2012年6月5日のシリア情勢

人道支援をめぐる動き

国連人道問題調整室(OCHA)は、ヒムス県、イドリブ県、ダルアー県、ダイル・ザウル県での人道支援活動をシリア政府が許可したと発表した。

同報道官によると、現在、シリアでは推定で100万人が人道支援を必要としており、6月に支援拡大のための先遣調査団を派遣し、国連のチームやINGOがシリア赤新月社と連携して、食糧支援、医療支援、教材提供などを行うことになるという。

会談には、ファイサル・ハッバーズ・ハマウィー在ジュネーブ・シリア大使(国連人権理事会代表大使)も参加した。

シリア政府の動き

シリア外務在外居住者省は、米英仏、トルコなどの大使ら外交官約20人を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として国外退去処分としたと発表した。このなかに日本の外交官は含まれていない。

また国外追放の対象となった国はいずれも2012年3月までに大使を本国に召還し、大使館を閉鎖している。

国外退去処分となった外交官は以下の通り。

1. 米国:大使
2. 英国:大使、参事官
3. フランス:大使、二等書記官
4. スイス:大使
5. トルコ:大使、外交官・現地職員全員
6. イタリア:大使
7. スペイン:大使、参事官
8. ベルギー:常駐代表
9. ブルガリア:常駐代表、三等書記官
10. ドイツ:武官、武官補、外交官・現地職員2人
11. カナダ:大使、外交官・現地職員全員

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、ロバート・ムードUNSMIS司令官との会談後の記者会見で、大使追放が対象国の対シリア政策に起因するとしたうえで、この措置がアナン特使の停戦案を成功させたいとの意思の表れであると強調した。

国内の主な動き

変革解放人民戦線の議員5人が人民議会の審議を再び拒否し、退席した。

前日の審議の議事録に、同戦線の動議が記載されていなかったことに抗議した行動。

国内の暴力

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ハッファ地方で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者の兵士15人、後者の戦闘員3人、民間人2人が殺害された。

同監視団によると、戦闘が行われたとされるバッカース村、シーラカーク村、バーブナー村、ジャンキール村、ダフィーム村は「不穏な静けさ」を保っている、という。

また同監視団によると、軍・治安部隊は戦闘でロケット・ランチャーを使用したという。

一方、SANA(6月5日付)は、ハッファ地方で武装テロ集団が市民と治安維持軍を攻撃し、救急車2台などを破壊し、関係当局が応戦し、テロリスト多数を殺害、治安当局側にも2人の死者が出たと報じた。

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ダマスカス県では、SANA(6月5日付)によると、バルザ区で軍医のアンワル・サカー准将が武装テロ集団に爆殺された。

サカー准将はパレスチナ解放軍のメンバーでもあった。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月5日付)によると、ダイル・ザウル市で、アフマド・アブドゥルカーディル大尉、イッズッディーン・アブドゥッラー・スワイダーン大佐が武装テロ集団に暗殺された。

『ハヤート』(6月6日付)によると、5月29日にダイル・ザウル市郊外のスッカル地方で29日に13体の遺体が発見された事件に関して、反体制武装集団の一団が犯行声明を出した。

AFP(6月5日付)によると、「シャームの民のヌスラ(救済)戦線」が声明を出し、ダイル・ザウル市郊外でスッカル地方に5月29日に発見された13人の惨殺遺体に関して、「シリアの治安機関要員とシャッビーハ13人を処刑した」との犯行声明を発表した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市などに軍・治安部隊が掃討作戦を継続、同市の反体制武装集団は撤退した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市に軍・治安部隊が展開した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフル・ウワイド市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、市民4人が死亡した。

一方、SANA(6月5日付)によると、カフル・ウワイド市で治安維持部隊が武装テロ集団の攻撃を受け応戦、テロリスト多数を死傷させた。

また同監視団によると、ナイラブ村、マアッルディブサ村に対して軍・治安部隊が砲撃を加える一方、イドリブ市では爆弾が爆発し、治安部隊兵士5人が犠牲となった。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市の複数地区に迫撃砲が着弾した。

