディー大佐はロイター通信(6月4日付)に対して、軍事評議会はアナン特使の停戦案の履行を停止することを決定し、「我らが国民を防衛」するため、6月1日付で武装闘争を再開したと述べた。

またクルディー大佐はUNSMISに「平和を課す監視団」になるよう呼びかけた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は、中央委員会メンバーのガーズィー・ガンヌーム氏がタルトゥースの国家治安局に逮捕された、と発表した。

レバノンの動き

ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー前首相はツイッターで「トリポリでの最近の事件はシリア政府が依然としてレバノンに火を放とうとして謀っていることを示すものだ…。シリア政府が注意をそらし、レバノンとシリアで宗派紛争を起こそうとしていることは明白だ」とつぶやいた。

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シリア日刊紙『ワタン』(6月4日付)は、「サウード・ファイサル外務大臣はレバノン北部を緩衝地帯にする計画に与し、レバノン軍を放逐し、シリア人への攻撃と殺戮を行おうとしている」と非難した。

諸外国の動き

ヘルマン・ファン・ロンパウ欧州理事会議長がロシアのサンクトペテルスブルグ郊外でウラジミール・プーチン大統領と会談した。

会談後、ファン・ロンパウ議長は、「我々はアナン特使の停戦案がシリアでの暴力の連鎖を絶ち、内戦勃発を避けるための最善の機会を保障する点で一致している。我々はそのためにともに努力しなければならない」と述べた。

一方、SANA(6月4日付)によると、プーチン大統領は「すべての問題で共通の立場にいたることはできなかったが、首脳会談は有益で成功だった」と述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、アサド大統領が退任しない限り、シリア危機の持続的解決は不可能だとつつ、「自らの罪の重圧を受け崩壊するだろう」と述べ、他力本願であることを吐露した。また軍事介入については国連枠内でのみ可能との見方を示した。

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国連安保理では、6月の議長国となった中国の李高国連代表が「すべての武装する当事者がアナン特使の停戦案を履行するよう支援すべきか、内戦勃発と地域への宗派的暴力の拡散のいずれかしかない」と述べ、アナン特使のイニシアチブへの支援を呼びかけた。

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『ハヤート』(6月5日付)によると、アナン特使付報道官のアフマド・ファウズィー氏は、「大国が各当事者にシリアでの停戦を実施させることを保障すべき」と述べる一方、アナン特使がUNSMISの増強をいまだ検討していないことを明らかにした。

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国連の潘基文事務総長は、サウジアラビアのアブドゥッラー国王とジェッダで会談、アナン特使の和平案がシリアの紛争解決において依然として基礎をなしている、と強調した。

そのうえで、潘事務総長は、「人道主義の名のもと」、アサド政権のみに対して暴力停止と政治的対話の開始を求めた。

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SANA(6月4日付)によると、トルコのアダナ市で、トルコ人とシリア人約数千人が集まり、「戦争反対、シリアへの西側の戦争拒否」を訴えた。

SANA, June 4, 2012

SANA, June 4, 2012

SANA, June 4, 2012

SANA, June 4, 2012

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ハマースのムーサー・アブー・マルズーク政治局次長は、「ハマースはシリアにおいて客人であり、その指導部はダマスカスにおいて何の障害もなく活動を行っている」と述べ、ダマスカスの事務所を閉鎖していないと改めて述べた。

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ヨルダンのアンムーン通信社(6月4日付)は、6月2、3日にシリア、レバノン、湾岸諸国からアンマン国際空港に到着したシリア人数十人がヨルダン当局に入国を拒否された、と報じた。

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サウジアラビア日刊紙『ワタン』(6月4日付)は、サウジアラビア航空で勤務するシリア人女性キャビン・アテンダント内での親政権派と反体制派の対立が15件以上警察に届け出られていると報じた。

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2011年12月から2012年1月にかけてシリアに派遣されていたアラブ連盟監視団メンバーで、アサド政権への批判的言動を繰り返してきたチュニジア人のアンワル・マーリク氏は、フランスの法廷に対して、アサド政権と在仏シリア大使館を殺人幇助、脅迫などで訴えることを明らかにした。

『ハヤート』(6月5日付)が報じた。

AFP, June 4, 2012、Akhbar al-Sharq, June 4, 2012、AKI, June 4, 2012、Ammonnews.com, June 4, 2012、al-Hayat, June 5, 2012、Kull-na Shurakā’, June 4, 2012, June 6, 2012、Naharnet.com,
June 4, 2012、Reuters, June 4, 2012、SANA, June 4, 2012、Twitter, June 4,
2012、al-Waṭan (Damascus), June 4, 2012、al-Waṭan (Riyad), June 4, 2012などをもとに作成。

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