シリアによるトルコ軍戦闘機撃墜に関してダウトオール外相は「自制するが、いずれ断固たる立場をとる」と明言し、安保理でのシリア非難支持を求める意思を示す(2012年6月24日)

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トルコ軍戦闘機墜落をめぐる動き

AFP(6月24日付)は、トルコ外務省報道官が、トルコ空軍のF4戦闘機の撃墜地点を特定したと発表した。

報道官は「我々の戦闘機がシリア領海のどの地点に落ちたか分かっているが、まだ機体を発見できずにいる」と述べた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はTRT(6月24日付)で、トルコ空軍のF4戦闘機がシリア領海上ではなく公海上で撃墜されたと述べた。

ダウトオール外務大臣は「我々の調査結果によると、我々の戦闘機はシリアの沖合13マイルの公海上で撃墜された」と述べた。

また「トルコ軍機であることを特定するのは、シリアのレーダー装置において明らかだった」と述べ、墜落後にトルコ軍機であることが判明したとのシリア側の発表を否定した。

ダウトオール外務大臣はさらに、撃墜されたトルコ空軍のF4戦闘機が「シリア領海上に短時間入った」と認めつつ、「シリアに対する攻撃信号をも発信していなかったが、シリア領への一時的な侵犯から15分が経過した後に墜落した…。損傷を受け、シリア領海内に墜落した」と述べた。

墜落した戦闘機は、レーダー・システムの実験のための練習飛行を行っており、武器は搭載していなかった、という。

今後の対応について、ダウトオール外務大臣は、トルコ政府がNATO加盟諸国に対して、事件を審議するための緊急会合の開催(26日開催予定)を求めたことを明らかにし、NATO条約第4章に基づき、加盟諸国に対して、安保理でのシリア非難支持を求める意思を示した。

そのうえで、「トルコは自制を行うだろう。しかしいずれ断固たる立場をとる…。何人にもトルコの軍事的能力に挑戦することを許すべきではない」と付言しつつ、軍事的選択肢に訴える可能性を否定した。

なお機体は1,300メートルの海底に沈んでおり、いまだ見つかっておらず、また行方不明のパイロット2人の捜索活動も継続中だという。

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イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣は、トルコ空軍機撃墜に関して「アサド政権による危険で受け入れられない新たな行為」と強く非難した。

国内の暴力

ダイル・ザウル県では、SANA(6月24日付)によると、ダイル・ザウル市内で武装テロ集団が同市ムフティーのアブドゥルカーディル・ラーウィー師を誘拐した。

また同市ジュバイラ地区では、治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト数十人を殺害した。

さらに、アブー・ハマーム地方近くの発電所を武装テロ集団が爆破した。

一方、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘で、反体制武装集団の戦闘員3人を含む13人が死亡した。

また在外(アンマン)の複数の反体制活動家によると、ダイル・ザウル市への軍・治安部隊の激しい砲撃で少なくとも20人が死亡した。

赤十字国際委員会とシリア赤新月社は、ダイル・ザウル市でのバッシャール・ユースフ救急医殺害(22日)を厳しく非難する声明を出した。

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ヒムス県では、SANA(6月24日付)によると、タルビーサ市東部で、治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリスト全員を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で反体制武装組織の戦闘員2人を含む4人が軍・治安部隊との戦闘で死亡した。

また同市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区などが軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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ラタキア県では、SANA(6月24日付)によると、対トルコ国境に位置するヤマーマ村でトルコ領からの潜入を試みた反体制武装集団と当局が交戦し、テロリスト多数が死傷した。

この戦闘で国境警備隊兵士も1人犠牲となった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ハーリディーヤ地区でマイクロバスの運転手が何者かに射殺された。

またクルド山一帯では、軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

「アフバール・シャルク」(6月25日付)は、アレッポ市で軍事情報局が反体制運動での負傷者を治療していた医師2人とアレッポ大学医学部の学生3人を逮捕、拷問のうえ殺害し、遺棄したと報じた。

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イドリブ県では、SANA(6月24日付)によると、アリーハー市で治安維持部隊が反体制武装集団が交戦し、前者の兵士3人とテロリスト9人が死亡した。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012

Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

一方、シリア人権監視団によると、アリーハー市周辺の農場で、農夫7人を含む10人が軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦により殺害された。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、「ヌール大隊」がナバク地方で軍・治安部隊と交戦、同兵士11人を捕虜にした。

反体制勢力の動き

Elaph.com(6月24日付)によると、MiG21戦闘機でヨルダン領に脱走したハサン・マルイー・ハマーダ大佐は、従軍中に住宅地区の砲撃命令を受けたと告白、また自分以外にも離反を計画している空軍パイロットが複数いると明かした。

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PKK系のクルド民族主義政党の民主統一党は、シリア・クルド・アーザーディー党のムスタファー・ジュムア書記長を身柄拘束した。

ジュムア書記長の息子によると、書記長はイラクに出国しようとして拘束された、という。

諸外国の動き

M25ヘリコプター複数機を積んでシリアのタルトゥース港に向かっていた貨物船MV Alaedがロシアのムルマンスク港に到着した。

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イスラーム諸国会議機構のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長(トルコ人)は、シリアでの弾圧継続に対処するため、シリアの加盟資格を停止するべきだと提言した。

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ワシントンDCのシリア大使館にシリア人2人が不法侵入し、シリア国旗を降ろし、反体制勢力が使用する委任統治時代の旗を掲揚した。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012

Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012

Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

http://www.youtube.com/watch?v=MQ9EjjH3ZuI&sns=tw

AFP, June 24, 2012、Akhbar al-Sharq, June 24, 2012, June 25, 2012、Elaph.com, June 24, 2012、al-Hayat, June 25, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012、Naharnet.com, June 24,
2012、Reuters, June 24, 2012、SANA, June 24, 2012、Youtube, June 24, 2012などをもとに作成。

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