一方、SANA(6月5日付)によると、クサイル市で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受け応戦、テロリスト4人を殺害した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、バヤーヌーン町に軍・治安部隊が砲撃を加えたほか、同市周辺で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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ダルアー県では、ヌアイマ村、ダーイル町などで、軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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シリア人権監視団によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ハマー県、イドリブ県、アレッポ県、ラッカ県など各地で、国内のテロ掃討を宣言し、反体制武装活動を徹底弾圧する意思を改めて示したアサド大統領の人民議会への演説に抗議するデモが行われた。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会在外事務局のハイサム・マンナーア代表はBBC(6月5日付)で、アナン特使に対して、ロシア、中国、トルコ、イランおよび西側諸国などすべての当事者を一堂に会した国際会議を招集し、事態の解決をめざすよう呼びかけた。

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シリア国民評議会のメンバーで、シリアのための国民行動グループを指導するムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏は『ハヤート』(6月6日付)に対して、9~10日に予定されている事務局会合で、クルド人のアブドゥルバースィト・スィーダー氏が事務局長に選出されるだろう、と述べた。

レバノンの動き

NNA(6月5日付)によると、シリア軍は北部県アッカール郡ナフル・バーリド地方でレバノン人1人を拘束した。

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AFP(6月6日付)によると、シリア軍は北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方ハット・バトルール村のハーリド・スワイダーン村長を逮捕し、自宅を接収した。

諸外国の動き

ヨルダンの治安当局は、シリア領内への潜入を試みたヨルダン人サラフィー主義者2人を逮捕した。

これに関して、ヨルダンのサラフィー主義筋は、6月3日にウマル・バザーイアとハーリド・ハティーブの2人のサラフィー主義者が逮捕されたことを認め、彼らがシリアの軍・治治安部隊、シャッビーハと戦うために潜入を試みたと発表した。

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「アフバール・シャルク」(6月5日付)は、トルコ高官の話として、シリア軍が対トルコ国境の森林に放火したことを受け、6月1日から5日までの間に約2,700人のシリア人がトルコ領内に避難した、と報じた。

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「アフバール・シャルク」(6月5日付)によると、イスラエル国防軍のベニー・ガンツ参謀長はクネセトの外交委員会で、「シリア情勢がゴラン高原に影響を及ぼし、安定を揺るがす現象が増えている…。現在テロ活動はないが、近く発生するだろう」と証言した。

また「シリア政府が崩壊した場合、ヒズブッラーにシリアの武器密輸がさらに増えることを懸念している」とも付言した。

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ロシアのウラジミール・プーチン大統領が中国を訪問し、胡錦濤国家主席と会談した。

中国外交部報道官によると、首脳会談では、アナン特使のイニシアチブへの支持、暴力の即時停止、シリア危機の政治的プロセスの開始の必要が確認された。

また、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、ジュネーブでのアナン特使と会談後、「アサド大統領が政治プロセス終了時に権力の座に必ず留まっていなければならないとの条件を課したことも、そのように言ったこともない」と述べた。

一方、ロシアの外務省報道官は、インテルファクス(6月5日付)に対して、自由シリア軍がアナン特使の停戦案の履行の破棄を発表したことを、「シリアでの平和的関係正常化に向けて安保理が支持している和平案の履行をシリアの反対勢力諸派が放棄しているという事態の核心をなしている」と非難した。

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米国務省高官は、シリア問題担当のフレデリック・ホフ氏ら米国務省担当者らが、シリア問題を協議するためモスクワを訪問すると述べた。

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サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、ジェッダでのGCC閣僚会合後の記者会見で、「安保理におけるロシアの姿勢は正当化できない。シリア政府を支援する姿勢を転換する時が来ている」と述べる一方、アナン特使の停戦案に関しては「希望を失いつつある」と失望感を露わにした。

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ドイツ外務省はUAEの協力のもと、ベルリンにシリア復興事務所を立ち上げた

AFP, June 5, 2012, June 6, 2012、Akhbar al-Sharq, June 5, 2012、al-Hayat, June 5, 2012, June 6, 2012, June 7, 2012、Kull-na Shurakā’, June 5, 2012,
June 6, 2012、Naharnet.com, June 5, 2012、NNA, June 5, 2012、Reuters, June
5, 2012、SANA, June 5, 2012などをもとに作成。

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